人生をやり直したいあなたに。映画化作品『サクラダリセット』から学ぶ後悔しない人生の始め方

映画『サクラダリセット 前篇/後篇』公式(@sagradamovie)さん | Twitter より引用)

リセットボタンを押すように、人生をやり直せたらーーー

そんな願いを叶えてしまう能力が「リセット」。

世界を3日巻き戻す力を持った少女・春埼美空(はるき みそら)と、見聞きしたことを絶対忘れない能力を持った主人公・浅井ケイ

特殊な能力を持った2人が力を合わせ、人々の悲しみを取り除こうとする物語が『サクラダリセット』です。

前篇・後篇の二部作で実写映画化し、2017年3月25日から前篇、5月13日からは完結編となる後篇が上映予定。さらに4月上旬からは平行してアニメ化も実現し、今春目が離せないタイトルでしょう。

原作『サクラダリセット1 CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY』から、人生をやり直したい心との向き合い方を考察します。

『サクラダリセット』あらすじ紹介

リセット」たった一言。それだけで世界は、三日分死ぬ。

物語は特殊能力を持つ「能力者」たちが住む街・咲良田(サクラダ)を舞台に展開されます。

住民の約半数が物理法則に反した超能力者の街なのですが、街を出ると能力のことを忘れてしまうため、咲良田の中でしかその力は使われません。

主人公の浅井ケイも能力者の1人であり、その能力は記憶保持。

一度見聞きし考えたことをいつでも確実に思い出すことができます。

咲良田の中でしか使えないので人より記憶力が良いという程度の力ですが、ヒロイン・春埼美空の力「リセット」と組み合わせることにより、ケイの力は危険なものに。

リセットは時間を巻き戻す力です。

たとえば7月14日に死んでしまった猫でも7月12日に巻き戻せば死ななかったことにできます。

世界全てを巻き込む強力な力といえますが、いくつもの制限があります。

・リセットで復元できるのは、事前に「セーブ」していた瞬間に限られる。

・改めてセーブし直すと、以前セーブした時間には戻れない

・セーブしてから72時間が経過すると、その効果は失われる

・春埼美空は、特定の人物(今のところはケイのみ)に指示されなければ能力を使えない

・一度リセットを使ってしまうと、それから24時間はセーブができない

・春埼自身にも効果がある

最大の問題点は、使用者の記憶も書き換えられるので、自分が能力を使ったことさえ春埼は覚えていることができないこと。

しかし浅井ケイの能力は非常に強度が高く、リセット前の記憶を保持することができます

春埼がリセットを使ってもケイは記憶を持ったまま三日前に立ち戻るので、力を合わせると過去を変えることができるのです。

そんな2人は一組になって行動し「奉仕クラブ」という部活動をしています。

咲良田の中でも特別に危険だとみなされた能力を持つ者は、能力を管理する機関・管理局から強い監視を受けますが、任務をこなすことである程度の自由を得られる部活動が「奉仕クラブ」。

ある日ケイはクラブ顧問の津島から指示を受け、村瀬陽香という人物に会います。

陽香の依頼は、死んだ猫を生き返らせること。

ケイは陽香に問います。

貴女はその猫のために、世界を三日間殺す覚悟がありますか?

