“ヒプノシスマイク“通称「ヒプマイ」はキングレコード EVIL LINE RECORDSが2017年に世に送り出した音楽原作キャラクターラッププロジェクト。
男性声優18名(2020年1月現在)がキャラクターに扮してラップを行うプロジェクトで、アニメや声優ファンだけにとどまらず幅広い層から支持されています。
大ヒットを受け、コミカライズや舞台化、そして2020年にはゲーム版『ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-』のリリース、そしてアニメ化が予定されています。
筆者は周りの友人にリリース直後からの古参「ヒプマイ」ファンもおり、以前から知っている人気ジャンルでしたが、ラップやヒップホップといったジャンルは完全な初心者でした。
そのため中々聴く勇気がありませんでしたが、最近ご厚意でCDを貸して下さった方がおり、一通り聴いてみたらあっという間に沼の底に。
「ヒプノシスマイク」にはイケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュク、ナゴヤ、オオサカといった現存する日本の地域に相応する「ディビジョン」を代表する3人がチームを結成。
ディビジョンの代表チーム同士が人の交感神経・副交感神経に作用する「ヒプノシスマイク」でラップバトルをする展開になっています。
「根っからの大阪人やし沼るならオオサカ・ディビジョンかな」と筆者は思っていたのですが、ファンになったのは、「ヨコハマ・ディビジョン」の「MAD TRIGGER CREW」でした。
関東の友人から「生粋の大阪人なのに何でヨコハマ!?」と聞かれることも多い今日この頃です。
「MAD TRIGGER CREW -Before The 2nd D.R.B-」のリリースが来週29日に控え、今まさに旬なチームといえる「MAD TRIGGER CREW」。
今回は友人からの疑問にもお答えするため(笑)筆者がヨコハマ・ディビジョン「MAD TRIGGER CREW」にハマったきっかけの曲『シノギ(Dead Pools)』の魅力についてお伝えしたいと思います。
![「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」キャラクターソングCD2「BAYSIDE M.T.C」 ヨコハマ・ディビジョン「MAD TRIGGER CREW」](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61C6M%2BqrxXL.jpg)
『シノギ(Dead Pools)』の本当の魅力は、ハマればハマるほど深く聞こえる歌詞
この街で生き抜いて everyday ドデカいシノギをあげる
Cash Rules 全てを MY HOOD で転がす
ハマにハマっちまいな
ハマにハマれ…
なみなみに注がれた欲望のプール
MAD TRIGGER CREW が全て飲み干す
「ハマにハマれ」という何かの勧誘のようなフレーズが延々と繰り返されるサビが特徴的な『シノギ(Dead Pools)』。
ヒプマイ初のアルバムでオリコン週間デジタルアルバムチャート第1位を獲得した「Enter the Hypnosis Microphone」に収録されています。
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ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 1st FULL ALBUM「Enter the Hypnosis Microphone」
ヒプノシスマイクの楽曲は公式Channelでミュージックビデオを試聴できる楽曲も多く「気になったら気軽に履修」できるジャンルであるところも魅力的。
本コラムで紹介する『シノギ(Dead Pools)』も公式チャンネルで配信されていますので、興味を持たれた方は是非一度聴いてみてください。
『シノギ(Dead Pools)』の「シノギ」には複数の意味がありますが、MAD TRIGGER CREW(以下略称であるMTCと表記)のリーダーはヤクザである碧棺左馬刻ですので、暴力団関係者が収入を得るための手段という意味で使われる「シノギ」だと思われます。
主に暴力団関係の団体・人物が収入を得るために使う手段であり、港湾業務や興行の元締めといった合法手段もあったが、たいていの場合、用心棒、賭博、違法薬物密売、売春斡旋、ノミ屋・ダフ屋、闇金融、詐欺集団の元締めなど、違法手段のものが多い。
タイトルの通り『シノギ(Dead Pools)』は「クールな殺し屋」と自称するMTCのイメージ通りの楽曲。
筆者は元々、3番手・毒島メイソン理鶯の声優・神尾晋一郎さんのお声が大好きなのですが、理鶯の美声で繰り返される「ハマにハマれ」というリリックの中毒性に一目惚れ(一耳惚れ?)してしまいました。
ミュージックビデオも車中のフロントガラスから望むみなとみらいの曇り空に、MTCのカットインがテンポ良く入る演出で、アンダーグラウンドな世界に生きるMTCの姿が全開に伝わってくる作品になっています。
『シノギ(Dead Pools)』だけでなく、MTCの楽曲は筆者のような初心者でも入りやすい形で、ギャングスタ・ラップの魅力が込められています。
MTCのリーダー・碧棺左馬刻のソロ曲を手がけられたサイプレス上野さんはTOKYO FMの番組「ヒプノシスRADIO supported by Spotify」でギャングスタ・ラップとしてのMTCの魅力をこのように語られています。
矢島:その(サイプレス上野さんが手掛けられた)「G anthem of Y-CITY」なんですけども、 この “G” っていうのは?
