ノーベル医学・生理学賞を受賞された大村智北里大学特別栄誉教授に続き、ノーベル物理学賞でも日本人の受賞が発表されましたね。
受賞されたのは梶田隆章 東京大学宇宙線研究所教授。アーサー・マクドナルド クイーンズ大学(カナダ)名誉教授との同時受賞となりました。大村教授に続く快挙達成となり、こちらもニュースで大きく取り上げられています。
ノーベル物理学賞に梶田隆章氏 スーパーカミオカンデのニュートリノ研究に – ITmedia ニュース
受賞理由は「ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」
ニュートリノが質量を持つことが証明されたことによって、どのようなことが解明されていくのでしょうか。
質量を持つことが証明されたニュートリノとは
ニュートリノは、小柴昌俊さんがその観測に史上初めて成功し、2002年に梶田教授と同じ物理学賞を受賞されたことで知られるようになりましたね。
ニュートリノは物質を構成する素粒子の一つで、電子と同じレプトン(軽粒子)に属しています。
ニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)でニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動を確認され、梶田教授が1998年に発表、それにより今回受賞されることになりました。
1950年代にニュートリノの存在が実験によって明らかになって以降、実際にニュートリノを捕らえて謎を解明するため、先進国は競って巨大な観測施設を建設してきました。先進国がしのぎを削る中で、日本の観測施設を舞台にニュートリノ解明が他の先進国より進んだのは本当に素晴らしいです。
ニュートリノの解明によってわかることとは
ニュートリノの性質が明らかになったことは、いったい何を意味するのか。またそれにより何がわかるようになるのでしょうか。私たちがとても気になるところですよね。
そのことについては以下のように書かれていました。
ニュートリノに質量があることは、何を意味するのか。期待されるのが、宇宙の成り立ちの解明だ。
スーパーカミオカンデなどでの観測の結果、ニュートリノの質量は電子の100万分の1より軽く、質量がある物の中で最も軽いことが分かってきた。ただし、質量が極めて小さい素粒子には、極めて質量が大きい「相棒のような素粒子」(梶田氏)があるとされる。こうした素粒子は現在ではほとんど存在できないが、極めて巨大なエネルギーの中では存在したと考えられている。つまり、ニュートリノの質量の由来を知ることは、ビッグバン直後の宇宙の姿を知ることにつながる。
ニュートリノの性質が明らかになることによって宇宙の成り立ち、ビックバン直後の宇宙のことがいずれわかるようになる。とても夢のあることで、これからの探求をますます楽しみにされている方も多いでしょう。
宇宙の成り立ちが解明されても依然としてわからないこと
ニュートリノが質量を持つことが証明されたことで宇宙の成り立ちの解明へ大きく近づくことになりました。しかし、たとえその宇宙の成り立ちが解明されようとも、依然としてわからない大事なことがあるのです。
それは、
その宇宙はそもそもなぜ存在しているのか
その広大な宇宙に自分はなぜ存在しているのか
という存在理由です。
哲学者であり文筆家であった池田晶子さんは著書『14歳からの哲学』で以下のように書かれています。
宇宙は、なぜ存在すると君は思うだろうか。
そして、この宇宙に、君の人生が存在するのはなぜだと思うだろうか。(中略)
科学はこの問いに答えることができない。宇宙へ乗り出し、生命すら作り出しかねない技術をもった全能のはずの科学も、このおそろしく素朴な問いに答えることだけは決してできないんだ。
なぜなら、科学は、この宇宙が「どのように」存在しているかを説明するだけであって、「なぜ」そのように存在しているかと問うことは、最初からしないからだ。
池田晶子(2003). 「26宗教」 『14歳からの哲学』pp.172-173 トランスビュー
科学の進歩によってどのように宇宙はできたのか、その存在過程を解明することはできたとしても、その存在理由を問うことはできないのですね。そして、その宇宙にいる私たち一人一人にはどんな存在理由があるのか、なぜこの地に生まれ、生きているのか。という問いにはもう答えることはできないのですね。
しかし、わからないからといって放っておける問題ではありません。私の存在理由がなければ、生きる意味がわからなければ、生きていくこと自体ができなくなります。
何もかもが順調で、生きることが楽しいと感じられるときは問題にならないかもしれないのですが、苦境がやってくれば「こんなに苦しいのに、どうして生きるのか」と生きる意味がわからない壁にぶつかるでしょう。
この当たり前だけどとても重要な問いに、答えを与えてくれるものはあるのでしょうか?
存在理由に答えを示すのが宗教
先述の池田晶子さんは『14歳からの哲学』でこのように書かれています。
人は、生きて死ぬ限り、必ずこの問い(人間の存在理由)を問う。
はるか大昔、人類がこの地上に誕生し、言葉を所有し、自分というものの存在を自覚して以来、人々は変わらずにこの問いを問うてきた。
人々の、このおそろしく素朴で、しかし決して避けられない問いに答えてきたのが、宗教だ。宗教の発生は科学のそれよりもずうっと古い。
池田晶子(2003). 「26宗教」 『14歳からの哲学』173pp. トランスビュー
人間の存在理由を答えを出すのが宗教の役割なのですね。
宗教と聞くと、いいイメージを思い浮かべる方は多くないと思います。検索バーに「宗教」という言葉を入れると複合キーワードとして「怖い」とか「勧誘 断り方」とか出てきます苦笑 非常にイメージが悪いです。宗教がニュースで取り上げられるときは大抵悪いニュースなので、そんなイメージを持たれる方が多いのも最もです。
もともとは、戦後のGHQの政策によって学校で宗教を学ぶ時間がなくなったことにも起因しますね。
もちろん、中には信者を集めて教祖がお金を貪る偽装宗教もあるのですが、宗教本来の目的は私たちにとって普遍的で最も大事な存在意義に答えてくれることなのです。
そして、科学とも矛盾しない答えを明らかにされているのが仏教であると言われます。それは、相対性理論を発見した現代物理学の父・アインシュタインが以下のように言っていることからわかります。
If there is any religion that could respond to the needs of modern scientific, it would be Buddhism.(現代科学のニーズに応えることができる任意の宗教がある場合、それは仏教であろう)
talkBuddhism and science – Wikipedia, the free encyclopedia
現代科学のニーズとはまさに「宇宙・人間の存在理由」なのであり、それに答えることができるのが仏教、と言われています。アインシュタインは仏教が果たす役割の大きさを示しているのですね。
ぜひ共に仏教を学ばれ、私たちにとって大事な存在意義を知っていただければと思います。