7月1日から『活撃 刀剣乱舞』がスタート。
ヒット作品を数多く生み出しているufotableさんが製作することや、刀剣男士ごとに違うスタッフがキャラクターデザインを担当することなど、放送前から話題を集め、高い注目度の中での放送開始となりました。
実際オンエアされると、期待を裏切らないどころか、想像を絶する映像技術や音響、初見の方にも分かりやすいストーリー展開が高い評価を得ています。
女性向けゲーム原作の作品でありながら、幅広い層の視聴者獲得も見込まれそうですね。
『Fate/zero』のアニメを観てFate沼に落ち、その後刀剣沼にもハマった筆者も『Fate/zero』を手掛けたスタッフさんによる『活撃 刀剣乱舞』には並々ならぬ期待を抱いていました。
第1話「出陣」は既に約50回以上観てしまいましたが、やはりこのクオリティと展開は何回観ても飽きることがなさそうです。
※ここから第1話「出陣」の内容があります。未視聴の方はネタバレご注意ください。
ファンにとっては何か引っかかる描写や、伏線と思われる所も多い『活撃 刀剣乱舞』。
第1話が放送されたばかりですが、堀川国広に兼さんがピアスを渡す場面では「国広は既に一度折れて(死んで)いて、二振目の国広が今回登場しているのではないか」という考察があちこちで飛び交いました。
本編だけでなくオープニング映像にも意味深なシーンが。
登場するであろうキャラクターの人数分咲いている彼岸花、焼け落ちる桜など、死や滅びを予感させる描写が多く、世界観や今後の展開について多くの考察がTwitter等で繰り広げられています。
そうそうたるufotableのスタッフ陣による作品ですので、ファンの予想とは全く違う結末になる可能性も大いにありますが、はっきり描かれない世界観のスキマを想像できるのも『刀剣乱舞』の魅力の一つ。
期待の新作『活撃 刀剣乱舞』。
筆者もファンの一人として、長年学んでいる東洋哲学から真面目に考察してみたいと思います。
前から気になって仕方がない!「歴史修正主義者」「時間遡行軍」とは何者か
原作ゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』を始めたときから筆者が気になって仕方がないのが「歴史修正主義者」が各時代に送り込んでいる敵「時間遡行軍」。
この時間遡行軍が「刀剣男士」が倒すべき敵です。
刀剣乱舞公式設定画集『刀剣乱舞絢爛図録』には刀剣乱舞の世界観がこのように書かれています。
西暦2205年。
「歴史修正主義者」を名乗る時間犯罪者達は正しい歴史への修正を標榜し、
時間遡行軍を編成、文字通り時間遡行を繰り返しながら我が国の歴史への攻撃を開始した。
過去にタイムスリップし、過去を変えようとしている勢力が「歴史修正主義者」。
時間遡行軍は歴史修正主義者からの命を受け、原作では大阪冬の陣、元弘の乱など様々な時代で歴史を変えようとしていますが、その目的は謎です。
原作では何度倒しても同じ場所に同じような姿の時間遡行軍が現れ、種類も「大太刀」「打刀」など、刀剣男士たちと共通する部分のある姿をしています。
今回『活撃 刀剣乱舞』第1話では冒頭で和泉守兼定に討ち取られた時間遡行軍の一部隊が、徳川家茂の名前が入った木箱を運んでいますが、ラストにどうやら地方の城を狙っているらしいことが明らかになりました。
これまで原作ゲームでは具体的に時間遡行軍がどのようにして歴史を変えているのかは詳細に描かれませんでしたが、『活撃 刀剣乱舞』では詳細に描かれる可能性もあり、「時間遡行軍の正体知り隊」な筆者としては気になって仕方ないです。
第2話での展開次第で全く違う正体が明らかになるかもしれませんが、この記事では「時間遡行軍」の正体について哲学的に考察してみたいと思います。
何故「時間遡行軍」は倒すべき敵なのか?哲学的視点から考える
原作ゲームをプレーしていると
「織豊改変関ヶ原方向家康暗殺部隊」
「鎌倉改変鎌倉方面尊氏暗殺部隊」
「合同左派打撃部隊」
「ゾーリンゲンサーバー部隊」
