もちょです。
2020年10月3日! ついに『ダイの大冒険』がアニメ化しました!
OPには各メインキャラやドラクエシリーズのモンスターたち、EDには過去作のオマージュがぎっしり詰め込まれていて、コマ送りで見ても堪能しきれないくらいのボリューム!
しかも、かなり終盤のストーリーに関わってくる伏線が、これでもかというほど盛りに盛られていました。
放送日には、Twitterでもトレンド入りしたということで、往年のファンを中心に勢いづいていきそうです!
ここでカンタンにおさらいをしておくと、『ダイの大冒険』はドラクエシリーズの派生作品。
かつて週刊少年ジャンプにて連載されており、ドラクエの世界観を壊さぬストーリーと、他にはないオリジナリティにより、今でも根強い人気を誇っています。
その人気の高さゆえ、作中で初出の呪文や技がゲーム版のドラクエに逆輸入されるほど。
「魔物だけの平和な島で育てられた主人公ダイが、仲間たちと共に世界を救う」というわかりやすい物語でありながら、善悪や正義について考えさせられる人間活劇とも言えます。
この記事はこんな方におすすめ
- ドラクエ、ダイ大が好き
- 忘れちゃったからおさらいしときたい
- アニメから入るので少し先読みしたい
- 初心者だけど、オススメのキャラクターを知りたい
今回は激推しのラーハルトの魅力について迫ります。
ヒュンケルとラーハルトの紹介記事はこちら
ネタバレ【ダイの大冒険】ヒュンケルとラーハルトは友以上の関係?2人旅の理由とは
では冒険していきましょう! 今回はネタバレ有です!
ヒュンケルの強敵(とも)ラーハルト
わたしは、声を大にして叫びたい。
「ラーハルトの真の魅力に気がついていない人が多すぎる!」と。
よって今回は、ラーハルトを世界一推している筆者が、ラーハルトの魅力をいろいろな角度から語らせていただきます。
ラーハルトの声優は? 強さは? 特技は?
ラーハルト(つづりはLarhalt)
年齢は22歳。なんと声優は石田彰さん(どんな声になる!?)。
また、キービジュアルを見るに、肌はラベンダー色のようです。
(これまで単行本では薄紫色、文庫版では水色と定まっていませんでした)
魔族の父と、人間の母の元に生を受けた、魔族と人間のハーフ。
とある経緯により人間をとても憎んでいる。
超竜軍団長バランの配下・竜騎衆のひとり。
槍術の達人で、ヒュンケルが使用する魔剣と同等の強さの武器を保持していた。
必殺技は「ハーケンディストール」。
呪文は簡単なものなら使えるものの、得意ではないそう。
作中の主要キャラクターの中でも、年長の中に入るラーハルト。
仲間たちを引っ張っていくダイやポップとは異なり、ヒュンケルと共に長兄的な立場で見守ります。
物語の最後には、ヒュンケル、エイミと共に旅に出たという描写があります。
個人的には「魔族と人間のハーフ」「人間を憎んでいる」というのもポイントが高いです。
ただ取ってつけたような設定ではなく、彼がこれまで歩んできた道のりや、彼の持つ価値観が見えてきませんか?
