「10万円では足りない!」
私の周囲から、しばしば耳にする言葉です。
5/1から1人10万円の特別定額給付金の申請が始まり、企業の資金繰りだけでなく、個人の資金繰りもまさに今、強いられています。
4月の新型コロナウイルスの影響による倒産は全国で83社 。
このまま国からの手立てが遅延すれば更に加速すると予想されており、一部の報道では「中小企業6割が6月末までに破綻の恐れ」とも言われています。
給料に対する不安、将来が見えない今だからこそ、知識として抑えた方が得な考え方を、元航海士のナッチョの実体験を元に共有していきたいと思います。
船員は高給取り、しかし大きな代償がある
日々、安全航海、安全荷役に従事し、約4ヶ月の間ひたすら働く船員の給料は乗船中と休暇中で異なります。
私が勤務していた会社の場合、初任給で乗船中の手取りが約26万円、休暇中は約13万円前後です。
倍近くある金額差は航海日当、作業手当、危険手当など、主に手当が理由となります。
あくまで手取りなので、ボーナスを含めた年収にすると大体400万円前後となります。
ちなみに、高卒における18歳男性の全国平均年収は290万円です。
約100万円ほど差がある上に生活費が最も掛かる「衣・食・住」の内、乗船中は「食・住」が会社負担となるため、ほとんどのお金が手元に残ります。
一見聞こえは良いのですが、実は大きな欠点があります。
五体満足で家に帰ることが出来るか保証がないという事実です
もちろん無事故に徹底していますが、人間である以上ミスも付き物です。
沈没による溺水や高所からの転落、機器の巻き込まれが主に挙げられており、日本における「海で起こる労働災害による死亡者数」は業界別で見てもトップクラスに入り、毎年100名近くの尊い命が亡くなっています。
実際私の上司は、過去の不慮の事故により、左手の薬指を失くした方や、右足の小指を失くした方がいました。
決しては安全とは言えない状況から、高給取りとはいえ割に合わない部分が実に多いのです。
先輩船員が語った「金はあの世へ持って行けない」
船員は基本的に金遣いが荒く、稼いだお金もさっさと使い果たす傾向があります。
今日は無事でも、明日は無事に生きているかは分からないという考え方です。
昼夜問わず、船は航行しています。
自分が寝ている間に事故が起こり、為す術もないまま亡くなる船員も中にはいるのです。
船員は「死」が常に隣り合わせだからこそ、今を精一杯生きるという事を少々短絡的ですが体現しています。
私も新人の頃は「船員の浪費」に理解ができず、貯金をすることに生き甲斐を感じていました。
見かねた先輩船員によく
ナッチョ、いくら金があっても、あの世へ金は持って行けない。自分か大切な人にお金を使え!
と、耳にタコができるぐらい言われていました。
実際、船員は家庭や友達にご馳走したり、親に旅行をプレゼントしたり、愛妻家が比較的多い印象を受けます。
人に尽くすことが多い理由は、無事に帰り、家族や大切な人に元気な姿を見せる事が一番の任務と心得ているからです。
【給料が高い=幸せ】ではない、有無同然な世の中
船員の現状を今一度振り返って分かったこと、人はお金があっても「苦しみ」や「悩み」は常に作用し続けるということです。
仏教では有無同然と言います。
おそらく小学生の時に習った漢字だと思いますが、あまり覚えている方も少ないと思います。
解説すると、有る状態であろうと無い状態であろうと、本質的に苦しみは変わらないという、実は仏教が語源の言葉です。
「持ち家」を例に挙げた場合、「無い人」からすると、定住ではない不安定さ、担保がないという不安が常にあります。
「有る人」からすると毎月の維持費を支払うこと、大切な家が火事になって失う不安が常にあります。
双方ともに抱える悩みが必ず発生するという事です。
持ち家に限らず、結婚や仕事、友人関係すべてに言えることだと教えられています。
人はお金や財産、地位、名誉などによって苦しみを離れることはできません。
現在、新型コロナウィルスの影響で数多くの人々が苦しんでいる現状をどう乗り越えるか、各個人に問われています。
毎日のように人が亡くなり、非情すぎる環境です。
辛い現状の中で、私たちが間違いなく出来ることは絶望せずに時間とお金を正しく有効的に使う事です。
有無同然を理解し【お金だけではない幸福】を哲学していきましょう。
今後も海×仏教の記事を書いていきます。
興味のある方はぜひチェックしておいて下さい。