年が明けましたね。
今年もマイペースに投稿していこうと思いますので、カピ子をよろしくお願いします。
年末に初の歌舞伎を体験してきました。
渋いイメージで、年配の方が多いと思っていたのですが、小学生くらいの子供もいて、幅広い年代に親しまれていました。
演題は「あらしのよるに」。
聞いたことがあるかもしれませんが、もとは絵本なんです。
「あらしのよるに」は1994年に出版された絵本で、第7巻の完結編まで続き、累計発行部数は300万部を超えるベストセラー作品です。
2015年9月に京都南座で新作歌舞伎として上演され、注目を集めていました。再演を求める声も多かったことから、昨年12月に東京の歌舞伎座で再び演じられることになったそうです。
私も何となく聞いたことがあるような…という感じでしたが、ストーリーは知りませんでした。
今回は「あらしのよるに」のエピソードと、そこからわかる人間の心の実態について書いていきます。
絵本「あらしのよるに」あらすじ紹介-カブとメイの禁断の友情-
「あらしのよる」は、オオカミのガブとヤギのメイの友情ストーリーです。あらすじを簡単に紹介します。
ある嵐の夜、メイが山小屋に避難した。
同様にガブも同じ山小屋に避難してきた。
真っ暗な闇の中、風邪気味で鼻の利かない二匹は、お互いの正体を知らないまま夜通し語り合い、意気投合する。
そして「あらしのよるに」を合言葉に、翌日会う約束をする。
翌日、二匹は正体を知ることになるが、喰うもの(オオカミ)と喰われるもの(ヤギ)の関係を超えて、二匹はひみつの友達となる。
しかしそれは、お互いの種族にとって禁断の友情であった。
やがて二匹の関係は、お互いの集団にばれてしまう。
それぞれの集団での立場よりも、お互いの友情を大切にして二匹で逃げることを決意する。
もう歩けないと感じたメイは“自分を食べろ”とガブに頼む。
二匹を追いかけてきたオオカミの群れが迫り、ガブはメイを助けようとしたが、雪崩が起きて巻き込まれてしまった。
メイは無事に山を越え、草原で暮らしていたが、いなくなったガブを思うと寂しくてたまらない。
ある日、ガブと再会するが、ガブは記憶を失っていた。
嘆き悲しんだメイは、“いっそあのあらしのよるに出会わなければ”と叫ぶ。
その言葉がきっかけでガブの記憶は戻り、二匹は再び友情で結ばれたのである。
友情の裏にあったカブの“欲望との闘い”
感動的なストーリーですね。しかし喰うもののガブと喰われるもののメイ、二匹の友情の裏にはガブの欲との闘いがあったのです。
二匹は親友だけど、ガブにとってメイは食欲を満たすもの。
“食べてしまいたい”という欲望と常に闘っていたのです。
カブと同じように、私たちも常に欲望に振り回されている、と仏教で教えられています。
仏教で説かれる五欲
欲望にもいろいろな種類がありますが、仏教では、人間には主に5つの欲望があると説かれていて、それを「五欲」といいます。
財欲・色欲・飲食欲・名誉欲・睡眠欲の五つの欲望。
財欲は、お金がほしい、稼ぎたいという欲望。
色欲は、男性なら女性にカッコよく見られたい、女性なら男性にキレイに見られたい、という欲望。
飲食(おんじき)欲は、食べたい、飲みたいという欲望。
名誉欲は、名誉がほしいという欲望で、「すごい人、いい人だと思われたい。悪い人だと思われたない」という思いです。
睡眠欲は、眠たい、ラクがしたい、という欲のことです。
朝起きた直後から?欲望に振り回される人間
先ほど、仏教では、私たち人間は欲に振り回されていると説かれている、と書きましたが、実際にはどうでしょうか。
朝起きたときから振り返ってみると、まだ寝ていたいという睡眠欲がさっそく出てきます。
しかし会社に遅刻すれば上司に怒られるし、出世にも影響が出るからなんとか沖合上がります。起き上がれたのは名誉欲が睡眠欲に打ち勝ったからですね。
会社に行く前に鏡の前で髪型を整えたり、化粧をしたり、服装を考えたりするのは名誉欲や色欲があるからです。
お腹が空いて、出発まで時間のない中でも朝ご飯をかき込むのは食欲です。
こんなふうに、朝起きてから会社に出かける短い時間を振り返るだけでも、五欲に振り回されているのが私たちだとわかりますね。
抑えた欲望の裏で動く“別の欲望”
先の例で見たように、眠たい欲望を抑えて起き上がったのは、睡眠欲がなくなったのではなく、名誉欲が睡眠欲に打ち勝ったからですね。
このように、欲望を抑えようとしても、必ずその裏には別の欲望の心があります。
オオカミのガブは親友であるヤギのメイを、“食べたい”と思う欲、食欲がありましたが、大事なメイを食べることはしませんでした。
一見、食欲を抑えてなくしているように思いますが、その裏では、“メイに嫌われたくない” という名誉欲があったのです。
一般に仏教と聞くと、いかに欲望を抑えて、清らかな心になれるかを教えたもの、というイメージがあると思います。
ところが、欲を抑えようと思っても、その裏では別の欲の心が動いている…。それが私たちの実態なのですね。
仏教では、そんな欲望いっぱいの自分の心をごまかさずに、ありのままに見つめていきなさい、と教えられています。
ありのまま見つめるには、そもそも私たち人間の心の実態を知らないといけません。
心の実態を詳しく解説した記事のシリーズがありますので、興味ある方はぜひ読んでもらえればと思います。
私も仏教を通して、本当の自分の心を見つめていきたいと思います。