という様々な部隊が現れますが、何か特定の人物を殺すことで歴史を変えようとしているように思える名前もあれば、日本以外の国に関係がありそうな部隊もあり、部隊名だけでは一概に判断できなさそうです。
「太平洋戦争阻止布石部隊」という名前を見ると、戦争を阻止し、平和を実現しようとしている集団なのかも?と名前だけ見ると思ってしまいそうな名前もあります。
しかしどんな理由であれ、過去にあった出来事を改変するのは「時間犯罪者」であり、倒すべき敵である。
刀剣男士たちの主でありプレイヤーの私たち「審神者」はそういう立場にあります。
なぜ過去を変えたいという思いは「罪」になのでしょうか。
過去を変えれば、現在が変わるから。
何か過去の出来事を操作すれば、場合によってはいま生きている人が一瞬にして消え去ることだってあります。
これが一番分かりやすい答えになりますが、実はこのことは仏教哲学的な思想とも関係があります。
仏教の言葉に「因果律」という言葉があります。
「因」とは原因。「果」は結果、そして「律」とは法則という意味で、私たちに引き起こる全てのこと(結果)は原因があって初めて起こるという考え方が仏教の基本法則になっています。
ここで『刀剣乱舞』で展開されている戦いの様子を見ていくと、時間遡行軍は過去を改変することで、現在に意図する変化をもたらそうとしていることが分かります。
そして刀剣男士たちは時間遡行軍が恣意的に過去を変えることで、今現在の状態が変わってしまうことがないよう自分たちも過去に行って時間遡行軍を止めようとしている訳です。
過去の自分の行いが今の自分を生み出しているという意味の「因果応報」という言葉は日本に広く根付いています。
『刀剣乱舞』は日本のゲーム会社が製作したコンテンツです。
やはり深層心理に仏教思想が根付いている日本人が生み出すゲームやアニメ作品には、仏教の因果律に基づいた世界観やストーリーが多いのかもしれません。
刀剣たちは時間遡行軍にも刀剣男士にもなる?「時間遡行軍」が象徴しているものとは
現在の私たち人間は、時間遡行をすることはまだできません。
しかし「刀剣男士」と「時間遡行軍」が意味するものは現実世界においても存在します。
それは「反省」と「後悔」です。
「後悔先に立たず」は小学生でも知っていることわざでしょう。
しかし実際には大人になっても「後悔先に立たず」をよく経験する人は多いのではないでしょうか。
誰しも人生に失敗はつきものですが、「反省」と「後悔」とは実は全く違います。
反省とは、失敗であれ成功であれ、過去の出来事を捻じ曲げず正しく見て、これからの自分の行いを変えていこうとすること。
つまり先に紹介した因果律を実践する考え方です。
後悔は、過去の自分の行いをただただ悔いり、なかったことにしたいと思うことをいいます。
時間遡行軍を動かす歴史修正主義者は、家康を暗殺したり歴史上の大事件を無かったことにしたりして現在を変えようとしています。
誰かを殺したり、歴史上の事件をなかったことにすることによって自分たちの今の状態を変えてもらおうという考え方に、自分の過去を反省する要素はありません。
時間遡行軍は「後悔」する生き方の象徴ともいえるのです。
『活撃 刀剣乱舞』のオープニングの最後には、美しい刀が禍々しい黒い障気に染まっていく描写があり、「今後刀剣男士が時間遡行軍に堕ちてしまう展開があるのではないか」と予想されています。
またエンディングのスタッフロールをよくよく見てみると、時間遡行軍にも声優さんが声を当てており、仲間同士では会話ができる可能性もありそうで、刀剣男士と極めて近い生態をしていることも考えられそうです。
あくまで仮説ですが、心の向きによって刀剣たちは禍々しい時間遡行軍にもなり、戦場を美しく駆ける刀剣男士にもなるのではないのでしょうか。
私たちも同じ。
食べたり話したり歩いたりといった目に見える行動はもちろん、日々何を考え、どういう信念の元に生きているかというような思考回路も未来の自分を変えていきます。
後悔したくない人生を送るためには「反省」の考え方が大切。
「後悔」の象徴・時間遡行軍を倒す刀剣男士のように、私も我が身の行いを振り返り、向上できるようになりたいものです。