今月はついに夏のコミケですね。
コミケ、正式名称「コミックマーケット」は年に二度のオタクの祭典。
今年は叶姉妹が『ファビュラス叶組』『プレシャスM組』というサークル名で初のサークル参加することも決まり、大きな注目を集めています。
そんなコミケ参加者・来訪者のうち多くを占めるのが、オタクの中でも「腐女子」といわれる層です。
腐女子(ふじょし)とは、やおいやボーイズラブ(BL)と呼ばれる男性同士の恋愛を扱った小説や漫画などを好む女性のことである。
アニメ化が決定した『ヲタクに恋は難しい』など近年メディアでも扱われることも増えてきています。
先ほどご紹介した叶姉妹の叶恭子さんも先日、テレビ番組で「ボーイズラブに夢中」だと取り上げられていました。
筆者は腐女子歴15年、10代半ばから人生はボーイズラブ一色。
そろそろ「腐『女子』」といえる年代でなくなってきた私にとって、近年、腐女子文化は全く違う時代に突入してきたように思います。
生活必需品だった「◯◯BLランキング」や「魔法のiらんど」、「手書きブログ」はあまり聞かれなくなり、時代は「Twitter」「pixiv」が台頭。
そんなSNS中心の腐女子・オタク文化の中で最近聞かれるようになったのが「アフター誘われない問題」。
「アフター誘われない問題」と、その裏に隠れる人間の心の問題を解説します。
「アフターに誘われないから同人イベント参加やめた」ここから始まった?アフター誘われない問題
約1年前、はてな匿名ブログにアップされたこんな日記が大きな反響を呼びました。
移動費数万払って遠征して、イベント終わったら大好きなキャラの名前すら一言も呼ぶことなく一人で東京を歩く。
重い荷物抱えてお土産買って、何もすることなくなって新幹線に乗ってツイッターを見る。
そうすると、アフター楽しい呟きが沢山流れてくる。
イベントでしゃべった人、感想くれた人、差し入れくれた人、取り置き頼まれた人。
みんなアフターで楽しそうだ。
惨めだと思った。
誰も声を掛けてくれない。
新幹線、暇だからついついツイッターを見てしまう。
どんどん惨めになる。
SNSが発達した今日、オタクや腐女子にとって、作家さん同士、スタッフさん同士、ファン同士の「アフター」はコミケに付随する大きなイベントの一つになっています。
私が腐女子になったばかりの頃は、ボーイズラブ誌や個人のサイトを探して情報を収集しましたが、最近はSNSで検索すれば自分と同じ趣味・趣向を持つ「同志」の腐女子や同人作家さんが描いた作品が山のように見られる時代になりました。
SNSを交流ツールとして、オフ会やSkypeによる交流もいとも簡単にできるようになっています。
そんな便利なSNS社会の反面、嫌でも目に入るようになってしまったのが「他の人はアフター誘われているのに、自分は誘われない」という、つらいつらい問題です。
「アフター誘われない」腐女子はたくさんいる現実
ご紹介した日記の方は腐女子かどうかは不明ですが
「イベントでしゃべった人、感想くれた人、差し入れくれた人、取り置き頼まれた人」
という記述から同人作家さんとしてサークル参加していた方と思われます。
ところが私のような、絵も小説も描けず(書けず)イベントに行っても一言「応援しています」と作家さんに伝えるくらいしか交流ができない…というような腐女子は作家さん以上にもっともっとたくさんいるでしょう。
コミケに参加されたことのある方なら分かると思いますが、コミケには50万を超える来場者が集います。
いくらファンだからといって個人的に交流がある訳でもないサークルの作家さんに、長時間話しかけるのはマナー違反。
大好きな作家さんの迷惑にならないためにも、新刊を購入したらサッと列を離れるのが無害なファンです…書いてて虚しくなってきましたよ(笑)
実はこれでも筆者は、よく友人に「交流にアグレッシブな腐女子」と言われる方です。
しかし積極的に交流の機会を求めている私でも、同じジャンルの同じカップリングが好きな「同志」の腐女子とオフ会をした経験は、今まで数えるほどしかありません。
元々リアルにつながりのあるお友達に、コミケの後ご飯に付き合って頂いたりしていますが、それは「お世話になっているリア友とのディナー」であり、厳密には「コミケのアフター」オフ会ではないのかも…
一人でイベントに参加し誰とも会話をせず、Twitter上につぶやきを投稿するのみで終わることも普通にあります。
(そんな私にとって、私が東京に行くとき、できるだけ時間を 割いて会ってくださる東京の友達にはいくら感謝してもしきれないです)
コミケを代表とする同人誌即売会にはそんな「ぼっちコミケ」腐女子がたくさんいます。
それでも好きな作家さんから直接新刊を求められる幸せは、その寂しさを忘れるほど最高の喜び。
ただ、ふと帰り道、Twitterなどを開くと同志がアフターで盛り上がる様子が目に入り、どうしても寂しさを感じるものです。
「絵が描けない」腐女子は交流が広がりにくい?「描けない」腐女子が感じる実態
