人気書籍と仏教:経営者が言われてならない「我利我利亡者」とは(HARD THINGSより)

「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」という本を最近読んでいます。

Googleのラリー・ペイジやFacebookのザッカーバーグも絶賛していて、インターネット業界では必読の本として評判の本です。著者のアンドリーセン・ホロウィッツが立ち上げたクラウド企業のラウドクラウド社やオプスウェアというネットベンチャーの立ち上げから売却までを本にされています。そういった類の起業家の本自体は珍しくありません。しかしこの本がすごいのは、自らの経験を通じてベンチャー企業に起こりうることを綺麗に体系化しているところにあります。組織の拡大とともに生まれる歪み、反旗を翻す立ち上げ社員やストックオプション狙いの中途採用の役員など、起こりうることと、その対処法が載せられています。起業家を志す人ならば確かに必読したほうがよい本です。

さてそのHARD THINGSに気になるワードが書かれていました。

「我利我利亡者(がりがりもうじゃ)」です。

それは、たちの悪い幹部社員の説明部分で書かれていました。

この種の「頭のいい最悪社員」ほどのレベルにも存在し得るが、幹部社員だった場合、その影響は特に破壊的となる。幹部社員の多くは、ろくでなし、我利我利亡者、見栄っぱり、その他の罵倒語で呼ばれるような性格である。

この言葉、仏教の言葉なのですが、どういう意味かご存知でしょうか。解説したいと思います。

我利我利亡者とは

さて我利我利亡者ですが、聞いたことはなくとも字面を見て分かる人も少なくはないと思います。

我利というのは、我(私)の利(利益=幸せ)ということで、自身の幸せを言います。それが繰り返されているので、我利我利で自分の幸せしか考えないということです。アイスのガリガリ君は一切関係ありません。

つまり他人の幸せはどうでもいい、自分さえ幸せになればそれでよいという考え方を、我利我利の考えというのです。そんな人は必ず滅びゆくので、亡者(失う者)と続くのです。

仏教ではこの我利我利の考え方を徹底的に否定しています。我利我利亡者は嫌われると仏教では教えられています。もし我利我利亡者と言われたとしたら仏道を求める人としては失格と言わざるを得ません。

HARD THINGSで罵倒語の一つとしてあげられているのも頷けます。こういう人は他の人に悪影響しか及ぼしません。

仏教は利他の教えなので、それに真っ向から反抗する我利我利には決してなってはならないと教えられています。

仏教は自利利他の教え

仏教では自利利他が教えられています。

自利とは自分の利益(自分の幸せ)、利他は他人の利益(他人の幸せ)ということで、他人の幸せが、そのまま自分の幸せになるという考え方です。

自分が幸せだから他人が幸せになるのではなく、まず先に自分以外の人を幸せにする考えを自利利他というのです。

他人のために動くことを仏教では利他行と言われます。我利行とは言われません。行というのは善という意味もあります。利他であるから善なのです。どんなに良いことでも我利我利の心でやった善は、本当の意味では善とは言わないのです。

この自利利他の心のままに行動すると必ず栄えます。そういった人を慈悲心のある人といいます。相手の苦しみを除き、楽を与えられる人です。仏様は大慈悲をお持ちの方です。菩薩も利他行に努めておられます。仏教を求める人は利他に徹することが大事と仏教では強調して教えられています。

まとめ:経営者たるもの自利利他の行にはげむべし

ということでHARD THINGSに出ていた「我利我利亡者」という言葉から、我利我利と自利利他について解説いたしました。

経営者など人の目にふれる立場にいると色んな罵詈雑言をあびることがあるかと思います。陰口を裏で叩かれていたり、ネットでひどい書き込みをされたり、果てや直接面と向かって言われるかもしれません。これは免れることは難しいと思います。しかし、「我利我利亡者」と言われることだけは避けたいものです。

もし言われたとしたら強く猛省すべきだと思います。自身の振る舞いを振り返りましょう。