最近動画やゲームの人気総合サイトDMM.comが企画したキャンペーンが話題になりました。その名も「天国?地獄?一週間の最高のひきこもり体験!」です。
「最高のひきこもり体験」と言うだけあって、内容が充実しています。宣伝というが最大のねらいでしょうが、DMM.comが見放題です。最新の映画含めた動画も見れますし、オンラインゲームもできます。お金を気にせずコンテンツが見放題というのは最高ですね。最近話題の「艦これ(艦隊これくしょん)」もできます。映画みてゲームをして、ゲームに飽きたらアイドルの動画でも見て、また映画見て…とやっていたら、一日は余裕で時間が過ぎそうですよね。うらやましい限り!
そして、場所も用意されています。一人暮らしの部屋ですね。お金も負担してもらえるそうなので、家賃や光熱費については考えることは不要です。電気代使いすぎなんじゃないかとか、水を使いっぱなしにしてたかなどの心配は無用です。安心してひきこもりに臨めますね!
さらに一日三食ついてきます。ひきこもりしてると、当然ご飯は作りませんし、外に出て食べるのも面倒でしょう。ということで、勝手に作ってくれて勝手に持ってきてくれるという親切設計。
衣食住がほぼ完備された状態なので、万全の状態でひきこもり生活を満喫できそうです。仕事で多忙を極めたり、人間関係で嫌なことがあったりすると、引きこもり生活に憧れますが、そういう点でこれは完璧ですね。
ただし外出厳禁というルールが課されています。まあ引きこもり生活ということなので、当然です。それに眼をつむれるくらい魅力的な企画でしょう。そんな極楽生活ぜひやってみたいという人が多いのではないでしょうか。
地獄と化した最高の引きこもり生活
しかし、実態はそうではなかったと、体験レポートでは語られています。
一週間の最高のひきこもり体験レポート – DMM.com
挑戦者のユウトさん(27歳)は語ります。
先に言っておきますと「地獄」でした。
最初は楽しかったんですが、 始まって3日目で急激にキツくなってきました。
外にも出れず、ずっとひとりぼっちで誰とも
コミュニケーション取れないことがこんなに辛いとは…。5日目くらいからは今が夢か現実かわからないくらい
フワフワしてきて、あんまりよく覚えてません。
夢の様な企画のように思いますが、実態は全く異なるものだったようです。
良かったことベスト3としてやはりDMM.comのコンテンツが見放題というのとご飯の美味しさを語っています。しかしベスト3なのに3位が「特になし」というところからも辛さが伺えます。
では何が辛かったのでしょう。辛かったことベスト3を見てみると「人とコミュニケーションを取れない」「太陽の光が浴びれない」「ご飯が重すぎる」ということが挙げられています。太陽が浴びれないやご飯が重すぎるは確かにそうですが、1位の「人とコミュニケーションを取れない」はむしろ引きこもりの醍醐味なのに、「なぜ?」と思ってしまいます。思わずDMM英会話で講師に声をかけてしまうくらい辛かったようです。
何よりも人とコミュニケーションを取れないのが辛すぎます。
今まで生きてきて、こんなに人と話さなかったことはありません。
望んでいたことがなぜ”地獄”になってしまうのでしょうか。考えてみたいと思います。
心も無常。楽しめなくなってしまう義務感
どんなことにも”飽きる”ということがあります。どんなに楽しいことでもつまらなくなる時がくるのです。
例えばあなたが一番好きなものは何でしょうか。好きなものだからといって一日毎食食べ続けていたらどうでしょうか。どんなに美味しくても、最初に感じた美味しさはなくなるでしょう。飽きてしまうのです。
私はお菓子の中でもオレオが非常に好きです。オレオについて3時間くらい語ることができる自信があります。しかしオレオをそのまま食べろと言われると、10枚くらいで飽きてしまいます。そのため、オレオで色んな食べ方をします。そのまま食べるのはもちろん、クッキー部分を分けて食べたり、バニラをすくって食べます。あるいは牛乳やバニラアイスを用意して、一緒に食べるとまた別の食感を楽しみます。飽きがこないよう工夫しないとならないのです。
それは仕事でも言えます。よく趣味を仕事にしたいという声を聞きます。しかしそれが幸せなのかというとそうでもないようです。趣味というのはたまにやるからよいのです。仕事、つまり”毎日やらなければならない”となると全く違ったものになってしまうようです。「テニスをしていい」というのと「テニスをしなければならない」というのはやることは同じでも全く意味合いが変わってしまうのです。
仏教ではどんなものも続かないことを無常と言われます。それは周りの物もそうですし、自分の肉体のこともいいますが、それだけではありません。私の心も無常です。変わり通しなのです。あるときは最高と思っていても、その最高という気持ちは続きません。ちょっとしたきっかけで最高が最低になるのです。
DMM.comの引きこもり企画も、最高の引きこもり体験が最低の引きこもり体験になったのも頷けます。時々、自由に引きこもりするのがよいのであって、1週間ずっと、ルール付きで引きこもりのは訳が違います。やることが引きこもりでも、心は楽しめないのは当然でしょう。
まとめ:引きこもりの反動で働きたくなるのも、また無常
さらに興味深いのが、今回の引きこもり企画の最後に被験者はこう語っています。
僕は現在無職でして、就職活動に疲れてこの企画に
申し込んだんです。でも、今はその反動で「ただただ働きたい」と
思えるようになりました。
就職活動を再開して、一刻も早く定職に就きたいです。いつまでもこんなことしてちゃダメだ、って強く思いました。
もうあの部屋に戻りたくないんです。頑張ります!
面白いですね。積極的に引きこもり体験に応募するということは、そういう願望が強かったはずです。まともに働きたい人は面白がりはするものの、応募はしないでしょう。体験後さらに引きこもりたいとなってもよさそうなものですが、結果はその真逆となりました。引きこもりたいということは働きたくないということ。しかし、「ただただ働きたい」という結果になりました。よほど引きこもり生活にこたえたようですね。そういう意味でいい薬になったのかもしれません。
この点からも心の無常さが伺えます。私たちの心は常に動き通しなのです。日々いや一瞬一瞬変わっていきます。
働く気持ちが強くなったのは大変素晴らしいことですが、その心も変わります。「働きたい」からまた「引きこもりたい」となって、延々と繰り返さないことを念じます。この流転輪廻から離れるのが仏教を聞く目的です。引き続き学んでいきたいと思います。