こんなに屈強な戦士なのにどこか影があるような、どこかもろい部分があるような感じにまた惹かれてしまうのです。
仲間のピンチに推参! 復活を遂げたラーハルト
「…このラーハルトはあなた一人のために…!!! 竜の騎士の後継者であるあなた様に不滅の忠誠を誓うために…この場に馳せ参じたのです!!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、31巻 61ページ ラーハルト)」
ネタバレにはなりますが、ラーハルトは、はじめ敵として立ちはだかるも、最終決戦では仲間として再登場します。
バトル漫画ではかなりアツい展開です。
しかも、そのまま主要戦力として最終決戦に参加します。
心の底から人間を憎み目の敵にしていたラーハルトが、人間と手を取るようになったのは、やはり上官バランとヒュンケルの存在が大きいのではないかと思います。
バランに関しては、今回の記事の核心に迫ることになるので、後述しますが、ヒュンケルはラーハルトにどのような影響を及ぼしたのか。
一言でいうと、「人間も捨てたものじゃない」と思わせました。
ラーハルトはそれまで、自分たちと違う種族であるというだけで差別をする、色眼鏡でしか物事をはかれないような人間を心底嫌っていました。
しかし、刃を交えることで、ヒュンケルのように「相手の痛みがわかる人間もいるのだ」と考えを改めました。
ヒュンケルとしのぎを削ったことにより、人間に対する偏った感情が和らいだラーハルト。
この時彼は、初めて人間に心を開くことになります。
そんな彼の心の変化をよく表した名言がこちら。
「くれてやるぞ!!! 俺の生命(いのち)!!!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、35巻 65ページ ラーハルト)」
大魔王バーンとの圧倒的な力の差を見せつけられ、窮地に追い込まれた際、ラーハルトが叫んだセリフです。
対して、ヒュンケルと刃を交える前、様変わりする前のラーハルトのセリフはというと……
「”窮鼠 猫をかむ”…追いつめられたネズミは何をするかわからない…やつら人間のことわざでしたね
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、10巻 169-170ページ ラーハルト)」
人間を弱いネズミに見立て、揶揄する余裕すら見せています。
このセリフから感じ取れるのは、人間に対する「侮蔑」や「見下し」。
推測するに、「人間のような痴態はさらせない」「そこまで仲間や勝利に固執する理由がわからない」と愚弄していたことでしょう。
そんなラーハルトが、「もはや目が見えん……」と、一時的ながらも失明した状態で、敵陣へと切り込んでいった。
そこに小手先の戦術などはなく、「負けられない」という気迫のみ。
その姿は、まさに「猫をかむ窮鼠」。
あれほど蔑んでいた人間の生き様を、奇しくもなぞらえていたのです。
しかし、ラーハルトの表情に失意の色はなく、むしろ仲間への信頼と燃え盛る闘志に満ちていました。
魅力がたっぷり! ラーハルトの名言・名シーン
まるで戦闘機械! ラーハルトのチート級の強さ
「陸戦騎ラーハルト、推参!」
彼と言えば、この名乗りではないでしょうか?
堂々とした出で立ちに、クールな眼差し。
シビれます。
ラーハルトは、物語を通して登場するキャラクターの中でもトップクラスの実力者。
まず、作中最速と言っても過言ではない圧倒的なスピードが彼の武器です。
ヒュンケルと一戦交えた際には、最後のグランドクルス以外一太刀も入れさせませんでした。
30巻にて、ヒュンケルの窮地に駆けつけたラーハルトですが、その際にも相手を黙らせるほどのスピードを見せつけています。
その機動力に関しては、味方からも次のように評価されています。
「よく見ていろヒム。奴のケタ外れの動きを…!! おまえも相当速かったが………!上には上がいるのがわかる…!!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、30巻 113ページ ヒュンケル)」
「貫かれたかに見えたのはラーハルトが高速で動いた後に残った影…つまり残像だったんだわ…それでもまだ彼は全然本気を出していないっ……!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、31巻 71ページ マァム)」
そんな人間離れした超スピードから繰り出されるのが、秘技「ハーケンディストール」。
高速で弧を描いた槍から衝撃波を放つ技で、彼の代名詞とも言える奥義でしょう。
どれだけ速さに自信を持つ者であろうと、ラーハルトの一撃から逃れることはほぼ不可能。
そして、目的達成を優先させることで相手に対する情を遮断し、機械のように敵を葬り去る冷徹さを持っています。
この点については自覚しているようで、自身を「戦闘マシン」と揶揄するほど。
やさしさゆえ、敵だとしても情を投げかけてしまうヒュンケルに対し、ラーハルトは確実に獲物を仕留める戦闘のプロフェッショナルと言えるでしょう。
ちなみに、連載当時は魔界突入編が続きのストーリーとして想定されており、ラーハルトが主要メンバーとして選ばれていたとかいないとか。
考えてみれば、ラーハルトは槍を扱い、スピードで翻弄し、かつ呪文も使いこなせるタイプの戦士です。
闘気を拳や武器に宿して戦うキャラクターが多い中、レアな能力の持ち主なのかもしれません。
宿敵に投げかけた、ラーハルトの不器用な優しさ
「……おまえは… 戦い続けるには心が優しすぎた…………!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、30巻 135ページ ラーハルト)」
