「オデッセイ」主人公は“忍辱”で火星を生き延びた?孤独を生き抜く仏教の六波羅蜜とは

こんにちは、YURAです。

先日久々に韓国に行き、機内で最新映画を見ました。今回見た映画は数々の賞を受賞した話題作、マッド・デイモン主演の映画『オデッセイ』です。

まだ見ていない方もいらっしゃると思いますので、内容はあらすじまでにしておいて、今回は、主人公のキャラクターを仏教目線で見るとどうなるかについて触れたいと思います。もう見終わった方も、これを読んでからもう一度見ると、また違った見方ができるかもしれません。

以下、解説を紹介します。

火星にひとり取り残された宇宙飛行士のサバイバルを緻密な科学描写とともに描いた、アンディ・ウィアーのベストセラー小説「火星の人」を映画化。

火星での有人探査の最中、嵐に巻き込まれてしまった主人公ワトニー。仲間たちは緊急事態を脱するため、死亡したと推測されるワトニーを置いて探査船を発進させ、火星を去ってしまう。

しかし、奇跡的に死を免れていたワトニーは、酸素は少なく、水も通信手段もなく、食料は31日分という絶望的環境で、4年後に次の探査船が火星にやってくるまで生き延びようと、あらゆる手段を尽くしていく。

オデッセイ : 作品情報 – 映画.com

オデッセイのキャッチコピーは「火星ひとりぼっち」。極限環境でのサバイバルが描かれています。

主人公ワトニーの魅力 「あきらめない」強さ

私は普段あまり洋画を見る機会がないのですが、この映画はとても面白く感じました。特に興味を持ったのは、主人公のキャラクターです。

主人公のワトニーは、一人火星に取り残された不安と、いつ死ぬかわからないという恐怖を心の奥底に抱えながら、絶望的な局面に対してもポジティブな思考を失わず、明るくユーモアに溢れ、ここぞというときに勇敢に立ち向かうキャラクターです。

実に人間味あふれ、観客に親近感と憧れを抱かせます。そして特に私は、彼のキャラクターの、どんな状況でも「あきらめない」強さに惹かれました。

「あきらめない」ことは、私たちにとって簡単なことではありません。面倒だなと思ったり、他に楽しいことがあるとそちらに流れてしまいます。しかし私たちは、これ一つという目標があれば、耐え抜く力が湧いてきます。その目標が大切であればあるほどそうです。ましてやワトニーは、一瞬一瞬が生きるか死ぬかの戦いです。生きたいという目標が彼を強くさせます。

では彼の「あきらめない」を支えたのは一体何だったのでしょうか。

目標達成に必要なもの 六波羅蜜とは

まず彼には、生きて地球に帰りたいという目標がありました。生きて帰るには、今の状況に耐えることから始めなければなりません。これを仏教では「忍辱(にんにく)」といいます。 辛いことでも笑って耐え忍ぶという善の一つです。

仏教では善を大きく6つに分け、六波羅蜜(ろっぱらみつ)を説かれています(波羅蜜 – Wikipedia)。

六波羅蜜には

  1. 布施(ふせ)
  2. 持戒(じかい)
  3. 忍辱(にんにく)
  4. 精進(しょうじん)
  5. 禅定(ぜんじょう)
  6. 智慧(ちえ)

があると教えられます。そして、この中の1つでいいから、自分に実行できると思えるものをやりなさいと勧められています。1つさえ実行すれば、他の5つもやったに等しいと説かれているのです。1つやれば6つやったのと同じだなんて、ちょっと不思議に思いませんか。 でも実際にやってみると、そうなるのです。

地球に生きて帰るために

ワトニーを例に説明していきましょう。ワトニーは常に「忍辱」を心がけました。火星に取り残された彼に降りかかる困難は想像を絶します。今まで築き上げてきたものが一瞬にして崩れ去る、見えてきた希望の光が途絶えるほどたくさんの問題があるのです。

生きて地球に帰るために「忍辱」を実行しようとすると、火星にいるワトニーは、人一倍、生きる努力をしなければなりません。この、努力することを「精進」といわれます。

しかし努力をしても、すぐにいい結果が表れるとは限りません。たとえ天下の宇宙飛行士であっても、時には失敗し、何が間違っていたのかを反省しなければなりません。自分の行いを振り返ることが「禅定」です。

また、劇中、地球との交信が可能になり、彼の生存を知って多くの人が喜び、何とか助けようとします。そんな地球の仲間に温かい言葉を送りました。このように相手が喜ぶように笑顔で接したり、優しい言葉をかけることが「布施」です。

そして、必ず生きて帰る約束を守ろうと「持戒」に努めます。持戒とは言行一致といわれ、約束を守ることです。約束を果たすために、「智慧」に磨きをかけ、どうすれば地球に帰れるかを考え抜き、実行に移しました。このように1つの善を実行しようとすれば、他の5つの善の実行にも自ずとつながっていくのですね。

劇中では、主人公をヒーローとして取り上げられています。そういえば、昔憧れたヒーローやヒロインも、六波羅蜜の要素を持ち合わせていなかったでしょうか。私はワトニーの姿が、昔夢見ていた大人像と重なり、その勇敢な姿に魅力を感じたのでしょう。

六波羅蜜の実践で、あなたもヒーロー

ワトニーのキャラクターを通してわかることは、私たちが「これは成し遂げたい」と思う目標を達成するためには、この6つの善、六波羅蜜の実践が必要だということです。

仏教では善因善果悪因悪果と説かれています(因果 – Wikipedia)。善い行いに努めなければ、目標達成という善い結果を得られませんから、当然のことです。ヒーローやヒロインが「いい者」とされ、子供たちに人気があるのも、善の実践を徹底しているからでしょう。もしかしたら、この六波羅蜜の実践は、ヒーローになる近道かもしれませんね。