「僕は絶対に灯油を入れに行かない!」動きたくな~い六つ子から学ぶ“睡眠欲”とは|「おそ松さん」からの仏教

ついに可動フィギュア「figma 松野兄弟」が発売されることになり、ますます話題を集めているアニメ「おそ松さん」

そんな大人気アニメ「おそ松さん」から学べることについて、今回もお伝えしていきます。

※シリーズ第1回はこちら(この記事だけでも読めます)↓

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「おそ松さん」の六つ子たちは作中で、人間が持つ煩悩の実態を分かりやすく教えてくれています。

前回まで、煩悩の中でも特に「欲」の心の本性について、「トド松と5人の悪魔」「逆襲のイヤミ」を通じてお伝えしてきました。

「トド松と5人の悪魔」や「逆襲のイヤミ」では、トド松やおそ松たちが、「名誉欲」を満たすために死に物狂いになる姿を取りあげましたが、実は欲の心は名誉欲だけではありません。

仏教では五欲といわれ、欲の心を大きく5つに分けて教えられています。

財欲・色欲・飲食(おんじき)欲・名欲・睡眠欲の五つ。

五欲(ごよく)とは – コトバンク

人間の欲といってもいろいろあるのですが、以下に集約されるのですね。

  1. 食欲
  2. 財欲
  3. 色欲
  4. 名誉欲
  5. 睡眠欲

六つ子たちはどの欲も旺盛そうですが、今回は3月14日に放送された最新話「灯油」を通して、「睡眠欲」についてお話します。

「灯油」から学ぶ「睡眠欲」の実態

ある吹雪の日、おそ松たち六つ子は、石油ストーブの効いた暖かい部屋でニート生活を満喫していました。

ところが、灯油が切れて石油ストーブが止まってしまいます。灯油タンクは縁側に置いてあり、外は吹雪でした。

6人もいれば誰か灯油を入れにいくだろうと思いきや、コタツに潜り込んで動こうとしない兄弟たち。実は六つ子たちは、内心で灯油を入れる役目を押し付け合っていたのです。

おそ松(おい、行けよ!誰か行けよ!音が鳴っただろ?)

一松(灯油が切れた…お前ら気づいてるだろ…)

チョロ松(いやいや、こうしてる時間が無駄だからさあ、結局は誰かが行かないとダメなんだから…)

トド松(てかさぁ、ニートの分際でこれくらいの労力惜しむってどゆこと?ホンッとダメ人間だよね皆ー!!)

おそ松(クズたちよ早く行けぇ!)

一松(みんな子供?早く行けって)

チョロ松(行って!!)

トド松(だから行ってよ~!)

おそ・チョロ・一・トド(((((早くぅー!))))))

自分のことは棚に上げて、他の兄弟を心の中で罵り、コタツから出ようとしない六つ子たち。

「睡眠欲」と聞くと、睡魔のことだと思われるかもしれません。しかし実は、仏教で教えられる「睡眠欲」とは、眠りたい心だけではなく、今ご紹介した六つ子たちの心理のような楽をしたい心を「睡眠欲」と言われます。

この灯油のエピソードでは、楽をしたい「睡眠欲」から寒い外に出て灯油を取りに行くことを嫌がる六つ子たちが、何とかして灯油を入れる役目を他の兄弟に押し付けようとします。

カラ松(いや何で俺なんだよ!おかしいだろ!見るなこっちを!!!てか昨日も一昨日も俺が入れに行ったァ!!今日は絶対に行かないぞ!!ふっ、オレは今まで皆のためを想って灯油を入れていた・・・しかし気づいたんだ・・・行き過ぎた愛は時に人を(中略)

・・・って熱ゥ!!!熱っ!熱!)

トド松「あっ★ごめ~ん♪」

なんと、あざといトド松は電気ポットに入っていた熱湯をカラ松にかけて、灯油を入れることを間接的に催促。

カラ松(ブラザー!そんなことをしても今日は一歩も退かんぞ!!)

