横浜DeNAに学ぶ人気球団化戦略と、仏教の対機説法

今日、プロ野球の人気が低下してきているのはよく聞かれていると思います。

私が小学生のときは当たり前のように「巨人×○○」戦のナイターがゴールデンタイムにテレビ中継されて、高視聴率をマークしていました。ところが今では視聴率が急激に落ち、民放でテレビ中継される試合も大幅に削減されていますよね。プロ野球中継されている日のほうが珍しいと思うくらいです。

野球好きな人も周りにはあまりいなく、プロ野球ファンの私としては寂しいのですが、そんな人気低迷が叫ばれている中で観客動員数が大幅に増加し、注目されている球団があります。

その球団は「横浜DeNAベイスターズ」です。

2011年、球団がそれまでのTBSからIT企業であるDeNA(ディー・エヌ・エー)へ譲渡され、球団名が「横浜DeNAベイスターズ」に改名されました。それまでの横浜ベイスターズといえば万年Bクラス(6球団中4位以下)で、直近は4年連続最下位と、最悪の状態でした。

そんな状態でしたが、今では観客動員数については以下のようになっています。

DeNAが球団の運営に乗り出してからの3年間で、横浜スタジアムの観客動員数は42%も増加し、ファンクラブの会員数はなんと9倍まで増えているという。

しかもこの間の成績は、2012年が最下位の6位、13年と14年が5位と、いずれも振るわなかったにもかかわらず、だ。

今年の観客動員数も順調な伸びを見せており、1試合あたりの観客数は現在約2万4000人と、昨年より3000人ほど多い状態で推移しているという。

横浜DeNAに学ぶ「極上のおもてなし」戦略最下位争いの常連からなぜ超人気球団に?|News&Analysis|ダイヤモンド・オンライン 横浜DeNAに学ぶ「極上のおもてなし」戦略最下位争いの常連からなぜ超人気球団に?|News&Analysis|ダイヤモンド・オンライン

横浜DeNAはいったいどんな戦略によって観客動員数を増加させ、「横浜DeNAベイスターズ」を人気球団へと復活させたのでしょうか?

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glory x glory / SATOSHI TOMIYAMA

野球に興味のない層に、いかに球場に来てもらうか

野球好きな層にはもちろんですが、野球に興味のない、またはルールも知らないような層にも来てもらわないと、観客動員数を上げ続けることはできないですよね。

しかし、野球のルールも知らない人に、球場に来たくなるほど野球観戦の魅力・素晴らしさを理解をしてもらった上で観に来てもらうのは非常に難しいです。

そこで、野球好きな人だけが集まる場ではなく、横浜DeNAは球場を野球が好きな人から見たことがない人まで、気軽に集まって楽しめる場にしようという「コミュニティ・ボールパーク化構想」を掲げたのです。

具体的には

  • グラウンドのすぐそばで迫力あるプレーを観戦できる「エキサイティング・シート」の設置
  • 3~5人がテーブルを囲んで座れる「BOXシート」の新設
  • 試合のハイライトやブルペンなどの特典映像が流れるテレビモニターが付いた「ベースボールモニターBOXシート」
  • 10リットルのビールサーバーが付いた「スカイバーカウンター」

などの席が設置されました。

「従来の球場はほとんどが横並びの席で、せっかく大人数で来ても遠くに座った人とは会話ができませんでした。そこで、ボックス席や2人用の席など、シーンに合わせた使い方ができるようにと、多種多様な形の席を作りました」

こう説明するのは、同球団広報部長の鐵智文氏だ。

「そうすることで、たとえば野球に詳しい人が全くわからない人にルールを教えたり、野球好き同士で野球談義に花を咲かせたりと、来た人たちの間に自然と会話が生まれます。球場が、家族や地域、職場など、様々なコミュニティの人たちが野球をきっかけにコミュニケーションを育む場になればと思っています」(鐵氏)

確かに野球に詳しくない人でも、誰かに解説してもらえたり、みんなでテーブルを囲んで宴会気分で観戦したりできるのであれば、「球場に足を運んでみよう」という気にもなるかもしれない。

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野球観戦といえば応援してなんぼ、周りの人と話している時間はもったいない、と思われる往年のファンの方もいるかもしれませんが、それでは選手やルールも詳しくない人はついていけないですよね。

