そろそろ梅雨が明け、夏に突入する頃ですね。こんにちは、YURAです。
突然ですが、「10cm（シプセンチ）」という音楽アーティストを知っていますか？
「10cm」は20代・30代を中心に圧倒的支持を受けている、韓国の音楽アーティストです。
（日本公式ツイッター より引用）
今回はその「10cm」の少し季節外れな楽曲「春が好き？？(봄이 좋냐？？)」を通して、仏教で説かれる「愚痴」の心について学んでみたいと思います。
「春が好き？？(봄이 좋냐？？)」ってどんな曲？
今春リリースされた「春が好き？？(봄이 좋냐？？)」を、実際に聞いていただきましょう。
いかがでしたでしょうか。
“粘土細工がかわいい、ほっこりするMV（ミュージックビデオ）だなぁ、
恋する気持ちを表現している曲なのかな”
…と思うのは、私たちが外国人だからです。
実はこの曲、とてつもなく腹黒な歌詞なんです。
サビをご覧ください。
봄이 그렇게도 좋냐 멍청이들아
春がそんなに好きか マヌケども벚꽃이 그렇게도 예쁘디 바보들아
桜がそんなに綺麗か バカども결국 꽃잎은 떨어지지 니네도 떨어져라
結局花びらは散るんだよ お前らも散ってしまえ몽땅 망해라 망해라
みんなダメになれ ダメになれ（10cm – “봄이 좋냐？？”歌詞より）
「春が好き？？」という題は、皮肉ったものだったんですね。
初めてこの曲を聞いた時、MVに似合わない歌詞に、かなり衝撃を受けました。
“虚しさ、寂しさを和らげる”「10cm」の魅力
写真や動画でお分かりのように、「10cm」とは、ユン・チョルジョンとクォン・ジョンヨルの2人組アーティストです。
彼らは路上ライブから始まり、デビュー後数年で、1万人動員の単独コンサートを行った上、韓国バンド初のアメリカ公演を実現させた、実力派アーティストです。
また、生き生きとした言葉で表現されている正直な歌詞や独特なリズムは、他のアーティストにはない魅力があり、お洒落感があるとファンを魅了しています。
ちなみにこのバンド名は、2人の身長差が10cmあるということから名付けられたそうです。
さて、「10cm」が歌う「春が好き？？」は、恋人のいる女性に片思いをしている男性が、そのカップルに嫉妬してケチをつけ、ひいては社会への不満を爆発させる、何とも言い難い曲です。
「花はいつ咲くのかな、気候はいつ和らぐのかな。」と、恋人と他愛のない会話をしている片思いの女性に、
「そんなの何が重要なんだ。そんなこと知ってどうするんだ。」とひねくれ、挙句の果てに「みんなダメになれ」と全否定です。
一見、ひんしゅくを買いそうな「春が好き？？」ですが、意外にも、ソロ（独り身）たちの虚しさや寂しさを和らげてくれると話題を呼び、韓国の主要音楽チャート1位を、何週にも渡って独占する大ヒット曲となりました。
【韓】fnニュース – エムネットドットコム週間チャート、7週間ぶりに地殻変動“10cm 春が好き？？週間チャート１位”
これほどネガティブな歌詞にも関わらず、大ヒットした理由は、私たちにある「煩悩」、とりわけ「愚痴」の心情を包み隠さずに歌い上げているからでしょう。
「春が好き？？」人気の理由 現代人は“愚痴”の心に悩んでいる
「煩悩」とは、私たちを日々煩わせ悩ませている心のことです。
仏教では、私たち人間は、108つの煩悩でできていると教えられています。
その中でも特に恐ろしい3つの煩悩を「三毒」と言われ、以下の貪欲（とんよく）、瞋恚（しんい）、愚痴のことです。
とんじんち【貪瞋痴・貪瞋癡】
三つの根本的な煩悩(ぼんのう)。
すなわち、
対象を求める貪欲、
怒りである瞋恚、
真理を見失う愚痴のこと。三毒。
貪欲とは、欲の心のことです。
私たちは、出世したい、素敵な恋人と結婚したい、いい人と思われたいなど、幸せになるための色々な欲を持って生きています。
しかし、そんな欲は満たされることもありますが、そうでないときもあります。
むしろ、思い通りにならないことの方が多いですね。
今回ご紹介した歌詞で表されている恋愛の欲求は、欲の中でも特に「色欲」や「愛欲」と呼ばれます。
恋愛が実れば（色欲・愛欲が満たされれば）満足しますが、上手くいかなければ（色欲が阻害されると）、この男性のように、怒りの心（瞋恚）が現れます。
そして、怒りの矛先を向ける相手が、自分より立場の強い相手であったり、また、どこにも怒りをぶつける場がないと、ねたみ・そねみの嫉妬心（愚痴）が沸き起こるのです。
手に入れたい、叶えたいと強く思えば思うほど、満たされないとき、心中穏やかではいられません。
“こんなことを思ってはいけない”とわかっていても、他人の幸せが妬ましく、憎らしい気持ちになってしまいます。
しかし…、そんな醜い心を誰にも打ち明けることもできず、自分の中に押し込め隠して、何とか紛らわして頑張っています。
そんなどこにも向けられない、やりきれない心を直接的に歌っているこの曲は、逆境に陥っている人にとって、自分の苦しみを代弁してくれているようで、多くの人の共感を得たのでしょう。
それだけ、もんもんと「愚痴」の心に悩まされている人が多いのですね。
“愚痴”の心のままでは幸せになれない
この記事を読まれているあなたも、「愚痴」の心に毒されている自分自身に、嫌気がさした経験があるかもしれません。
嫉妬していた相手の不幸を見ると、不謹慎ながらもニヤッとしてしまう。「自分の心ながら、醜いな」と感じます。
相手が不幸になるのをハンカチをかじりならがひたすら待っている。そんな「愚痴」の心のままでいて、努力を怠れば、自分自身はまったく幸せになれません。むしろ、自分の醜さで、もっと苦しむことになります。
一度陥るとなかなか抜けられない負のループ。
できるだけ早く、心の傷を癒してあげるためにも、愚痴の心に捉われないで過ごせるように、自分の心を見つめていきたいですね。
※歌詞翻訳：YURA
一部意訳しているところがあります。ご了承ください。