おそ松(なんだよ・・・珍しく頑なだな・・・

ちょ、十四松の奴、こういうときに限って一人寝やがってえ!自動的に対象外かよ~!ずりいぞ!!!)

寒さに弱い十四松は、他の兄弟のものと思われる「どてら」を奪い、加えて毛布で全身をくるみ、部屋の隅で寝てしまいました。

実は寝ているフリをしているだけで、自分は灯油を入れにいかなくて済むように演技しているのですが・・・

さらにそれを見た一松が自分も狸寝入りを始めます。

トド松(あ!!!ちょっと・・・みんな!!!一松兄さんが…寝たふりしてんだけどォーー!?アアアアアアーーーー!!!)

チョロ松(うわコイツ汚ね!!対象外になろうとしてるよ!!鬼畜!!腐れ外道!!)

おそ松「ひひひ・・・そうはいかないよ?一松・・・」

おそ松は「紙縒り」を取り出し、狸寝入りする一松の鼻に突っ込みます。

突っ込み過ぎて、紙縒りが口から出てきた一松。それでも狸寝入りを止めようとしません。

おそ松「ん?起きてんだろ?なあ?起きてんだ?ん?起きてるよな?おい一松?一松?いちまつ~?一松一松一松ーーー!!」

口と鼻から出た紙縒りを両手で掴み、鼻の穴を激しく摩擦しはじめたおそ松。最終的に一松は摩擦熱で鼻から発火、全身が燃えてしまいます。

それでも灯油を入れる役目を負いたくない一松は、全身がコゲコゲに燃えても狸寝入りを止めません。

チョロ松 (いやいやいや死ぬ死ぬ!!死ぬって!!!

もう逆に灯油を入れに行った方が楽だろ一松ー!?)

自分が灯油を入れにいきたくない一心で、一松を発火させたおそ松にもピンチが襲います。トイレに行きたくなってしまったのです。

思えばこのエピソードの初めで、トド松が優しそうにおそ松にお茶を入れてあげるシーンがありました。

トド松「へっへっへ・・・やっと来たね・・・」

おそ松 (あーこいつ!お茶かァ!そういうことか!やけに親切だと思ったら長いスパンの罠だったのかァ~!!!)

チョロ松(さすがトッティ!!これで奴はもうトイレに立つしかない・・・そうなれば自動的に、灯油を入れる義務が発生する!!しかし・・・)

しかしおそ松の睡眠欲は、これきしのことでは収まりません。なんと、コタツの中で他の兄弟と結託してトド松の足を攻撃しはじめたのです。

チョロ松(ヤツのおしっこを待つより、お前を殺す方が早いんだァ!)

トド松 (痛い!いててて!!何!?結局!!結局!!!暴力にモノ言わすのこいつら!?今までの心理戦何だったのォーー!?・・・ふ!ざ!け!ん!な!たとえこの足ミンチになろうと!

僕は絶対に灯油を入れに行かない!!見てろ・・・!!)

ついに立ち上がったトド松。灯油タンクのある縁側の方向に向かうようです。

おそ松(ヘへ・・・末っ子め・・・)

一松(手間かけさせやがって・・・)

チョロ松(最初から行っとけっつーんだよ!)

トド松「みんな★ちょっと換気するね♪」

兄たち「は?・・・ええええええええ!!!?」

なんとトド松は縁側の障子を全開にし、部屋の中に吹雪を入れ始めたのです。

トド松(へへへ、死なば諸共!!持久戦ダァ!!!)

おそ松(何こいつ奇行に走ってんの馬鹿なの!?)

チョロ松 (てかこれどういう状況!?

俺たち灯油を入れて、部屋を暖かくしたいんだよね!?何で今吹雪に耐えてんのォ!?)

