『おしゃかしゃま』歌詞の意味が深い!RADWIMPS野田洋次郎さんのアンチ宗教っぷりとは

映画『君の名は。』の主題歌を歌い、紅白歌合戦にも出場が決まったRADWIMPS

彼等の数ある曲の中でも、カラオケ歌いづらいランキングNo.2、ギターの運指が超複雑、さらに歌詞の内容もめちゃ難解…と、いろいろな意味で難しすぎる曲が『おしゃかしゃま』です。

もともとは現行の5倍以上もあったといわれる濃厚な歌詞に、一体どんなことが歌われているのか。というかそもそもなんで『おしゃかしゃま』というタイトルなのか。

今回はその難解な歌詞の徹底解説に挑みます!

人間中心主義をぶった斬る!冒頭部分の意味とは?

カラス

まず歌詞の冒頭をみてみます。

カラスが増えたから殺します

さらに猿が増えたから減らします

でもパンダは減ったから増やします

けど人類は増えても増やします

カラスは黒くて何となく不吉。ごみを漁って道路を汚す邪魔な存在だから、殺してしまう。猿は人間を襲い食べ物を奪っていく。やはり目障りな存在だ。だから減らしてしまおう。

その一方、「価値があるもの」は何がなんでも自分のものとしようとするのが人間だ。

象牙が欲しいと象を殺し、客寄せのためにパンダを捕え、数が減ってきたら今度は「絶滅危惧種」に指定して保護をする。

「地球の豊かな生態系を守るため~」なんて言えば聞こえはいいけど、結局は人間中心主義だよね、ということをRADWIMPSのボーカル・野田洋次郎さんはここで訴えています。

「けど人類は増えても増やします」に強烈な皮肉が効いていますね。まるで天地創造の「神」にでもなったかのような人間の振舞を以下のように歌っています。

 

僕らはいつでも神様に

願って拝んでても いつしか

そうさ僕ら人類が神様に

気づいたらなってたの 何様なのさ

と歌って、「いったい何様??」と「神様」にかけて批判します。

僕は見たことないんだ

あちらこちらの絵画で見るんだ

さらに話で聞いてる神様は

どれもこれも人の形なんだ

確かに、「神」そのものは誰も直接見たことないのに、絵画でみたり話で聞く限り、人の形をしている…。牛やタコ、エイリアンのような形、あるいは無形だっていいのに…

偶然の一致か 運命の合致

はたまた自分勝手スケッチ

あっち こっちそっちってどっち

一体どうなってるんダ・ヴィンチ

それって偶然なの?それとも「神」が自分の姿に似せて人間をつくったから運命?はたまた、人間が自分たちの姿に似せて描いただけの勝手なスケッチ?

そもそもその「神」はいづこに?と問うと、あっちだのこっちだの、各「宗教」がそれぞれ好き勝手に言っている現状。

「もう、いったいどうなってんだ!」と宗教画の権威であるレオナルド・ダ・ヴィンチに投げかけています。

以上、韻を踏んでリズミカルに展開される歌詞ですが、中身はかなり過激です。

野田さんのアンチ人間中心主義的価値観が全面に出ているように思います

そしてその人間中心主義の最たるもの=「宗教」への批判は、この後2番の歌詞からますます過激になります。

2番の意味、元ネタは「旧約聖書」の『創世記』から?

聖書

もしもこの僕が神様ならば 

全てを決めてもいいなら

7日間で世界をつくるような 

真似はきっと僕はしないだろう

2番の歌詞は、「旧約聖書」の『創世記』冒頭、「神」による天地創造を取り上げて、もしも自分だったら…と野田さんが「神」を「僕」に転置して想像するところから始まります。

ここから怒涛の「宗教」批判、野田節が炸裂し、内容もより難解になります。

きっともっとちゃんと時間をかけて 

また きちっとした計画を立てて

だって焦って急いで つくったせいで 

切って張ってつくって 増やして減らして 

減らしたら増やして

同じく『創世記』にある、有名なノアの方舟の話を想起しながら味わってみると、歌詞の意味が少しみえてくると思います。

神は天地創造の6日目に人間をつくり、「産めよ、増えよ、地に満ちよ」と言って増えたはいいものの、人間の愚かさ・堕落ぶりに落胆し、今度はリセットするために大洪水を起こす決意をしたと『創世記』に記されています。

そのとき、善良なノアとその家族だけは、つがいの動物達とともに、船をつくってこの洪水を免れたと信じられています。

全知全能なのに神様は無計画?

こうした内容に対して野田さんは、待った!をかけています。

そもそも、神は全知全能であり、その神が人間をつくったのに何故、人間は堕落したのか

そして、勝手に増やしておいて、今度は減らす?
つくったり壊したり、小学生の図工じゃあるまいし、もし神なるものがいたとしたら無計画すぎないか?と野田さんは批判するのです。

それを次に、さらに踏み込んでます。

なして どうしてってなんでかって?

