仕事ができる人に共通する特徴とは?ベストセラー『最強の働き方』に見る“利他の生き方”

私が今の会社に入社したばかりの頃、新しい仕事で失敗ばかりし、よく悩んでいた覚えがあります。上司からの信頼も失い、「自分はこの先やっていけないのではないか」と思い、未来は真っ暗。

「どうすれば仕事ができるようになるんだろう?」

そう考えて手に取ったのがこの本「最強の働き方」でした。

「最強の働き方」は2016年度のAmazonランキングで4日連続トップ1位、大人気となったビジネス書です

著者のムーギー・キムさんによれば、この本の目的は「『自分が選んだ分野で、一流の仕事をするにはどうすればよいか?』という問いに対して、読後に具体的な行動指針を得られるようにすることである」とのこと。

素晴らしい中身がありつつも、作者自身の謙虚さとユーモアさが醸し出され、何度もページを読み返してみたくなるぐらいの気持ちになりました。ためになる教えが詰まった濃厚な本です。

この本の教える「世界一流の働き方」から、仏教の観点も含め、仕事ができる人に共通する特徴をお伝えします。

信頼感を勝ち取る「一流の基本」

本書では、作者がこれまでに出会ってきた一流の上司や部下、同僚の働き方を紹介しています。そのうちのいくつかをご紹介しましょう。

第1章「一流の基本」で出てくるのは、メールの書き方やメモのとり方、プレゼンなどの基本作業です。

一流の基本① “ピンポン玉のような”速さの返信

仕事ができる人のメールの特徴は、とにかく「返事が早い」ことです。
その速さはまるで「卓球のピンポン玉」。返信の速さは、いまできる仕事を後回しにしない自制心や、相手への敬意や配慮の現れでもあります。

一流の基本② 信頼につながる「メモとり力」

また、仕事ができて信頼される人ほど、メモとり魔
信頼や安心感のもとになるのが「この人は聞き逃さず、きちんとメモを取っている」と思わせるメモとり力なのです。

一流の基本③ ニーズを聞き出す傾聴力

相手に興味をもって傾聴する姿勢も同じ。
一流の人は相手のニーズや大意を聞き出し、「この人は自分の話を聞いてくれた」という信頼感を勝ち得るのだと紹介されています。

こうして一流の人の働き方を幾つも見ていくと、その中にある共通の特徴が見えてきます。

それは、相手のための働きかけをとにかく実践し、信頼を得ている、ということです。

メールの返信も、メモを取ることも、傾聴も、いずれも他の人が気持ちよく、滞りなく働くために意味のあることですよね。

でもこれだけではありません。別のエピソードでも、「相手のための働きかけ」が繰り返し言われています。

著者を猛省させた、組織トップの“ある行動”

第4章の表題は「一流のリーダーシップ」。部下や後輩を持たれた方だと、ちょっとドキドキしちゃうような内容です。

この章で紹介されている一流の方は、以下のような、どなたも「こんな人、ぜひ近くに居てくれたらいいな」と思わせるような人ばかりでした。

  • 誰に対しても敬意を持ち、丁寧に接する気さくな友人
  • 桁違いにお金持ちでモデルも顔負けないほどキレイなのに、謙虚で物腰の柔らかいイギリス人女性
  • 絶対に人の悪口を言わず、いつも褒めることを忘れない親戚のおじさん
  • 普段は無口だけど、部下がやっている日陰の仕事にきちんと目を向けてくれる上司

そんな魅力的な人ばかりの中で、私が特に感銘を受けたのが、お手洗いのエピソードです。

あるとき、会社のお手洗いで手を洗った後、水しぶきを放置してしまった著者。すると、一番えらい会長がやってきて、その水しぶきを丁寧に紙タオルで拭いているのです。

ものすごく忙しいはずの会長が、だれもやりたがらない仕事をやっている。

その姿を見て著者は痛切に反省したと言います。

一番偉い会長ですら、トイレの洗面台を掃除するんだ。それよりもはるかに下にいる私が仕事を選り好みしてどうする!

トップ自らが動くことを背中で示す。その背中を見た部下は感化され、仕事に真摯に取り組むのではないでしょうか。こんな風に立派でかっこいい上司、憧れますね。

そういえば、私の会社の同僚の一人は、みんなで共有して使っているゴミ箱がいっぱいになったら、率先してゴミ捨て場に片付けに行っていたことを思い出します。面倒事を進んで行う彼は、やはり仕事もバリバリこなす、チームの頼れる存在でした

その他、この本は、一流の自己管理法や自己実現など、376ページに盛りだくさんの内容です。そして忘れてはいけませんが、2年間かけてこの本を書かれた作者のムーギー・キムさんもまさしく一流の存在。本書にかかれたキムさんの思いから、一流の真髄が感じられました。

一流の人の特徴に共通する「自利利他」

相手を思い、配慮し、誰に対しても敬意を失わない

常に相手を大切にしている一流の人達は、相手から信頼され、「この人のために頑張ろう」と思わせます。そうなれば部下がついてきてくれてチームの結束力は強まりますし、得意先とも仲良くなれます。

結果的に会社の生産性も上がって、契約の増加にもつながり、大きな利益が生まれますね。他者から信頼を得ることで、会社に対しても更なる貢献ができるようになるのです

この『最強の働き方』に出てくる一流の人の特徴は、2600年前から現代まで残る、仏教で勧められる生き方と共通しています。

その生き方とは「自利利他(じりりた)」です。自利利他とは相手の幸せ(利他)に貢献すると、その行いは自分の幸せ(自利)になる、という教えです。

相手の幸せへの貢献とは、『最強の働き方』でいえば、上記で紹介した「速い返信」や「傾聴」があたりますね。

率先してゴミを捨てに行くことや、トイレ掃除をすることも立派な貢献です。また部下の長所を見つけてほめることや、笑顔で接することも貢献になりますね。

仏教では「相手のためになることをすれば、それは一切の例外なく自分のためになる」と言われています。『最強の働き方』で見たように、一流の人は相手のためになることを怠りません。それが結果的には信頼に変わり、仕事の成功につながるのです。

なお、実はこの本の中に仏教の教えが3度も引用されています。それだけ著者と仏教のつながりが深いのでしょうか。面白いご縁を感じますね。

諦めずに行動し続ければ、結果は返ってくる

『最強の働き方』でも仏教でも、共通して「相手への貢献の大切さ」が述べられています。

もしあなたが仕事が上手くいかず、悩んでいるのでしたら、この本は非常にためになるでしょう。本の内容は具体的かつ、すぐにでも実践できる指針ばかりです。

とはいえ、結果まですぐにはついてくるとは限りません。他者からの信頼を勝ち取ることは、容易なことではないからです。だからこそ、勝ち取れた人は「一流」なのでしょう

でも諦めずに行動し続ければ、やがて必ず良い結果は返ってきます。それが仏教の「自利利他」の教えなのですから。

最後までこの記事を読んでくださり、ありがとうございました。あなたの仕事が少しでも良きものになることを願っています。