相手の心情を読み取り、まず球場をコミュニーケーションが楽しめる場として利用してもらう。そうすればやがては野球観戦の魅力も伝わり、固定ファンへとなっていかれるのですね。

マーケティングによる女性ファンの獲得

横浜DeNAでは女性ファンの獲得にも力を入れており、DeNAは参入直後からファンクラブの女性会員数は2011年から8.5倍増となっているそうです。

女性ファン獲得の要因として

昨年は、球場の周りに人気のスイーツを楽しめるカフェスペースを設け、チョコレート食べ放題もできるイベント「ショコラガーデン」を開催。大きな反響を得た。

今月6月20、21日には、女性ファンのためのイベント「YOKOHAMA☆GIRLS FESTIVAL」を初開催。来場したDeNAファンの女性全員に、この日のために特別に用意したパステルカラーのユニフォームをプレゼントする予定という。

「このチケットは過去にないくらい売れていて、急遽配布するユニフォームを数千枚増産しました。普段の球場の男女比は男性:女性=7:3くらいなのですが、当日は女性が5割を越しそうです」と鐵氏。

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球場周りに人気スイーツを楽しめるカフェや、チョコレート食べ放題のショコラガーデンの設置など、野球とはほとんど関係ないですね。しかし、どうすれば女性に球場の近くに来てもらい野球にも少しでも関心をもってもらえるか、徹底したマーケティングに基づいて戦略を立てられ、奏功していることがわかります。

仏教は相手の悩みを知り、解決を示す対機説法

横浜DeNAの戦略は、野球に関心のない相手の心境に立ち、どうすれば球場に来て満足してもらえるかを考えた末の戦略だと知らされ、この精神はビジネスにおいても人間関係においても見習うべきことがとても多いと感じます。

仏教に「対機(たいき)説法」という言葉があります。

仏教では人間の心のことを「機」といわれます。今日でも「心の機微を捉える」などと「心の動き」という意味で機という字が使われていますよね。

対機説法とは「一人一人の心に応じて法(教え)を説く」ということです。

私たちは一人一人、思っていること、感じていること、悩んでいること、苦しいと思っていることなどはどれも違います。自分と同じ心の人なんて誰一人、いませんよね。対機説法とは、その人が何を悩みにしているのかを知り、その解決方法を指し示されることなのですね。

仏教を説かれたお釈迦さまは「すべての人が幸せになれる真理」を悟られたのですが、いくら真理だからといって、それをそのまま伝えて受け取れる人はいません。

上記の野球の例でいうなら(野球と仏教で説かれる真理はあまりに違いますが)、野球観戦に興味のない人にいくら野球観戦の素晴らしさを伝えたところで相手はその素晴らしさをほとんど受け取ってくれないようなものです。球場に観戦に行くことはもうないでしょう。

球場に行かせるには横浜DeNA戦略のように「球場に行けば楽しくおしゃべりができる」「女性優遇のフェアがある」「チョコレートの食べ放題ができる」など、相手の心情に応じた宣伝をしなければなりません。やがては野球観戦そのものの魅力が伝わることを願って。

お釈迦さまは、はじめは相手の悩みを知られ、その解決作を示されました。中には、息子の妻の悪態振りに悩み、妻を更生させるにはどうすればいいのかをお釈迦さまに相談した人もいるほどです。

お釈迦さまは悩みの相談に来た人、一人一人の心を知られ、その心に応じた解決方法を示されました。お釈迦さまの教えに従った人は抱えていた問題を解決し、喜び、お釈迦さまにより傾倒していったのですね。

しかし、そんなお悩み相談がお釈迦さまの目的だったのではなく、お悩み相談を通して相手に受け心を作らせ、すべての人が本当の幸せになる真理を伝えられるのが目的だったのですね。

本来の目的を果たすには、まず相手の心情を理解し、相手を喜ばせる、満足させることが大事なのだと知らされます。

まとめ

相手の心を知り、いかに喜んでもらうのか。それができないことには自分の伝えたいと思っていることも伝わらず、成功も長続きはしないのですね。

仕事でもプライベートな人間関係でもぜひ心がけていきたいと思います。

また、お釈迦さまが伝えることを目的にされた真理とは何なのか?この記事を通して関心を持っていただければ嬉しいです。