相手の話を聞いてるフリして、自叙伝を語っている? 相手を心から理解する聞き方とは

こんにちは、ライターのねりうめです。 世界的に有名なベストセラー、7つの習慣。今回は、第6の習慣、まず理解に徹し、そして理解されるを紹介します。 前回までの7つの習慣シリーズの記事は以下になります。

  1. 7つの習慣と仏教:身につけておくべき主体的と因果の法則の考え方
  2. 7つの習慣と仏教:人生の終わりを思い描くことと、仏教が教える無常観
  3. 優先順位と、仏教が教える備えの大切さ:7つの習慣と仏教
  4. 信頼残高とお釈迦様の教える善い行いとは?:7つの習慣と仏教
  5. Win-Winと自利利他の教えを身につけるには?:7つの習慣と仏教

処方箋を出す前に、診断する

最近歯医者に行って親知らずの抜歯をしてきました。その時ついでに虫歯も見つかり、また歯医者に通うことに。もう歯医者からは一生逃れられないのでは、と感じる今日このごろです。

さて、今回は、相手の話を聞くことについてお伝えします。ところで普段、あなたは、友達や恋人の話をきちんと聞いていますでしょうか。7つの習慣で、コビー博士は、多くの人は相手の話を真に聞くことをしていないと言及しています。いやいや聞いてるよ、と思っちゃいますね。では、例えば、あなたの部下がこう相談に来たとします。「先輩、もう会社辞めたいです」。このシチュエーションではあなたはどういった対応をするでしょうか。

相談しに来た部下に、いきなりアドバイスをしていたりしないでしょうか。いきなりアドバイスをしても、その人は話を聞こうとはしません。お医者さんの例えで言えば、診察に来た患者さんにいきなり薬を出す医者はいません。診断なしに出された薬なんて、恐くてとても飲めません。 通常、まず問診して、どういった症状を抱えているのかを聞いてみる。その後でその人にあった適切な処方を行わなければ、相手の症状を解決することはできないでしょう。

つまり、すぐにアドバイスをするということは、相手の症状もわからず、もしくはわかったつもりでいきなり薬を出すということです。それで、相手の症状が良くなるでしょうか。歯が痛い!と言っている人に風邪薬を渡すようなものです。

相手の話を聞くときは、まずアドバイスする前に、相手の話をよく聞いて、理解に徹することが大事です。よく聞くと言っても、ではどんな聞き方をすればいいのでしょうか。

聞き方の5つのレベル

7つの習慣では聞き方を5段階に分けています。

  1. 無視して、聞こうとしない
    無関心な話題だと、やってしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。
  2. 聞くふりをする
    仕事から疲れて帰ってきたサラリーマンの夫がやったりします。テレビを見ていて、妻の話を「あーあー」と聞いているふりをするのですが、頭はテレビでいっぱいです。聞いているとはいえませんね。
  3. 選択的に聞く
    自分の聞きたいところだけを聞いたり、聞き逃しをしていたりする状態です。学校から帰った子供がお母さんに話しかけるときによく起こります。「ねーね-!今日ねー!こんなことがあってね、でね、」と延々学校の話をした後に「そういえばテストで0点だった!」というところだけしっかり聞く親のような状態です。
  4. 注意して聞く
    このレベルまで聞く人は少ないでしょう。このレベルでは、相手の話をきちんと聞き、どんな内容だったか反芻することができます。
  5. 共感して聞く
    実は、このレベルがもっともよい聞き方とされています。ただ相手の言っていることを理解するだけではなく、共感もする。共感とは、共に感じる、つまり相手の感情を自分も感じることを言います。相手の気持ちを100%わかることは難しいですが、それでも気持ちを少しでも気づき、理解しようとし、さらに感じる、そこまで行って、相手を真の意味で理解することができるのです。

