ヨガと仏教ってどういう関係?一流ビジネスマンも実践するヨガの目的とは

Girl practicing yoga at sunrise, outdoor sun

日本では、「ヨガ」ときくと、女性の習い事というイメージが強いですが、実は日本のビジネスマンの間でも、密かにヨガが浸透しつつあります。

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おそらくそのきっかけとなっているのが、アメリカのビジネス界でヨガが取り入れられていることです。アメリカでは、全国ヨガ人口の2~3割が男性と言われており、個人レベルから企業レベルへと広がりを見せつつあります。Google、インテル、ナイキ、Yahoo、アップル、P&Gなど、様々な業界の代表企業や団体が、仕事の効率や想像性を高めるために、続々とヨガや瞑想などのプログラムを導入しているそうです。

また、ビジネス界での成功者にヨガ・瞑想の愛好者が多いことも知られています。アップルの創業者スティーブ・ジョブズも、瞑想を生活習慣に取り入れていたそうです。

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世界的な視点でビジネスを展開したい日本のビジネスマンには、アメリカでのビジネスの成功事例を積極的に取り入れる傾向があります。そんな彼らがヨガに着目し、ヨガを生活に取り入れるのは、ごく自然なことです。

果たして、ヨガがビジネスマンにもたらす効果とは、どんなものでしょうか。

ヨガの本来の目的は、心を大自然と一体化させること

ヨガの起源は、約4500年前のインダス文明までさかのぼります。現代のヨガの原型となっているのは、紀元前200年の「ラージャヨガ」と言われるもので、瞑想を主体としていました。

瞑想を深めることで意識を雑念から切り離し、意識を一点に鎮め定め、大自然と一体化させることで、自然界のすべてのものを愛すべきものとして受け入れる…。この状態をさとりの境地と定義し、さとりの境地にたどり着く手段として、座禅による瞑想が行われていました。

しかし、座禅瞑想だけでは、雑念を振り払い、さとりの境地まで到達することが難しいという問題がありました。そこで、呼吸法やアーサナ(独特のポーズをとること)を通じて瞑想を深めようとする「ハタヨガ」が誕生しました。紀元後1300年頃のことです。

その後、ヨガは世界中に伝来し、1970年ごろにアメリカでブームになりました。そして、呼吸法やポーズが派生して、インドとアメリカでそれぞれ独自の発展を遂げました。現在は、呼吸法やポーズを主として、体の調整や集中力の向上、リラックスなどを目的とした、日常生活の質を向上させるプログラムとして普及しています。

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ヨガと仏教はどういう関係なのか?

ヨガの本来の目的が「さとりの境地」ということから、初期のヨガは修行の一環という位置づけでした。これに加えて、ヨガと仏教が共にインド発祥で、かつ、経典の言語が共にサンスクリット語であるということから、ヨガは仏教の修行の一つとして認識されているようです。

確かに、日本の禅宗という宗派では、座禅瞑想によって心を鎮め定め、煩悩と対峙することを試みていますので、ヨガは仏教の一部という印象を多くの人に与えていると思います。

しかし実際は、ヨガはバラモン教という、仏教とはまったく教義の異なる教えを起源としています。そのため、仏教との関係はそれほど密接でないと見たほうがよさそうです。なぜならヨガでいうところのさとりの境地は、仏教でいうところのさとりの境地とは全く異なるからです。さとりという観点で、ヨガと仏教で決定的に異なる点は、仏教では修行せずにさとりを開く道も説かれているということです。

取り組み方ひとつで、ヨガも立派な善行になる

そうなると、ヨガは単なる集中やリラックスの手段でしかないのか、という疑問がわいてくることでしょう。実は、ヨガは取り組み方次第では、立派な善行になります。

仏教では、原因と結果の関係、因果の法則が説かれています。

仏教において因果は次のように説かれる。

    • 善因善果(ぜんいんぜんか)…善が善をうむ
    • 悪因悪果(あくいんあっか)…悪が悪をうむ

因果 – Wikipedia

これは、平たく言えば、「善いことをすれば良いことが起こり、悪いことをすれば悪いことが起こる。善いことも悪いことも、全て自分の行為によって決まる」ということです。

この因果の法則がよくわかると、廃悪修善(はいあくしゅぜん)の心が起きてきます。廃悪修善とは、悪い行いをやめ、善行に向かう心のことです。この心に従うことで、善果に恵まれるようになるのですね。

ここで問題になるのが、「では、どんな行いが善い行いなのか」ということではないでしょうか。

そこで仏教では、代表的な善い行いを6つにまとめて教えられています。これを六度万行(六波羅蜜)といいます。

六波羅蜜(ろくはらみつ、ろっぱらみつ)とは、ブッダになりうる資質を獲得するために実践する六つの項目のこと。

  1. 布施(波羅蜜)
  2. 持戒(波羅蜜)
  3. 忍辱(波羅蜜)
  4. 精進(波羅蜜)
  5. 禅定(波羅蜜)
  6. 智慧(波羅蜜)

波羅蜜 – Wikipedia

ヨガの瞑想や呼吸法、ポーズは、これらの中では「禅定(ぜんじょう)」に相当します。心を鎮め定め、体の感覚を通じて、自己を客観視することで、自分のこれまでの行為を冷静に見つめることができます。

六度万行の素晴らしい点は、6つのうちどれか1つでも常に徹底していけば、残り5つを含めて6つ全部実行したことになるという点です。ヨガを通じて禅定を徹底し、未来の自分の行為を改善していけば、六度万行の実践につながり、次々と善い結果に恵まれることでしょう。

一流のビジネスマンの間でヨガが支持される理由は、彼らが知らず知らずのうちにヨガを通じて六度万行を実践し、成功を手に入れているからだと思います。