ケイの行動から分かる「未来」を激変させる「いま」の行い

ケイは何も忘れない。一言一句違わず、まったく同じ言葉を繰り返すことができるし、表情や動作やテンポまで完全に再現してみせられる。

実際に今、彼はそういう作業を行っているはずだ。

依頼を受けリセットを使ったことにより、世界は三日前に戻ります。

世界でただ1人、三日間をもう一度体験することになったケイは、記憶保持の能力を使い、自分が体験した三日間をできるだけ変えることなく、もう一度過ごすようにします。

三日前に戻れるのだから、過去の自分がやった失敗や後悔も無かったことにできるのですが、ケイは忠実に過去をなぞります

どれほど些細なことだって、未来を変える要因に成り得る

ケイはリセットによって不必要に未来が変わることを望まない。

そういうことに関して、彼は徹底していた。

リセットの後は食事のメニューも、就寝や起床の時間も、ひとりきりで聴く音楽でさえ同じものを選ぶ

ミュージックプレイヤーの音楽くらいはそのときの気分で選べばいいじゃないか、と春埼は思う。

でも、もしかしたらイヤホンからほんの少し漏れる音で、誰かの未来が変わるかもしれない

それが小数点の右側に数多くのゼロを並べた確率だったとしても、完全にあり得ないと照明されない限り、彼は誠実に台本をなぞり続ける

きっと自分のほかには誰も、そのことに気づきはしないだろう、と春埼は思う。

彼が日々、どういった努力をしているのか、周りの人たちは知らない。

過去の失敗を無かったことにできる力を持ちながら、その力を「奉仕クラブの」任務にしか使わず、三日間同じことをできるだけ繰り返すケイ。

誰も気づくことのないケイの努力には理由がありました。

その少女は事故で死んだ

ただしその死には、リセットが深く関係していた。

本来であれば死ななかったのに、リセットを使ってやり直した世界で、彼女は死んでしまった

浅井ケイがリセットを使うよう指示を出して、春埼美空がそれに従って、結果、彼にとって特別な少女が死んだ。

ケイはそのことを後悔し続けている。明確に。

2年前、リセットを使ったことによって未来が変わり、リセットを使う前は死ななかった少女が事故死します。

どんな些細なことでも過去の行いを変えれば、死ななかったはずの少女だって二度とかえらぬ人になる。

ケイは「いま」の行いを変えることが未来をどれだけ激変させるかということを身をもって知ります。

きっとあの「野良猫のような少女」に懺悔するために、彼はリセットの指示を出すのだろう。

彼女を殺した能力でより多くの誰かを救いたいと願うのだろう。

その反面でリセットが不必要に影響し過ぎないよう、孤独な演技を続けるのだろう。

ひとりの少女が死んだ、その広大な空白を埋めるために、一匹の猫であれ見捨てることができないのだろう。

ケイの考え方から学ぶ「過去」との向き合い方

リセットボタンを押すように、「リセット」で人生をやり直したい。

誰もが一度はこんな後悔をしたことがあるのではないでしょうか。

私たちは浅井ケイではないので、過去を変えることはできません。

しかし過去を変える力を持ちながら、あえて過去の世界における行いを徹底して見つめるケイに学べることがあります。

ケイは自身の記憶を、できる限り客観的に眺めるよう努める

過去の自分になんの感情も抱かないわけにはいかない。

それでも、過度に肯定も否定もしないようバランスを取ろうとする

過去の行いである「記憶」を客観的に見つめることは、ケイにとっては未来に予期せぬ悲劇を招かないためにできる唯一のこと。

同様に私たちなら、変えることのできる「未来」のために過去の行いをケイのように見つめることができます

過去を変えれば未来が激変するように、「いま」の行いを変えることで「未来」がより良いものになるでしょう。

このような考え方を仏教で因果律(いんがりつ)といいます。

「因」とは自分のやった行為、「果」は自分に起きる結果ということ。「律」は法則。

原因があって初めて結果が起こるという普遍的な原則の上に、この世のすべては成り立っているという意味です。

ケイは過去の行為を変えたことで、特別な存在だった少女を失うという悲劇を生み出しました。

夜更かし、暴飲暴食といった日頃のちょっとした習慣が大病という大きな悲劇をもたらすように、ケイだけでなく私たちの苦しみ、悲しみには必ず過去にやった行いが原因となっています。

ですから自分の過去の行いを冷静に見つめ反省し、「いま」の行いを変えていくことは、未来をより良いものに変えることにつながるのです。

リセット前の行いをなるべく変えないよう気をつけていたケイ。

しかしちょっとした「リセット前にしなかった行動」によって未来は大きく変わり、ケイと春埼は大事件に巻き込まれていきます

「三日後」の日曜日。

ケイは大きな選択を迫られることになります。

「リセット」で大切な人を死なせた経験から、過去の世界で自分の行いを変えないように努めてきたケイ。

そんな彼でさえも、自分の「いま」の行いがまだ見ぬ「未来」をどう変えるかという選択に直面し困窮します。

ケイは目を閉じる。思考するというよりも、ただ迷っていた。

ケイが行動した場合の結果

しなかった場合の結果

ふたつを順に想像して、ため息をついた。

私たちは常に「リセット」の使えない人生を送っています。

そういう点では、ケイ以上に因果律を意識することが必要でしょう。

そして「いま」の行いを静観することは、未来の自分をより良くすることになります。

ケイの行動から私たちにとって「いま」という瞬間がいかに大切かを学び、より良い未来のために日々の習慣を変えていきたいものですね。