後悔しない一生を送るために…「マラソン界の異端児」から学ぶ目的を見据える大切さ

こんにちは。スポーツに関する記事を中心に紹介しています、ライターのかんばんです。

私も日課としている走ること、特にマラソンについての記事をご紹介します。

日本男子マラソン界は、女子マラソン界と比べると、いまひとつぱっとしない状況が続いています。そんな男子マラソン界において、型破りなスタイルと確かな実力で、着々と知名度を高めている選手がいます。

「市民ランナーの星」
「公務員ランナー」
「マラソン界の異端児」

などと聞かれて、「あ、あの人のことかな?」と思いつかれた方はいますでしょうか。恐らく一度は耳にされたことがあると思います。

その選手は、上のような数多くの異名を持つ、川内優輝選手です。

通常、マラソン選手は実業団に所属します。有名な実業団といえば電気機器メーカー大手「コニカミノルタ」ですね。箱根駅伝とともに正月の風物詩になっている全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)では通算8度の優勝を誇る強豪です。

全日本実業団は、身分は会社員ですが、フルタイムで働くのではなく、会社からの手厚いサポートのもとで練習を積み、レースを通じて会社の宣伝をする、いわば会社の広告塔です。

それに対し、川内選手は、埼玉県庁の職員としてフルタイムで働いています。練習時間は自分で工面し、長期の合宿もできなければ、指導者もマネジャーもいません。また競技に関する費用も自分で賄わないといけないという環境で戦っています。

そんな彼が、2014年12月の防府読売マラソンで8度目のサブテン(2時間10分以内)を達成し、実業団顔負けの戦績で日本男子マラソン界を震撼させています。

こうした彼の実績の裏には、「型破りの練習法」があると言われますが、いったいどこが型破りなのでしょうか。
また、彼はどうして型破りを断行したのでしょうか。

闇雲にたくさん練習をしても期待する結果は得られない

川内選手は、練習方法に以下の5つのルールを設けています。

  1. オーバートレーニングはしない
  2. メリハリをつけて練習する
  3. マラソン実戦主義
  4. 流しをやらずにバネをためる
  5. 1部練習が基本

(1)のオーバートレーニングはしない

川内選手の練習量は月間600km程度。通常、実業団は月間1000km走るが、これでは、オーバートレーニングによるケガや慢性疲労の危険がある。

(2)メリハリをつけて練習する

川内選手はポイント練習(心身を追い込む練習)を週に2回しかしない。これによって疲労が抜けて、追い込むべきときにしっかり追い込める。

(3)マラソン実戦主義

川内選手はマラソン出場回数が多い(年間10回以上)。レースが練習替わり。実戦による経験が、様々な展開に対応する強さを養う。練習ではこれが養われにくい。

(4)流しをやらずにバネをためる

「流し」とは、短い距離を全速力の8割程度で数本走ることで、これを実業団はよくやっている。しかし、川内選手は動き作りのためと割り切って、レース前後以外はやらない。

(5)1部練習が基本

多くの実業団は、合宿以外の日も2部練や3部練(1日に2回~3回練習する)をやることが多いが、川内選手は1部練にこだわる。その方が1回1回の練習に集中できる。

川内選手は、実業団と同じような練習が物理的にできないという制約を逆手にとって、効率の良い練習法を工夫して実践し、結果を出しています。

このとき「そもそも何のための練習なのか」という原点に立ち返り、これまでのマラソン練習のセオリーをことごとく無視したことで日本陸連が手を焼くほどの存在になったのですね。

「走った距離は裏切らない」の罠

マラソン界には、「走った距離は裏切らない」という言葉があります。

しかし、この言葉の真意を理解せず、実業団や陸上強豪校の多くは、「たくさん練習しないと強くなれない」という強迫観念に駆られて、とにかく量をこなす練習スタイルに陥る傾向にあります。

これでは、「練習のための練習」となってしまい、たとえ結果を出しても、「これまでたくさん苦しい練習をこなしてきて、それでうまくいっていたから」という自負心にすがり、それ以上の創意工夫や発想が止まってしまいます。

そして、肝心の「狙ったレースで『最高』のパフォーマンスを発揮する」という目的からはむしろ遠のいてしまいます。

対して、川内選手は一つ一つの練習の目的を正しく見据えて、目的にかなう練習となるために、既存のスタイルを躊躇なく打破していく。その思い切りのよさが、彼と同じようにフルタイムで働きながらレースに出ている多くのアマチュア競技者から、大きな共感を得ているのです。

最終目的を見据えてこそ最良の結果を得る創意工夫が生まれる

さらに、川内選手が公務員という立場で競技としてマラソンを続ける目的は、

  • 「世界中のすべてのランナーに、日本の埼玉にはフルタイム勤務で世界と戦うランナーがいるということを見せたい」
  • 「『強豪校・実業団か辞めるか』ではなく、『普通の学校・市民ランナー』でも自分自身で考えながら自由に競技を続けることで、『楽しみながら強くなることもできる』ということをもっと知ってほしい」

というところに立っています。 そもそも自分が何のためにマラソンをするのか、その目的を見据え、その目的に対し最良をの結果を得るための創意工夫をしているからこそ、市民ランナーとして大きな成果を挙げておられるのですね。

これはマラソンのことに限らず、すべてのことに共通していることですね。目的を見据えた上でそこまでの最短のプロセスを築く。言われれば当たり前のことかもしれませんが、目的を見据えることを私たちは怠り、目の前のことに闇雲に取り組むばかりで目的を見失いがちです。それでも結果が出ているときはいいのですが、結果が伴わなくなると努力することを途中で投げ出してしまうでしょう。

これは人生そのものについても言えることです。

「自分はそもそも何のためにがんばっているのか?」
「何のためにこんなに苦労して生きているのか?」

順境のときは悩まなくてすみますが、苦難がきたときに人生の意義を見失えば、生きることに疲れ、「自分の人生、こんなはずではなかった!」と後悔することになってしまいます。さらには人生を投げ出したくなることにもなるのです。だから、人生の最終目的も見据えることが先決問題であり、その大切さを仏教でも説かれているのですね。

川内選手を見習い、目的を見据え、目的に沿った人生を生き抜いていきたいと思います。

参考

スポーツナビ「川内優輝を強くした5つのマイルール(前編・後編)」 スポーツナビ「川内優輝を強くした5つのマイルール(前編・後編)」