最終決戦を目の前にして、再起不能になったヒュンケルにラーハルトが投げかけた言葉です。
過酷な戦い続きで、いくら不死身と評されるヒュンケルといえども、身体はボロボロ。
加えて、新たな敵襲。
情が移ってしまった敵であるはずのヒムを庇い、絶体絶命のピンチ。
そこに駆けつけたのが、かつての宿敵ラーハルトでした。
圧倒的な力で鮮やかに敵陣をなぎ払ったラーハルトに、ヒュンケルが感謝を述べます。
ところが、対するラーハルトの返答は「負け犬を助ける趣味はない。お前は甘い、敗れて当然だ」とピシャリ。
続けて、「今のお前ではお荷物だ」と告げ、槍を構えます。
槍の切っ先は、ヒュンケルだけを見つめたまま。
振りかざされる刃。
息を呑むヒュンケル。
何かが砕ける鈍い音。
……砕けたのは、数センチ横の壁でした。
続けて「…戦士ヒュンケルは死んだ」と呟きます。
ラーハルトは、あえて戦士としてのヒュンケルを殺すことによって、その使命と意志を引き継ぎました。
無情な言葉でヒュンケルを蔑んだかのように見えますが、その真意は「友への感謝とやさしさ」だったということがよく分かります。
この不器用な配慮に関してはヒュンケルにも伝わっているようで、「そういうな…あれも奴なりの思いやりなんだ…」と述べています。
またラーハルト自身、言葉には出していませんが、次のように心情を語る場面も。
「後は安心してまかせるがいい……!! このオレこそまさにおまえの言う戦闘マシンそのものなのだから!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、30巻 138ページ ラーハルト)」
決して魔王軍には従わない! ラーハルトの気高さと芯の強さ
「魔王軍のために戦った事など一度もない! バラン様のためのみに我らは戦ってきた…!! “裏切る”などという言い回しこそ笑止よ…!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、31巻 66ページ ラーハルト)」
彼の気高さは、このセリフに収まっていると言ってもいいでしょう。
もともとラーハルトが所属していたのは魔王軍の中の超竜軍団という組織。
その長だったのが後述のバランなのですが、わずか4名という少数精鋭の集まりでした。
要するにラーハルトは、「上官であるバランに対して忠誠を誓い従っていたのであり、魔王軍に従った覚えはない」と言い切ったということです。
魔王に対してここまで断言できる度胸もすごいですが、何より誇り高い。
「決して自分たちは魔王の犬ではない、そんなもののために魂を売るなど聞いて呆れる」という信念がビシビシと伝わってきます。
普段冷静で感情を見せないラーハルトが、言い返さずにはいられなかった。
気高い戦士としての彼の一面が垣間見えます。
また実は、ラーハルトは正義感も強く、それを随所で確認することができます。
彼の正義感は「悪を見逃せない!」というような正義のヒーローが謳うものとは少々異なります。
「たとえ味方であろうと、道理に反した者は容赦なく鉄槌を下す」という正義感です。
初登場時、ラーハルトとヒュンケルは対峙し、死闘を繰り広げることになります。
結果としては、機転を利かせたヒュンケルに軍配が上がりました。
ところが、決着がついたと思ったその時、その場にいた瀕死のポップを、ラーハルトの仲間であるボラホーンが人質に取ってしまいます。
ポップもヒュンケルも満身創痍。
どうしても仲間を見捨てて戦うことのできないヒュンケルは、覚悟を決めて剣を地面に投げ捨てます。
迫る豪腕、やめろと泣き叫ぶポップ。
万事休すかと思ったその瞬間、鋭い一突きが。
ヒュンケルが顔を上げると、そこには先ほど剣を交えた戦友の槍がありました。
槍で貫かれた相手は言葉を発することなくその場にドサリと倒れ込み、思わずヒュンケルとポップはラーハルトの元へと駆け寄ります。
「なぜオレを助けた?」というヒュンケルの問いに、ラーハルトは次のように語ります。
「人質をとるなど誇り高き竜騎衆の名を汚す愚行…許しがたいことだ…ましてや人間相手にな…!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、11巻 132ページ ラーハルト)」
彼は、竜騎衆という地位にしがみついて同胞の行動を恥じたわけではありません。
竜騎衆という立場にありながら、卑劣な言動をすれば「バランの顔に泥を塗ることになる」と恥じたのです。
当時敵サイドであったラーハルトの芯の強さに、思いがけず胸を打たれた瞬間でした。
ラーハルトだけが持つ「忠誠心と恩義に応える心」
誰にも壊せない 上官バランに対するラーハルトの忠誠
他の竜騎衆メンバーとは比較にならないくらいにラーハルトは忠誠心が強く、あらゆる場面に描かれています。
先ほどの「魔王には従わない、バランにのみ従う」というセリフにも表れているように、彼は物語を通して、バランに金剛の如き堅い忠誠を誓っています。
仲間であるガルダンディーが肩慣らしで国を焼き払っている間、ラーハルトはバランの移動手段となる上質なドラゴンを準備。
バランから「ダイの奪還をせよ。そのためにはダイの仲間たちをどのように扱っても構わない」という命令を、同胞が「ダイの仲間たちを殺して食い止めろ」と受け取る中、ラーハルトはバランの本心を汲み取り、とにかくバランをダイの元へ辿りつかせようと奮闘。
常にバランの意思に沿うよう、一手二手先を読んで行動します。
ひと暴れしてやりたい、強さを誇示したいといった自分の欲求ではなく、あくまでも上官であるバランのために動くのです。
喜んで命を捨てる覚悟 主人公ダイに対するラーハルトの忠誠
「あなた様に死ねと言われれば笑って死に、闘えと言われればたとえ神々にでも立ち向かう…! ディーノ(ダイ)様の理想実現のための手駒と思ってくだされば結構!!