「?」出したフリして わかってるくせして

話して聞かせてなんでなんで

だって馬鹿なんだって人類なんて

そりゃそうなんだって分かってるって

だから1,2,3で滅んじゃえばいいんだって      

だって なんてったって

馬鹿は死なないと治らない なら考えたって仕方がないさ

野田さんの歌詞をやり取りに起こすと、こんな感じでしょうか。

おしゃかしゃまの歌詞を対話にしてみた

人類
「じゃあどうしてあなたは、そんな大洪水を起こすようなことをしたのですか?」
「なんでかって?ホントは分かってるくせに」
人類
「教えて下さい。どうしてですか?」
「だって人類って馬鹿で愚かじゃん」
人類
「そりゃ、分かりますけど…」
「だから1,2,3で一旦リセットしようって。だって、なんてったって馬鹿は死なないと治らないんだから」

あくまで想像ですが、あまりにも強烈ですね笑

さらにこう続いていきます。

>さぁ来世のおいらに期待大 

でも待って じゃあ現世はどうすんだい

さぁ無茶しよう そんで苦茶しよう 

二つ合わさって無茶苦茶にしよう

さぁ有耶しよう そんで無耶しよう 

二つ合わさって有耶無耶にしよう

馬鹿は死なないと治らないから、死んで来世こそ…っていうけれど、そうすると現世(今)はどうなっちゃうの?と疑問を投げかけています。

それでは自爆テロなどの無茶苦茶がまかり通ってしまう、それじゃあ生まれてきて、今を生きる意味が有耶無耶になってしまう。

ここが、サビ部分にもつながる野田さんの主張ではないかと思います。

つまり、どの宗教も、来世があるとかないとかを好き勝手言って「これを信じてこうしなさい。そうすれば死んでから助けてやる」、反対に「信仰が足りないと…」と言ってくる

本当にそんなことがあるのか。神なるものをでっち上げて、人間が勝手に言っていることではないのか。そんなことに踊らされて一生を棒にふってもいいのか

そうした宗教全般への批判が、『おしゃかしゃま』の歌詞全体を貫く野田さんの主張といえるのではないでしょうか。

ここで、そういえば、なぜ歌詞の題名が『おしゃかしゃま』なのでしょう

全く出てこないお釈迦様より、頻繁に出てくる『かみしゃま』のほうがいいでは、と思う人もあるのではないでしょうか。

歌詞のタイトルが『おしゃかしゃま』である理由

蓮の花

実は野田さんと同じく、そうした宗教全般をぶった斬られた方こそお釈迦様なのです。これは仏教を知らないひとからすれば、意外ですよね。

よく、お釈迦様(仏、仏陀)も神も同じものだろう、という声が聞こえますが、それは大きな誤解です。

まず、お釈迦様はいわゆる、天地創造の造物主ではありません
それどころか、「造物主は存在し得ない。万物は始まりのない始まりから、成住壊空を無限に繰り返しているのだから」と説いています。

ではお釈迦様はいったい何者なのか?

ズバリ、「真理の第一発見者」です。

ちょうど、引力はニュートン以前から物質に働いていたけれど、それを発見し、法則として世に知らしめたのがニュートンであったように、お釈迦様もすでに存在していた真理を発見し、それを人々に伝えた方なのです。

だからまた、仏教では「一生懸命信じなさい、そうすれば~」とか、反対に「信仰が足りないと~」といったことは説かれていません。お釈迦様は、だれが信じようが、信じまいが「既にある真理」を発見し、それを伝えられただけだからです

ちょうど、太陽が地球のまわりを周っている(天動説)を信じていようと、信じていまいと、地球が太陽のまわりを周っているという事実は変わらないのと同じです。

そこでお釈迦様は常に「信心しなさい」ではなく、(私の発見した真理を)「よく知りなさい」「よく聞きなさい」と説かれています。

話を戻します。なぜこのRASWIMPSの曲名が『おしゃかしゃま』なのか。

前回記事にも書いた通り、野田さんは実は仏教をとてもよく勉強されていると思える節が、いろいろな曲の歌詞から伺えます。そうした仏教をよく知っている野田さんだからこそ、あえて他の宗教との対比の意味で、『おしゃかしゃま』というタイトルをつけたのではないかと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?今回は仏教という観点からRADWIMPSの『おしゃかしゃま』の歌詞を考察してみました。

実は知らないだけで、私たちの日常生活の中に仏教は大きな影響を及ぼしているんです。もちろん、普段聞いている曲の中にも仏教的なことが歌われているものがたくさんあります。他にも紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。

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