こんにちは、音楽大好きなRyoです。
今回は、宇多田ヒカルさんの『花束を君に』という曲から仏教で説かれる「愛別離苦(あいべつりく)」についてお話しします。
宇多田ヒカル「花束を君に」ってどんな曲?
「花束を君に」2016年4月にスタートしたNHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の主題歌です。
「とと姉ちゃん」は“父親代わりの長女”ヒロイン、小橋常子(こはしつねこ)が、 生前の父が教えてくれた「当たり前の暮らしがいかに大切か」 という教えを胸に、二人の妹と母を守って型破りの大奮闘。 女ばかりの常子一家が激動の昭和を駆け抜けていく、 小さな家族の大きな年代記です。
平成28年度前期 連続テレビ小説「とと姉ちゃん」制作のお知らせ | 連続テレビ小説 | NHKドラマ
連休で帰省した際に初めてこのドラマを見ました。 宇多田さんの優しく温かい歌声にすっかり心を奪われてしまいました。
宇多田ヒカルさんは、2010年8月に音楽活動の無期限休止を 宣言してから実質5年4ヶ月ぶりに活動を再開。「NHK朝ドラ主題歌」と「NEWS ZERO」のテーマ曲をリリースする、貫禄のダブルタイアップで復活ということもあり注目されています。
歌詞解説!「薄化粧した朝」とは
「花束を君に」の中で特に印象に残った歌詞の一部を紹介します。
普段からメイクしない君が薄化粧した朝 始まりと終わりの狭間で 忘れぬ約束した
花束を君に贈ろう 愛しい人 愛しい人 どんな言葉並べても 真実にはならないから 今日は贈ろう 涙色の花束を君に
歌詞の解釈は人それぞれと思いますが、なるほど!と 思うものがありましたので紹介します。
ここで考えたいのは、メイクをまったくしない人が それでも薄化粧をしなければならない時とはどういうことかを想像することだ。 そこで、出てきた答えのひとつが「棺桶に入る時」だった。 死者は棺桶に入って火葬される前、最後の対面の際は男性であれ女性であれ 綺麗にお化粧されるものである。
もしかすると、このフレーズはそれを指しているのではないか、と思ったわけだ。 すると、「始まりと終わりの狭間」という意味も急にしっくりとくる。 肉体的にこの世に終わりを告げ、あの世の始まりに向かおうとしている最中と 捉えることができるわけだ。 君はもう死んでしまい、もう一緒に笑うことも、泣くことも、 時間を分かち合うことさえできないから、 「どんな言葉を並べても真実にはならず」、 愛しいはずの君に贈ることができるのは「涙色の花束」だけなのである。
パッと聞いていい曲なのですが、薄化粧という言葉でここまで考察できるのがすごいですね。今まで聞いていた曲が全く違って聞こえてきます。
そしてこの別れについて、仏教では「愛別離苦」で教えられているのです。
仏教の視点から~四苦八苦の「愛別離苦」~
いつの時代、いずこの人も避けられぬ人生の苦しみを、 お釈迦さまは「四苦八苦」と教えられています。
この四苦八苦という言葉、四字熟語として覚えた人も多いでしょうが、 実は仏教から出た言葉なんですね。
四苦八苦(しくはっく)とは、仏教における苦の分類。 根本的な苦を生・老・病・死の四苦とし、 根本的な四つの思うがままにならないことに加え、 愛別離苦 – 愛する者と別離すること 怨憎会苦 – 怨み憎んでいる者に会うこと 求不得苦 – 求める物が得られないこと 五蘊盛苦 – 五蘊(人間の肉体と精神)が思うがままにならないこと の四つの苦を合わせて八苦と呼ぶ。
「愛別離苦」とは、愛する人や物と別れる苦しみ です。
私は父の転勤の関係で小・中学校を通して2回転校しましたが、 父から転校を告げられた時、涙が止まりませんでした。 その時の悲しみは今でも忘れることができません。
苦楽を共にした学生生活が終わり、社会人になる時も 将来への希望とともに、「あー、みんなとも離れ離れか、、」と 寂しい気持ちになったことを覚えています。
昨日まで仲良く話していた恋人から、突然電話があり、 別れ話を告げられることもありますよね。(これは経験ありませんが笑)
長年、子供のように可愛がっていたペットが死んでしまったら、 苦しみは大変なものでしょう。
このように、人生には様々な別れがやってくるものです。 宇多田ヒカルさんの「花束を君に」も大切な人との別れの歌と思わずにおれません。
「会うは別れの始め」「会者定離」といわれるように、 手に入れたもの、出会った人とは必ず別れねばならぬ時が来ます。 しかも愛する気持ちが強いほど、離れる苦しみは深刻になります。
昔から、こんな歌があります。
「会者定離 ありとはかねて聞きしかど 昨日今日とは 思わざりけり」
この世は諸行無常、会者定離の世界であると、 かねてより聞いていましたが、お別れがこんなにも早く来ようとは 思ってもいませんでした。と 大切な人と離れ離れになる悲しみが詠まれています。
愛する人と「いつまでも一緒にいたい」と思うのは当然ですが、 いつ、何が起きるか分からない諸行無常の世の中。
朝、元気に「行ってきます」と出ていった主人が 交通事故に遇い、帰らぬ命となることもあります。
いつも元気に支えてくれていた妻が、難病にかかり死別することもあります。
大切な人ほど、「別れるなんて考えてくない」と思うものですが、 「いつかは別れねばならぬ時が来るんだな」と思えば 今の一瞬一瞬が有難く、大切に感じられるのではないでしょうか。
だからこそ一期一会という言葉が重く聞こえます。
宇多田ヒカルさんの歌を通して、 自分の本当に大切な人との過ごし方を考えてみたいと思います。