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、31巻 63ページ ラーハルト)」
筆者は当時、このラーハルトのセリフを見た時、雷に打たれたかのような衝撃を受けました。
きっと、アニメでも衝撃を受けるはず。
ダイのためならば、喜んで命を捨てる覚悟がある。
不可能な戦いに挑むことさえ厭わない。
まるで現実味のないセリフだと感じるかもしれません。
ですが、一切のためらいなく忠誠を誓ったこの言葉からは、頑としてブレない彼の中の芯がハッキリ伝わってくるのです。
躊躇や迷いの類はひとかけらもない。
ではなぜ、ひと回りほども年齢の違う少年に、ここまでの忠義を示すことができるのか。
それは、主人公のダイが、上官バランの息子であることに深く関係しています。
こう聞くと「なるほど慕っている人物の子どもだからか」と、思いがちですが、果たしてそれだけで上記のような忠誠の言葉を吐けるでしょうか。
報恩と謝徳の理由
死別、迫害……失望のふちに立たされていたラーハルトを救った存在
どうしてラーハルトは、これほどまでにバランに忠実で、恩に報おうとするのか。
読者の我々から見ても、あるいは作中の仲間たちから見ても、なかなか理解できないというのが正直な感想ではないでしょうか。
ある種の陶酔だと言われても無理はありません。
ですが、彼の真意を知るためには、ラーハルトの出生と育ちに目を向ける必要があります。
冒頭でもご紹介したように、ラーハルトは魔族と人間の混血です。(混血という点が、主人公であるダイと同じ。)
彼は、魔族の父親と人間の母親の元に生まれますが、幼い頃に父親は死んでしまい、女手一つで育てられました。
しかしラーハルトが7歳の時、魔物と人間との戦乱の時代に突入してしまいます。
すると人間たちは、魔族の血を引いているという理由だけで、ラーハルトだけでなく彼の母親までも迫害しはじめ、やがて守ってくれていた母親も病気で亡くなってしまいます。
そんな失意の中、唯一ラーハルトの悲しみをわかってくれたのがバランでした。
バランもまた、最愛の妻を人間の迫害により亡くしていたからです。
バランはラーハルトを自分の息子のように可愛がり、育てました。
自身の過去に重ね合わせ寄り添ってくれたバランに、ラーハルトは感謝の念を抱かずにはいられませんでした。
絶望の底に叩き落された自分を救ってくれた相手に、恩義を感じるなというほうが無理な話です。
とはいえ、ラーハルトほど恩に報おうとする気持ちの強い人物はいません。
恩に報おうとする心は、恩を知り、恩を感じる心から生じます。
それだけラーハルトは、「誰に支えられ」「誰のおかげで今の自分はあるのか」を身に沁みて感じていたのだと思います。
先述した、ラーハルトの不器用な優しさや正義感というのも、バランに育てられて芽生えたものなのかもしれませんね。
余談ですが、ラーハルトの口から上記の話を聞いたヒュンケルとポップは双眸に涙を浮かべ、体を震わせます。
ポップはもともと人の痛みや弱さによく気づくので、同情と共感によって泣いてしまったのかもしれません。
対してヒュンケルは、お世辞にも他人の感情に敏感とは言えない青年です。
ところが、ヒュンケルも心優しい魔物に拾われ育てられたのち、戦場でその親代わりの魔物を亡くした過去を持っています。
バランと同じく自分自身の過去に重ね合わせたがゆえに、自然と頬を濡らしたのでしょう。
それを見て、ラーハルトは「甘いやつらだな、他人の悲しみを我が事のように…」と漏らします。
彼の視界は涙で揺らいでいました。
死後もなお、バランに救われたラーハルト
ヒュンケルとの死闘の末、最後までバランへの忠誠を崩さず、戦士としての誇りを守り抜き命を落としたラーハルト。