上野:これは「ギャングスター」ですよね。
ギャングスターっていうのは、いわゆる不良であり、ほんとに手の付けられないヤツらみたいな。
けど、仲間とか家族は、めちゃくちゃ大事にする、
ほんとそこって、例えば俺みたいに、 普通に生きてきて、普通にラップしてる人間でも同じ気持ちって持ってるし、
ギャングスターの強さと優しさに触れると、、、。
あれじゃないですか、すげぇ、ヤバい不良が、濡れた子犬を抱えてるみたいな、超良いじゃないですか!
そういう感じ(笑)
矢島:俺には、お前しかいねぇみたいな。
『シノギ(Dead Pools)』でもMTCが誇るギャングスタ・ラップの魅力は全面に出ており、リーダー碧棺左馬刻のパートでの
メンツと家族はぜってえ守る
俺が左馬刻様だ ばぁろう
というフレーズや、2番手・入間銃兎の
お前らとならば毒も皿まで飲み込めるさ
という歌詞からも、ギャングという裏世界の王のような存在・碧棺左馬刻と無二の仲間である入間銃兎、毒島メイソン理鶯が互いを心から誇りに思っていることが伝わってきます。
先週Trailerが公開された新曲「Uncrushable」では
ルールが通用しない 本当のギャングスターは俺だけだ
と入間銃兎も歌っており、左馬刻様だけでなくMTC自体がヒプマイにおけるギャングスター・ラップの象徴なのかもしれません。
クールな殺し屋?幼女?様々な魅力を持つヨコハマ・ディビジョン「MAD TRIGGER CREW」
『シノギ(Dead Pools)』ではそんなギャングスター・ラップとしてのMTCの魅力が全面的に描かれていますが、彼らの魅力はそれだけに留まりません。
メンバー個人の楽曲やドラマパート、さらに近年リリースされているコミカライズ版を鑑賞すると、初見のイメージとは全く異なる3人の魅力が見えてきます。
例えばリーダーの左馬刻様はヨコハマを仕切るヤクザの若頭という、実世界にいたらかなり怖い職種の人ですが、個人楽曲「G anthem of Y-CITY」では
でも大事な事忘れちゃいけない 母と妹には送るリスペクト
しない神頼み 気にしないセオリー 忘れない母のお守り
という一節があり、妹と母親を心から敬愛する部分が垣間見え、ヤクザになったのも実は妹のためという過去があります。
また銃兎も目的のために手段を選ばない人間で、現役の警官でありながらヤクザの左馬刻と協力関係にある危険人物ですが、MTCでは3人のまとめ役。
「ヒプノシスRADIO supported by Spotify」では
「先週は左馬刻が色々と身勝手な発言をしたようで申し訳ありませんでした」
「来週は理鶯が皆さんのお悩みに答えます。
彼も人生経験は豊富ですから左馬刻よりはまともに答える…はず…だと私は信じていますが…いや…かなり心配だ…ちゃんと放送になるのか…?」
とお前はオカンか?と思わず思ってしまう、心温まるコメントをしています。
また左馬刻様の前では銃兎は素が出て喧嘩を始めてしまうこともあり、外面とMTCの仲間に見せる素顔とのギャップも魅力的です。
理鶯も191cmのハーフ顔で軍服という外見でありながら、天然キャラを通り越して大自然のようなおおらかな性格。
ドラマパートで急に飛び出した「いやしんぼさんだな」の重低音ボイスにひっくり返ったのは筆者だけではないでしょう。
理鶯は実はオオコウモリやカミキリムシ、タランチュラ等いわゆるゲテモノ料理を絶品に仕上げる才能の持ち主でもあります。
実はゲテモノが大の苦手な左馬刻様と銃兎が、理鶯を傷つけないように必死になる場面も、ドラマパートで描かれていました。
ファンの間で「ハマは幼女」と言われていると聞いた時、最初「どこが!?」と思ったのですが、今は完全に同意です。
