巨人選手の野球賭博問題はなぜ起きたか? 人生をも狂わす「軽はずみ」と予防策

プロ野球・巨人の3選手による野球賭博問題が話題になっています。

球団は11月9日、賭博を行っていた3選手(福田聡志、笠原将生、松本竜也)との契約を解除する方針を決めました。
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そしてプロ野球・コミッショナーは11月10日、この3人を無期失格処分とする裁決を下しました。
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野球協約で無期の失格処分は、永久失格処分(永久追放)の次に重い処分です。無期失格となった選手は最低5年間、処分が解除されず、大リーグや韓国・台湾などの他のアジアリーグでもプレーできなくなります。協約上は社会人野球や独立リーグに所属することもできますが、賭博を行った選手を獲得するチームは常識からして皆無でしょう。事実上この3人は、選手生命が絶たれました。

笠原元選手と松本元選手はそれぞれ24歳、22歳とまだ若いのですが、福田元選手は32歳。妻子も抱えています。引退した選手は通常、所属していた球団から次の働き口を斡旋してもらえますが、それも完全に潰されました。

賭博問題に関して福田元選手は以下のように話しています。

軽はずみに始めてしまった。その後もどうしてもやめられなかった。自分の甘さを後悔している」
家族に対して申し訳ない。今は子供の相手をしている時だけが気が安らぐ」(9月12日に三男が誕生したばかり)
今まで野球しかやってこなかったので、どうしていいか分からない…

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身から出た錆であり、同情の余地はないのかもしれませんが、次の野球関係の就職口の望みも断たれた上、幼い子供もいる福田元選手を思うといたたまれません。人生を狂わした野球賭博。どうして取り返しのつかないことになったのでしょうか。

Poker face.
Poker face. / tiffa130

球場内での賭け事が常態化

実は野球賭博だけでなく、巨人選手が日常的にほかの賭け事をしていたことが発覚しました。

巨人賭博解雇3人だけじゃない球場で賭けポーカーも – 野球 : 日刊スポーツ 巨人賭博解雇3人だけじゃない球場で賭けポーカーも - 野球 : 日刊スポーツ

巨人の全選手、職員276人へ行われた野球賭博についての聞き取り調査により、マージャン・トランプ・高校野球くじなどの賭け事が常態化していたことがわかったのです。しかも賭けトランプが行われていたのは、巨人二軍の本拠地であるジャイアンツ球場のロッカールーム。「大富豪」「ポーカー」などのゲームに1回1万円を賭けるもので、11選手が行為を認めました。

ジャイアンツ球場といえば二軍の公式戦も行われ、試合のない日は選手が一軍入りを目指して鍛錬をする場所です。一般の社会人でいえば職場であり、研修施設にあたるでしょう。そんな場で賭け事をするのはプロ野球選手、また社会人としてのモラルを大きく欠いた行為です。

野球協約に違反する行為ではないとはいえ、決して許されるものではありませんね。

「軽はずみ」が人生を狂わす

賭博行為に手を出すのは悪いことだとは、誰でもわかります。

しかし「自分だけはそんな賭け事には手を出さない」と思っていても、賭け事が常態化している中では、どうしても気持ちが緩んでしまうでしょう。先輩選手に誘われたなら断りにくいもの。「1回ぐらいは大丈夫だろう」と手を出したが最後、いつかやめなきゃと思いつつも流されてしまいます。

無期失格処分を受けた福田元選手の「軽はずみに始めてしまった。その後もどうしてもやめられなかった」という言葉が、賭けに対する緩んだ空気が充満していたことを如実に物語っていますね。

また福田元選手は「今まで野球しかやってこなかったので、どうしていいか分からない…」とも語っています。あとの2人とはちがい、福田元選手には奥さんも3人の子供もいるのです。

今年は一軍での試合出場がなかったとはいえ、2012年には50試合に登板して8勝(1敗)、防御率1.61の好成績を残した投手です。賭博をしていなければ来期も球団に所属して巻き返すチャンスもあったでしょう。

仮に戦力外になったとしても、コーチやトレーナー、球団スタッフとして野球に携わる道があったはずです。しかし「軽はずみ」により巻き返しのチャンスは摘み取られ、野球に関わる道も塞がれてしまいました。

善くない結果が来たときこそ喜ぶ

野球賭博問題の報道を聞いて、「なんてバカなことをしたんだろう」と思われた方も多いかもしれません。

しかしこの問題は、決して他人事ではないと思います。私たちも軽はずみから悪いとわかっていることに手を染め、たまたま見つからなかったことをいいことに、悪事をやり続けてしまうことはあるでしょう。

横領、粉飾決算、不正献金、食品偽装、建築偽装。枚挙に暇のない不祥事ですが、いずれも始まりは小さな悪であり、それが積み重なって取り返しのつかない状況になってしまったのですね。

先日Facebookを閲覧していると、知人の「善くない結果が返ってきたら、それは喜ぶべきことなのかもしれない」というタイトルの記事が目を引きました。「悪い結果が来たのに喜ぶ? どういうことなのだろう?」と思って記事を読むと、タイトルの意味がわかりました。

その方は高速道路でスピード違反をし、警察に話を聞かれることになっそうです。そのときになぜか悔しい思いが出てこなかった。それはもし、スピードの出し過ぎが原因で事故を起こして自分や相手に後遺症が残ったりすれば、罰則金の数万円どころでは済まなくなると知らされたからです。そうなる前に警告されてよかった、と書かれてありました。

「後の祭り」となる前に、悪い兆候に気付いた時点で、いかに早く不正を取りやめるかが大事と知らされます。

一病息災」という言葉もあります。持病を持っている人や大病を患った経験のある人の方が、無病の人より健康に気を配り、かえって長生きすることですね。病気になるのは辛く苦しいですが、それによりこれまでの不摂生を見直し、長生きできる身体づくりに励むようになるのです。

これは身体だけでなく日常全般にいえることで、悪い結果が返ってくるのが早ければ早いほど、更生するより多くの機会がつかめるのです。

悪業力が蓄積する前に正すべき身の振り方

仏教では私たちの行いのことを「業(ごう)」といわれ、業には結果を引き起こす力、業力(ごうりき)があると説かれています。

善い行い(善業)は善い結果を、悪い行い(悪業)は悪い結果を引き起こす力があり、それぞれ善業力悪業力といわれます。しかもこの業力は、決して消えることはなく、私たちの心に蓄積されるのです。

善業力がたまっていくのならいいのですが、悪業力の場合は恐ろしいです。人の見ている見ていないにかかわらず、悪事を重ねれば悪業力は確実に蓄積されていきます。そして火山の噴火のように、縁の訪れによって取り返しのつかない悪果となって返ってくるのですね。

まだ取り返しのつく悪果が来たとわかった時点で反省し、自分の身の振りを変える。環境も変える。それが取り返しのつかない悪果への予防策ですね。

今回の野球賭博問題を通して知らされたことをよくよく、自戒していきます。