なぜベラミーの嘲笑に耐えられたのか?ルフィから学ぶアンガーマネジメント法

早いもので今年も残り一カ月となりました。毎年師走は忙しくなるものですが、余裕がないとついピリピリして周りに当たってしまうなんてことも・・・。気を付けたいですね。

怒りとは、人間と切っても切り離せない感情です。怒らない方がいいと誰もが思うのですが、一度スイッチが入ってしまったら、後は野となれ、山となれ。後先など考えずに怒りをぶつけ、後悔をした経験のある人も多いのではないでしょうか。

自分の感情のままに動きたいのが私たち。しかしそこでぐっと堪えることで、見えるものや守れるものがあるのです。

今回は「怒り」というテーマから、本当のカッコよさ、そして強さについて考えてみたいと思います。

バカにされても無抵抗だったルフィとゾロ

ある時、「空島」という場所があることを聞いたルフィは、好奇心の赴くまま、次の行先を独断で空島に決定してしまいます。空の上にある島といっても、どこにあるのかもわからないし、空の上にどうやって行くのかさえ見当もつかない。そもそも、そんなところが本当にあるのかも疑わしい。一人空島に思いを馳せるルフィを横目に、仲間たちは半信半疑ながらとりあえず情報を集めようと、ある島に上陸します。

そこにある「ジャヤ」という町で聞き込みをすることになったルフィ、ゾロ、ナミ。

3人は酒場に立ち寄って情報を得ようとしますが、そこでは「ハイエナのベラミー」率いる海賊団が宴会をしている真っ最中でした。素行のよくない彼らに絡まれ、一触即発状態。頭に血がのぼっているように見えたルフィを、ナミは「騒ぎが起きたら情報が集められなくなってしまう」となだめます。そして酒場の店主に「空島」について知っていることはないかと尋ねたのです。

そのナミの言葉を聞いたベラミーたちは大爆笑。「空島なんて妄想だ」と揃ってルフィ達を馬鹿にし始めました。カチンときたナミは、当然ルフィとゾロがやり返してくれるだろうと思うのですが、何故かルフィは「このケンカは絶対買うな」と指示し、それに従ったゾロと共に無抵抗なままベラミーたちからの一方的な攻撃を受け続けるのです。

「弱い上にプライドもない」「臆病者」と言われても、殴られても、蹴られても、果ては酒を浴びせられても、やり返す気配のない2人。これだけ馬鹿にされ、攻撃されながら何一つやり返せない悔しさにむしゃくしゃしながらも、ナミは捨て台詞を一つ吐き、ボロボロになった2人を抱えます。ベラミーたちの耳障りな笑い声を背に受けながら酒場を後にすることしかできませんでした。

このエピソードを読んだとき、私はすっきりしない思いで一杯でした。

ルフィもゾロも本当はベラミーよりはるかに強いのだから、簡単にやり返せるはずなのに何で抵抗しないの?」とナミと同じ気持ちになりました。

そんな思いになる人も多いのではないでしょうか。ナミのこの時の感情はまさに「怒り」ですが、どうしてナミは怒ったのでしょう。

怒りの感情が起きる2つのパターン

私たちが怒るときには2つのパターンがあります。

1つは「自分は正しい、相手は間違っている」と思うときです。

私たちは基本的に自分の価値観が正しいと思っています。だから、それを否定してくる相手には腹が立つのです。上記のエピソードの場合、「空島に行きたい」という夢、あるいは信念は正しいという価値観があるから、それを馬鹿にしてくるベラミーたちに対して腹が立つのです。

もう1つ、私たちが腹を立てる原因は「欲を妨げられること」にあります。

欲というのは煩悩の一つであり、大きく分けて

  1. 食欲
  2. 財欲
  3. 色欲
  4. 名誉欲
  5. 睡眠欲

の5つあるといわれます。

誰にでもあるこれらの欲が妨げられることによって、私たちは怒ります。ナミは酒場の全員から馬鹿にされ笑いものにされてしまいました。そのことで「バカにされたくない」という名誉欲が妨げられ、それによって腹を立てたのです。そこに正しいか正しくないかということは関係ありません。例えば、自分の間違いを大勢の人の前で指摘されたら、たとえ相手の言っていることが正しいとしても、名誉欲を妨げられた腹立ちが猛然と湧き上がってくるのです。

怒りの心が出てきたとき、その原因を考えてみるとこの2つのどちらかに当てはまるのではないかと思います。皆さんも是非自分が怒ったときのことを振り返ってみてください。

腹が立ったときの、3通りの受け止め方

腹が立ったときの受け止め方には3通りあると言われています。

  1. 水の上に書いた文字は、書いたそばから流れて消える
  2. 砂の上に書いた文字は、しばらくして消える
  3. 岩に刻んだ文字は、いつまでたっても消えずに残っている

水の上に文字を書いても、次の瞬間には消えてしまいます
砂の上に文字を書いたら、しばらくは残っていても、風雨に晒されれば自然と消えてしまいます
ところが岩に文字を刻んだら、それは決して消えることはないのです。

誰でも怒りの心は出てきてしまうものですが、それをすぐに忘れてしまう人もいれば、一方でなかなか消えずにいつまでも燻ぶらせている人もいます。上記の言葉はそのことをたとえられているものです。

皆さんはどのタイプだと思いますか?

怒りをいつまでも覚えていることは、自分を苦しめることにしかなりません。怒りの心はリセットして、早めに忘れてしまう方がよいのです。

腹が立ったときに感情をどう受け止め、対処すべきか

ではもしも、怒りの心が出てきたら、どのように考えれば良いのでしょうか?

まず「自分が正しくて相手が間違っていると思うとき」に怒りの心が出てきたら、最初に本当に自分は正しいのかを考えてみてください

1人1人価値観も違えば立場も異なります。空島を信じる人もいれば、信じない人も中にはいる。それはその人の価値観です。もし本当に空島があって、相手が自分たちを馬鹿にしていたことが間違いであったなら、それはいずれ必ず相手にもわかります。

実際、後にルフィと再会したベラミーは自らも空島に行ったことを明かし、ルフィが正しかったということを認めています。たとえケンカに勝って、相手に自分の考えを認めさせても残るのは虚しさだけではないでしょうか。他人は他人、自分は自分。ルフィとゾロはまっすぐ自分の信念に生きているからこそ、上を見ているからこそ、ベラミーたちは眼中になく、相手にもしなかったのだと思います。

また欲が妨げられて腹が立ったときには、自分の心を見つめてみましょう。私たちは腹が立ったとき、どうしても相手に原因を見出してしまいがちです。しかし本当の原因はあくまでも自分の心にあるのです。

その証拠に、ナミと同じように笑われたルフィやゾロは一切腹を立てていません。同じ状況に置かれても、腹を立てる人と腹を立てない人がいるのです。相手の言動というのはあくまでも切っ掛けであり、縁。怒りの心が出てきたときは、相手に向けている目を、自分に向けてみてください。自分の気持ちを見つめることで、次第に冷静になることができるはずです。

まとめ

ピタゴラスいわく、怒りは無謀をもって始まり、後悔をもって終わるもの。
怒りの心が出てきたその時こそ、ちょっと立ち止まって自分の心を見つめてみるのはいかがでしょうか?
きっといろいろな発見があるはずです。