本当は人間関係の悩みなんかない?悩んでいる人はエゴイスト?アドラー心理学の第一人者が指摘する“悩みの実態”とは

対話形式でアドラー心理学を解説したベストセラー『嫌われる勇気』。

今年1月からはテレビドラマ化もされ、話題になっていますね(初回視聴率は1ケタ台なので、今後の飛躍を期待したいところ)。

アドラー心理学で有名な日本人といえば、その『嫌われる勇気』の著者である岸見一郎ですね。

しかしもう一人、欠かせない人物がいます。それが野田俊作さんです。

野田俊作さんは日本アドラー心理学会の初代会長であり、日本におけるアドラー心理学の第一人者といわれています。

その野田さんの著者『アドラー心理学を語る』シリーズ(創元社)が2016年12月に発売され、注目を集めました。ユーモアを交えた親しみやすい野田さんの語りは、安らぎと、より良く生きる知恵を与えてくれます。

グループと瞑想 アドラー心理学を語る2』に書かれてある野田さんのカウンセリング手法を通して、人間関係の悩みへの対処法を2回に分けて紹介します。

そもそも本当は人間関係の悩みなんかない

アドラー心理学では「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と教えられています。

アドラーの言うように、人間関係で悩んでいない人はいないでしょう。

「職場に高圧的でイヤな上司がいる」

「同僚が先に昇進して、ねたましい」

「夫に尽くしても、ありがとうの『あ』の字さえ言わない」

「家に帰ると妻のグチばかり聞かされる。妻のいる家に帰りたくない」

「子供が言うことを聞かない」「親が過干渉だ。もっと自由にさせてほしい」など、日々、いろいろな対人関係の悩みに直面したり、見聞きしたりしています。

ところが…。

野田さんは、「そもそも人間には本当は悩みなんかないんですよ」と、驚くようなことを語っています。

人間には悩みはない、と言われても、実際に悩みを抱えて苦しんでいる人は大勢いますし、私もその一人です。

悩みがないとは、いったいどういうことなのでしょうか。野田さんはこう答えています。

悩むと便利だから悩んでいるにすぎない。自分の目的を達成するために悩みを使っているんです

野田俊作(2016 ).「第1章 グループ・セラピーの方法」 『グループと瞑想 アドラー心理学を語る2』  創元社

悩んでいる人の実態は「ものすごいエゴイスト」

「悩むと便利。自分の目的を達成するために悩んでいる」とはどんなことか、具体例として非行少年をもつ母親が紹介されていました。

子供が非行に走ればどんな母親でも悩むと思うのですが、その悩みには目的があるのです。

仮に非行少年のことで髪の毛を振り乱して悩んでいれば、近所の奥さんは「奥様も大変ねぇ。そんなに悩んでいらっしゃるのに、坊っちゃんはあなたの心も全然わかってくださらなくて」と言ってもらえます。

悩んでいればこのように、他人の同情を集められるのです。

反対に悩んでいなければ、「子どもが悪いことをしているのに、よくもまぁ、あんな元気でいられるわね」と陰口を叩かれてしまい、自分の立場が悪くなってしまうのですね。

しかし本当に子どものためを思うなら、悩み続けるのではなく、子供の更生に向けた具体的な行動を取るべきです。母親が悩めば悩むほど、子供はますます更生から離れてしまいます。

野田さんは悩んでいる人は「ものすごいエゴイスト(他人のことは考えず、自らの利益だけを考える人)である」と、その問題点を鋭く指摘します。

悩みをつくりだすものは、悩んでいる人自身のエゴイズムでありファシズムであり幻想なのです。

悩んでいるほうが周囲の社会からの受けがいいし、すべての責任を自分以外の人に押しつけることができるし、さらには他人に復讐する快感さえ味わえるし、また自分を許すことができるのです

つまり、「悪いあなた、かわいそうな私」と言えるのです。

野田俊作(2016 ).「第1章 グループ・セラピーの方法」 『グループと瞑想 アドラー心理学を語る2』  創元社

人間関係の悩みを抱えている人にとっては、とても心が痛む指摘ですね。確かに悩んでいれば人から責められることを避けられ、「かわいそうな私」と負の優越感に浸ることができます。

けれどそれでは状況はまったく好転せず、周りの人を苦しめ、自分自身も孤独になってしまいます

仮にとても悩んでいる人が近くにいたらどう思うでしょうか。始めは当然「何かあったの?大丈夫?」と声をかけ、心配します。

しかし…。

その人が悩んでばかりで、悩みを解消するような具体的な行動を一向に取ろうとしなければ…。正直、ウンザリしてきます。接するたびにその人から生気を吸い取られるような気がして、「もう関わりたくない、離れたい!」という気持ちになりますね。

自分がそんな周りをウンザリさせる人になっていないかと、反省させられます。

「悪いあなた。かわいそうな私」は仏教の“愚痴”の心

『グループと瞑想』のタイトルの中にもあるように、この本には悩みの解決法として「瞑想」が紹介されています。

瞑想は元々は仏教の修行法です。アドラーは瞑想に関しては言及していませんが、その効果の素晴らしさに野田さんが着目し、現代に合うようにアレンジして、カウンセリングの中核に据えられているのです。

それほど野田さんは瞑想に傾倒されていて、仏教の教義そのものとアドラー心理学との強い親和性についても本には書かれています

今回の悩みについても、仏教とアドラー心理学とで共通性を感じました。

先に「『悪いあなた、かわいそうな私』と言える」ために悩んでいるとありましたが、仏教ではこのような心を愚痴といいます。

愚痴というと今では不平不満のように使われていますが、元々は仏教用語であり、人を恨んでいる心のことです。

愚痴の心により「私は悪くない。悪いのは全部あなただ」と自己を正当化し、他者を恨み、責任転嫁をしてしまうのです

こんな愚痴の心丸出しで、果たして良好な人間関係を築いて幸せになれるでしょうか?

…とても無理ですよね。

この愚痴の心は仏教では「」とさえいわれています。食中毒になれば、たちまち猛烈な苦しみに襲われるように、毒は人間の体を苦しめるものです。

「悪いあなた、かわいそうな私」という心でいれば、やがては愚痴の毒に侵されて精神的に苦しむことになってしまいますね。

この愚痴の心は誰にでもあり、今は大きな悩みを抱えていない人でも、いったん人間関係のトラブルに巻き込まれたなら、愚痴の毒に侵されてしまうかしれません。

私自身も人間関係のトラブルを見舞われたとき、他人のせいにしたい気持ちいっぱいになってしまいます。

人間関係の悩みを悪化させないためには、「『悪いあなた、かわいそうな私』という愚痴の心は不幸を招く恐ろしい心だ」を自覚し、「そんな心になってはいないだろうか?」と振りかえることが大切ですね

まとめ

  • 野田さんいわく「そもそも人間には本当は悩みなんてない」「自分の目的(自己保身)を達成するために悩みを使っている」
  • 悩んでいる人は実は自分の世間体しか考えていない「エゴイスト」。そんな状態では事態は好転しない
  • 「悪いあなた。かわいそうな私」という心は仏教の愚痴。愚痴は毒にたとえられ、人を精神的に苦しめる
  • 愚痴は恐ろしい、と自覚することで人間関係の悩みの悪化を避けられる

次回は、では実際に悩みを解決するために、野田さんはどのようなカウンセリングをされているのか。その段階ごとの手法を紹介します。

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    都内で仏教とWebを勉強する20代。大学時代は沢の大学で箔について研究してました。それと小学校時代に柔道で将来のメダリストに引き分けました(女性)。20代仏教共同管理人。