みんな毎日「睡眠欲」と戦っている

これはニートであるおそ松たちの「睡眠欲」のお話でしたが、ちゃんと働いて毎日バリバリ動いているように見える人たちもみんな「睡眠欲」と戦っています。

遅くまで残業した帰り道。遅い時間帯でも、電車の中は残業帰りの人や飲み会帰りの人で結構混んでいますね。

席が空いたので座ろうとしたら、近くに杖を持ったおばあさんが。

おばあさんに席を譲る方が良いのは分かっていてもこんなとき

「あー明日も朝早いのになあ・・・少しくらい仮眠とりたいよ・・・」

という気持ちが起きてこないでしょうか?

また仕事中も、トラブルの多い厄介な得意先との取引が迫っているとき

「誰か他の人がやってくれないかな・・・なんで新米の自分がこんな仕事やらないといけないんだろう・・・めんどくさいよ~」

こんな気持ちが起きてこないでしょうか。

昼休みの後の会議では文字通り「睡眠」を取りたい心と戦っている人もあるでしょう。

私たちは毎日、楽をしたい睡眠欲と戦いながら生きているのです。

そんな社会人の気持ちを代弁してくれるようなTwitterのアカウントもあります。

全日本もう帰りたい協会@mou_kaeru

https://twitter.com/mou_kaeru?lang=ja

「昼食後は眠気が襲ってくる。一秒でも早く帰りたい

「今起きた、今日もひたすら『帰りたい』そんな一日が始まる」

というようなツイートが延々流れるアカウントなのですが、なんとフォロワーは26 万人以上

私のTwitterのアカウントにもよくリツイートとして拡散されてくるのですが、どれだけ多くの働く人が、「帰りたい」という睡眠欲と戦いながら毎日働いているかが分かります・・・

楽をしたい心でいっぱいの私たちが幸せになるには?

「灯油」のエピソードでは、最終的に次男のチョロ松が役目を押し付けられ、灯油を買いに行きますが、途中で居酒屋に寄り道して帰ってきません。

帰りが遅いチョロ松を探しに出た、おそ松やカラ松もミイラ取りがミイラになり、居酒屋で飲んだくれてしまいます。

灯油を入れにいく役目から逃れ、家に最後まで残ったのは一松、十四松、トド松。

しかし寒さのあまり発狂した十四松が扉を破壊し、家の中は外と同じ気温に。さらに暴走した十四松は一松の首を締めながら吊るし上げ、一松は死にかけます。

阿鼻叫喚と化した家で、トド松は頭を抱えて震えながら床で号泣。

結局、ストーブに灯油が足されることはなかったのでした・・・

仏教では幸せになりたければ、良いことをしなさいと教えられます。

でも良いことをしろと言われても、何をしたら良いのかよく分からない私たちのために、お釈迦様は良いことを大きく六つに分けて紹介されています。

これを「六波羅蜜(ろっぱらみつ)というのですが、その中でも一番最初に挙げられるのは「布施」です。布施とは今の言葉でいうと「親切」という行為です。

私たちは自分が楽をしたいという「睡眠欲」で心がいっぱいのため、なかなか相手を喜ばせるために動こう、他人に親切をしようという心が起こってきません。

文字通り親切は、「親」を「切」るほど難しい行いなのです。

だからこそ、楽をしたい!他人のために動きたくない!という睡眠欲と戦ってようやくできる「親切」という行為はとても素晴らしいことで、その実践が幸せになる道なのだよ、と仏教では教えられます。

楽をしたいからと灯油を入れる役目を押し付け合っていては、家はいつまでも寒いまま。みんなの心も寒いまま。

今回ご紹介した「灯油」でも、誰か一人でも率先して灯油を入れにいけば家は破壊されることはありませんでした。結局、灯油を入れて部屋を暖かくしたいという兄弟たちの願いは果たされず、一松に至っては最終的に弟に殺されかかっていました・・・

そんな、「働きたくな~い」を通り越して「動きたくな~い」になっている睡眠欲でいっぱいの六つ子たち。彼らにも是非仏教の教えを知ってもらいたいと思った最新話、「灯油」でした。

私たちは灯油が切れたら率先して入れにいき、部屋も周囲の人の心も暖められるようになりたいですね。

次回は前回お話していた「名誉欲」について、もう少し違った角度からお伝えしていきます。