彼に再び生命の灯火をともしたのは、他でもないバランでした。
竜の騎士であるバランの身体には、竜の血が流れています。
実はこの血液には「命を落とした者を蘇らせる効果」が秘められており、かくいうポップも一度命を救われていました。
しかし、血を与えられた者全員が息を吹き返すことができるわけではありません。
条件は、強靭な精神力を持っていること。
そんな中、ラーハルトは幸いにも目を覚まします。
棺の中で目を覚ました彼の傍には、一つの置き手紙。
それは、亡きバランからの手紙でした。
「もしおまえに生命が戻ったならばディーノ(ダイ)を私だと思って助けてやってはくれまいか(中略)…ラーハルトよ。私が幼少の頃より育ててきたおまえが人間を強く憎んでいる事は無論知っている。だがそれを承知であえて願う。(中略)私の最後の願いだが……決断はおまえ自身にまかせる
(三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社、31巻 72-73ページ バラン)」
そして、手紙はこう締めくくられていました。
「私のもう一人の息子 ラーハルトへ…」
この時ラーハルトは、どのような気持ちだったのだろう。
死の淵から蘇ることができたことを喜んだのでしょうか。
それとも、また救っていただいたと感謝したのでしょうか。
私は、自分自身への情けなさと悔しさだと思っています。(もちろん、感謝の心はあったでしょう。)
ですが、実の親のように慕い、尊敬していた人が知らぬ間に死んでしまっていたのです。
十分に恩返しできないまま先立たれてしまった。
バランに対して忠誠を誓い、一生かけてでも、与えてもらったものを自分なりの形で返そうとしていた。
なのに、死んでしまった。
バランを裏切ってしまったような気持ち、誓いを守れなかった自分への不甲斐なさ。
それらがラーハルトの心に渦巻いたのではないか、と感じざるを得ません。
ラーハルトの生来の生真面目な性格もありますが、人一倍恩を感じていた彼だからこそ、その恩に報いきれなかった自分を責め立てる気持ちがあったように思います。
返しきれぬ恩義、いかに報いるべきか……ラーハルトの出した答え
恩を返すと誓っていたバランは既にいない。
しかし、二度も救われた命、報恩に使わず何に使おうか。
ラーハルトは、バランの息子であるダイに仕えることを選びます。
それが、手紙に書き残されていたバランの願いでした。
バランの望みに沿うことこそ、他のものには変えられぬ最高の報恩だと確信したのです。
ラーハルトのあらゆるセリフの先には、バランがいます。
バランは、ラーハルトにとって忠誠を誓う主人であると同時に、敬愛する師であり、思慕する父親でした。
仏教では、父母から受けている恩は、どんな山よりも高く、どんな海よりも深いと教えられています。
その恩が身に沁みて知らされている人ほど、少しでも恩返しをしたいと感じ、恩義に報いれば報いるほど、返しきれない恩を貰っていたのだと一層感謝する心がふつふつ沸き起こる。
そんな姿を、ラーハルトは我々に見せてくれています。
誰しもが簡単にできることではないからこそ、彼の魅力をぐんと際立たせているに違いありません。
ラーハルトの魅力はまだまだ語りきれていませんが、声優を含めアニメでの活躍を期待するばかりです。
それでは、最後は勝手にアニメ化したラーハルトで締めたいと思います。
【ドラゴンクエスト ダイの大冒険 新装彩録版 1 (愛蔵版コミックス)】
参考文献:三条陸/稲田浩司、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』集英社
イラスト:原作を参考に、記事の著者が描画しました。
ヒュンケルとラーハルトの考察記事はこちら!