陸上競技について興味深いニュースがありましたので、紹介します。
大学の陸上競技界で一番有名な大会は、お正月の風物詩ともいえる箱根駅伝ですね。ですが、箱根駅伝は関東以外の大学には出場権がありません。ですので実は、箱根で優勝しても大学日本一とは言えないのですね。
真の大学日本一は、毎年秋に行われる全日本大学駅伝で決まります。
その全日本大学駅伝で、2014年に京都大学が42年ぶり2回目の出場を果たしたことが話題になりました。
その立役者である平井健太郎選手(当時大学3年生)は、同じ年にトラック10000mを走り、日本人トップでゴールという、輝かしい成果を持っています。
平井選手はどのような環境に身を置き、練習を積み、日本一の成果を挙げることができたのでしょうか?
2009 INTERNATIONAL CHIBA EKIDEN (国際千葉駅伝 2009) 3rd Leg / machu.
限られた環境を好材料へと生かす心がけ
現役京都大学生で、大学陸上長距離界でも全国トップレベル。文武両道を絵に書いたような彼ですが、彼を取り巻く環境は、決して恵まれているとは言えません。
平井選手が在籍している京都大学は、専任コーチ不在のため、練習メニューは自分で考え、自分で時間を決めて独りでこなすことが多いです。レースなどの交通、宿泊の手配なども全部自分たちで行います。
また箱根駅伝常連の大学の場合、選手は寮生活で、栄養バランスのとれた食事も提供されるチームが大半です。アルバイトをしている選手もおらず、練習に専念ができます。対して平井選手は独り暮らしで、食事は自炊。週に2回は塾の講師のアルバイトをしています。
箱根駅伝常連の大学と比較して、平井選手は、ないない尽くしの環境の中で力をつけてきたと言えるでしょう。
平井選手は、東洋経済の取材でこう答えています。
「環境が悪いという考え方もできますが、僕はまったく逆の考えですね。自分のことを自分でやることで強くなれると信じています。
そうすることで、やってもらえたときに感謝の気持ちを持つことができますから。
座っていてもご飯が出てくるのが当たり前になると、そのありがたみはわからないでしょう。感謝の気持ちが自分のエネルギーになっています」
「関東の選手と、何か“差”をつけないと勝負できないと思うので、自分が狙う大会にはしっかり照準を合わせることを意識してきました。
マラソンのオリンピック選考レースも基本的には1発勝負です。自分は本番に合わせるのは得意かなと思います。大切なところで結果を出すためには、心の部分が重要です。練習日誌を書くなど同じことを継続して、生活リズムを正す。身の回りの整理整頓もきちんとできていれば、心が落ち着き、それが安定感にもつながります」
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かつて、東京オリンピックのマラソンで銅メダルを獲得した、円谷幸吉さんを彷彿とさせるコメントです。
私たちは、思うように物事を継続できないときや、思い通りの結果が出ないときに、つい環境のせいにしたくなりますし、同じことを継続する気が萎えてしまうものです。
しかし、平井選手のように、環境が悪いことをむしろ好材料として、基本的なことを愚直に積み重ねて、大きな成果を出しているという例はたくさんあります。
自分でできることは自分で決めて実行する。それを繰り返し継続していくことで、生活のリズムを正す。そうすれば、心が落ち着き、余裕が生まれ、やってもらえたときに感謝の気持ちを持つことができる。
環境そのものも大切ですが、それよりもっと大切なのは、心がけではないかと思います。
自分のことを理解し、どのような縁を選ぶかを考える
仏教では、環境や周りの人たちのことを総称して「縁」と呼びます。
自分の心がけや行い(=因)と縁とが結びついて私たちのパフォーマンス(=果)が発揮される、と仏教では説かれています。(これは「因縁果(いんねんか)の法則」といい、仏教のベースとなる法則です。仏教は因縁果の法則に基づいて教えが説かれています)
自分の力を最大限引き出してくれるような、自分にとって良い縁(=環境)を選んでいくことが勧められます。しかし、その環境があまりに恵まれすぎていると、それが当たり前となり、感謝の気持ちを失ってしまいます。そうなると鍛錬にも身が入らず、良いパフォーマンスは生み出されません。
自分はどのような環境だと力を発揮できるのか。決めたことを継続して実行できるのか。
自分のことをしっかりと理解した上で環境選びをし、その環境(=縁)を生かしていくことが大事なのですね。
まとめ
平井選手の強さの秘訣は、自分のことを理解した上で、最高のパフォーマンスが発揮できる環境選びをされたところにあると思います。
自分のことを深く理解し、どのような環境選びをするのか。いかなる縁を求めていくのか。
これはスポーツに限らず、仕事や日常でも大事なことですね。