ちなみに、そもそも話しかけられることがないという方は聞く以前の問題ですね…。話しかけられるように努力しましょう。

共感する聞き方の4つのレベル

それでは、相手の話を共感して聞くために、相手の話に対してどういった反応を示せば、共感していることになるのでしょうか。例として、先ほどの会社をやめたいと相談に来た部下と、上司の例を取り上げましょう。

  1. まず、話の中身を繰り返します。
    例:部下「もう会社の仕事が嫌になったんです。」上司「そうか、嫌になったんだね」となります。
  2. 次は、話の中身を自分の言葉に置き換えます。そうすることで1と比べてより相手の話を理解することができます。
    例:部下「もう会社の仕事が嫌になったんです」上司「会社の仕事をやりたくないんだ」
  3. さらに相手の感情を反映しましょう。相手の気持ちをじっくり受け止め、自分も同じ感情を抱いたことを示します。
    例:部下「もう会社の仕事が嫌になったんです」上司「なんだか不満があるようだね」
  4. もっともよいレベルでは、内容を自分の言葉で繰り返し、同時に感情を反映します。
    例:部下「会社の仕事が嫌なんです。」上司「今の仕事がやりたくなくて、なんだか不満があるみたいだね。どうしたんだい?」

この4つのレベルの聞き方を理解し実践を積むことで、段々と相手を理解し、相手からも信頼されます。

人はそれぞれ違う世界に住んでいる? 仏教が説く業界

その一方、仏教では相手と自分は違う世界の住人、と言われています。人はそれぞれ、自分が創り出した世界、すなわち業界(ごうかい)で生きていると言われます。 業とは行いのことです。よく自業自得と言われますが、これは自分の業(行い)によって、自分の運命が決まる、と言う意味です。業界は、自分の業(行動)によって創りだされた世界。ですので、当然自分以外の人とは違う世界です。まったく同じ行動をしているのなら話は別ですが。

業界が違えば、おなじことに出逢っても、解釈が変わります。例えば野球。自分がバッターだとして、120kmの球をピッチャーが投げました。あなたならどんな反応をするでしょうか。私などのか弱い市井の民は、そもそも球が見えない。120kmも「消える魔球」です。ではあの、イチローならどうでしょう。わりと容易にヒットを打てそうな球だな、と感じると思います。私とイチローは、それまでしてきた経験(行い)が全く違います。行ないが違うので、120kmの球に対する解釈も違うのですね。

この例からわかるように、相手と自分では、それまでの行いが違うので、分かり合えない部分が出てきてしまいます。自分の言っていることが伝わらない。気持ちを理解してもらえない。そういった悩みを持たれる方もあると思いますが、それも相手と自分では業界が違うからなのですね。もちろん、相手と自分の業界には違う部分もある一方で、共通する部分もあります。しかし夫婦のように、例え最初は共通部分が多くて、意気投合して付き合い始めても、相手と長く一緒にいると、だんだん分かり合えない部分が増えてくるといわれています。

仏教には、独生独死独去独来という言葉があります。独り生まれ、独り死んでいく。独り来て、独り去る。生も死も、一緒に連れ添う人はいません。人間は結局、最初から最後まで孤独で、自分を理解してくれる人は存在しないのです。

“分かり合えない”と分かってこそ、相手を理解しようとする気持ちが出てくる

そういわれるとなんだか虚しくなりますが、だからこそ、相手を理解しようと努力することに意義が出てくるのではないでしょうか。 はじめから理解できるのでしたら、コミュニケーションは必要ありません。相手がわかってくれなくてもそれが当然なんだと思うことです。わかってくれないと怒りの気持ちが湧き上がってくるものですが、分かり合えないのが当然と思えば、それも抑えることができます。そして、分かり合えないとわかっているからこそ、相手が少しでも理解できるような伝え方をしよう、と思えるのでは無いでしょうか。

人間は孤独のいきもの。だれしも自分の気持ちを理解してほしい、という気持ちでいっぱいです。だからこそ目の前の相手を少しでも理解することに、大きな価値があるのですね。