筆者は15年以上腐女子をやっていますが、一言でいうと「絵が描けない」腐女子です。
専ら他の腐女子の方が描いた作品を「読む専門」という訳です。
一方友人にとても絵が上手く、イラストや漫画の投稿もしている腐女子がいます。
友人と自分を比較してみて、「絵が描けない」腐女子と「絵が描ける」腐女子の交友関係の広がりは全く違うことに気づきました。
私は7年前からTwitterを使っており、ツイート数は2万近い「Twitter廃人」ですが、フォロワーさんは170人くらいです。
一方絵が上手い友人に「Twitterで絵を投稿するとファンの方と繋がれるよ」とオススメしたところ、Twitterを始めて10ヶ月でなんとフォロワーさんの数は私とほぼ同じになっています。
私が長い間「片思い」状態(こちらがフォローしても相手さんからはフォローされない状態)の同人作家さんとも友達はすぐ相互フォローになれました。
Twitterのフォロワー数が人間関係の全てではありません。
しかし「絵を描いてPixivにアップする」「小説を書いてコミケで頒布する」といったことが難しい私のような腐女子は交流がなかなか広がらず、「アフター誘われない」状態になる傾向があるのではないでしょうか。
また私は去年から『刀剣乱舞』という女性向けゲームにハマっているのですが、同じくらいやりこんでいる友人は周囲に一人もいません。
刀剣乱舞はプレー人口が少ない…ということではなく、私の交流関係の範囲が狭いだけのようで(笑)ネット上では私のように「『刀剣乱舞』の廃人級プレイヤーだけど、語る相手が誰もいない」という寂しさを吐露している方がたくさんいます。
※審神者・ゴリラ…『刀剣乱舞』のプレイヤーを表現するファン内の共通用語
73: 審神者
男性審神者って周りにとうらぶ語れる知り合いっている?
なんか語る仲間がいないとさみしいよね
174: 審神者
>>173
メスゴリラでも語る相手いないワイみたいなのもおるんやで…
176: 審神者
>>173
女性だけど、とうらぶ語れる人間一人もいないな
たまに寂しい
184: 審神者
うちも女だけど喋れる人はいない。
知り合いでやってる人もいるけど、みんなライトユーザーすぎて・・・
ご紹介したのは「女性向けゲームの『刀剣乱舞』にハマっている男の自分が交流の場であるイベントに行ってもいいのでしょうか?」という相談に対し、女性たちが匿名で書き込みをしている様子をまとめたものです。
一連の書き込みはおそらく腐女子によるものではないですが、私と同じような「ぼっちオタク」が世間にはこんなにいるのか…と筆者はとても感動しました。
一方先ほど紹介した絵の上手い友人はTwitter上でどんどん同志とつながり、好きなキャラクターやカップリングが同じ腐女子とSkypeチャットをしたり、オフ会をしたり…といった私からすると羨まし過ぎる交流の場が次々と実現しているそうです。
「自分ももし絵が描けたらこんな寂しい思いをしなくて済むのに…」と思う、絵が描けない腐女子は世界にたくさんいるのではないでしょうか。
実は「アフター誘われない」腐女子も「アフター誘われる」腐女子も同じく苦しんでいる
悲しいことに「もし絵が描けたら…」という願望が暴走するあまり、絵の上手い方の絵を無断転載し「これは私が描きました」と偽ってSNSなどで友人を増やそうとする人もあります。
「小説が書ける」腐女子の方もファンがたくさんできますので、近年は他人の書いたボーイズラブ小説を盗作する人もいるそうです。
後で絶対にバレて社会的制裁が下るのは分かっているのに、やってしまう人が消えない現実。
それだけ「絵が描けない」「アフター誘われない」「小説が書けない」「同志の友達がいない」「コスプレの才能がない」といった「◯◯がない」苦しみや寂しさはつらすぎるのでしょう。
「絵が描ける」「アフターに誘われる」「小説が書ける」「同志の友達がいる」「コスプレげできる」…といった「◯◯がある」腐女子は、好きな萌え趣向でいろんな方と交流ができて、毎日が幸せで充実しているように見えます。
しかし絵が上手い友人によると決してそんなことはないそうです。
友達とお互いの「つらい」ところを話し合っていて、こんな言葉を思い出しました。
有田憂田 有宅憂宅 (大無量寿経)
「大無量寿経」というお経にお釈迦様が説かれている言葉で、現代風に言うと「土地(田んぼ)を持っている人は土地のことで苦しみ、マイホーム(宅)を持っている人はそのマイホームのことで苦しむ」という意味です。
自分の土地やマイホームと聞くと、財産に恵まれた幸せそうな人に見えますが、本人は固定資産税や家のローン、相続などの財産が「ある」故の苦しみに見舞われているもの。
腐女子も同じ。
絵が描けて、ファンや友達がたくさんできている人は、恵まれているからこその苦しみがあります。
次回はそんな「ある」友人たちから聞いた体験を紹介しながら「アフター誘われない」腐女子と「アフター誘われる」腐女子の実態と心の本質をより深く考察していきます。