ヤクザ・組対の警察官・元軍人という一見ちぐはぐな身分の3人の出会いは明らかになっていない部分も多く、まだまだ謎が多いMTCですが、その絆はファン全員が認める強さ。
3人の心を結びつけたものは一体何だったのでしょう。
『シノギ(Dead Pools)』には、MTCの絆がここまで深いものになった理由が隠れているような気がします。
「仲良しハマ」の理由は、左馬刻・銃兎・理鶯が抱える壮絶な過去と苦しみ(※コミカライズ版ネタバレ注意)
先程もご紹介した『G anthem of Y-CITY』には
俺たちに 裏切りは無しだ
という銃兎と理鶯への絶対的な信頼や
道外れた日常が通常 生き抜くためにはしない躊躇
だが出来てたみたいだ フザけた仲間
といった、かけがえのない仲間として二人を大切に思っていることが分かるリリックが印象的です。
ドラマパート『Me Against The World』ではラップバトルでの共闘に感謝する左馬刻に理鶯が
「感謝は不要。小官達は、運命を共にする共同体だからな」
と言う場面もあり、MTCの強い結束感が伝わってきます。
MTCは数年来の付き合いと思われる左馬刻様と銃兎の二人に、残り一枠を埋める形で理鶯が加入したチームです。
明確な期間は明らかになっていませんが、おそらく結成されてから間もないはずのMTC3人の絆を、ここまで深くしたものは何だったのでしょう。
今後明らかになるのを期待ではありますが、『シノギ(Dead Pools)』の歌詞にもその理由は現れているように思います。
『シノギ(Dead Pools)』から分かるのは、MTCの3人が持つ人生観の共通性です。
先程ご紹介した『G anthem of Y-CITY』には
母が親父殺して 自殺かまして 大事な妹と暮らして
とあり、左馬刻様が辿ってきた壮絶な半生が垣間見えます。
またドラマパート『Some Bady Gotta Do It』では銃兎の壮絶な過去も明らかに。
「私の両親は、善人でした。コツコツ真面目に働き、誰にも迷惑をかけていませんでした。
しかしある日、錯乱した薬物中毒者の車に轢かれ、他界しました。」
「私は、薬物を根絶したいと思い、警察官になりました。
しかし……そこでも、薬物関連で大事な人を亡くしました。」
「私の先輩……いや友人だな。
彼は正義感が強く、曲がったことが嫌いな、警察官の鑑のような人物でした。公私ともに仲が良く、警察官のイロハを私に教えてくれました。
そんな彼も……薬物が原因で命を落としました。
仕事をし続ける内に精神を病み、私の知らないところで、薬物に手を出していたようです」
「国の正当な罰では生温い……私自らの手で裁く。
それが残された私にできる、彼らへの弔いです」
(ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 1st FULL ALBUM「Enter the Hypnosis Microphone」ドラマパート『Some Bady Gotta Do It』より)
そして理鶯もまた、コミカライズ版で激動の半生が明らかになります。
理鶯「少佐殿は小官が尊敬する上官だった
しかし小官たちのために特別刑務所に入ったのだ」
左馬刻「へえ…それは一体どういう…」
銃兎「左馬刻 あまり詮索してやるなよ
人には触れられたくない過去があるだろう
俺にもおまえにもな」
左馬刻「…ああ そーだな」
理鶯「銃兎 気を遣ってもらってすまないな
だが我々は仲間だ 隠すことなんて何も無いさ
(中略)
小官たちが所属していた部隊は
軍の様々な場所から集められ特殊な任務を受けていた
その存在は秘匿されていたので小官の所属は海軍のままだったがな」
(ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side B.B & M.T.C② verse.6 より)
理鶯はただの海軍ではなく、秘密裏に特命を負って活動する特殊掃滅作戦部隊の一員でした。
この後のエピソードで登場するかつての仲間・頸木(くびき)との会話では
頸木「我々が掲げていた正義は
褒められたものではなかったがな」
理鶯「民間人の恒久的な平和を維持するためとはいえ
汚れ仕事ではあったな
頸木「私たちがギリギリのところで人間であれたのは
少佐殿の人柄のおかげだ」
(ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side B.B & M.T.C② verse.7 より)
と語り合っており、人としての限界も問われる重い任務に身を投じる自分を「人間」であれるよう支えてくれた存在が上司である五百雀少佐でした。
クーデター後、少佐は特別刑務所へ投獄。
理鶯は五百雀少佐と、少佐や仲間と背負ってきた使命を軍隊ごと解体され、生きがいともいえる大切な存在を全て失います。
公式サイトの理鶯のプロフィールには
そのために死ねる何かを見つけていない人間は、
生きるのにふさわしくない
というフレーズがあり、彼の人生観を表していると思われます。
理鶯にとっての「そのために死ねる何か」はまだ明言されていません。
しかしH歴以前の理鶯にとってそれが軍での使命だったとしたら。
まさに理鶯にとってH歴の到来は「そのために死ねる何か」を奪われたも同然ではないでしょうか。
幼くして両親を失い、最愛の妹のために裏社会に飛び込んだ左馬刻。
大切な存在を自分から奪い去った薬物の殲滅に人生をかける銃兎。
生きがいともいえる大きな使命と、人生の師ともいえる偉大な存在を奪われた理鶯。
男らしくて強そうに見える3人には、実は底知れぬ深い苦悩が横たわっています。
この街で生き抜いて everyday ドデカいシノギをあげる
『シノギ(Dead Pools)』の歌詞は、「生きて」ではなく「生き抜いて」となっています。
ただ漫然と「生きて」いるだけでは生き延びることなどできなかった、3人の人生は一日一日が「生き抜く」ものだったのではないでしょうか。
来週リリースされる新曲「2DIE4」や「Uncrushable」でも互いへの強い信頼が感じられるMTCの3人。
3人の固い絆の裏には、一言では語れない深い人生の苦しみという共通項があったのではないでしょうか。
「Dead Pools」の意味を考察。MTCが教えてくれるのは人生という苦しみの海
タイトル『シノギ(Dead Pools)』のカッコ書きになっている(Dead Pools)は(ラップ初心者の筆者は恥ずかしながら後から知ったのですが)オマージュ元の楽曲から来ているそうです。
2012年に発表されたKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)さんの楽曲「Swimming Pools(Drank)」をオマージュしたのが『シノギ(Dead Pools)』だと言われており、原曲が持つ雰囲気をそのまま残しながら、歌詞はMTCの人生観を反映する形で昇華されています。
名曲へのリスペクトを大切にしつつ、キャラクターラッププロジェクトという企画ならではの魅力を加えたのが『シノギ(Dead Pools)』といえるでしょう。
オマージュ元の「Swimming Pools(Drank)」は(Drank)とあるように、プールの水を大量の飲酒に見立てた歌詞になっています。
では『シノギ(Dead Pools)』における「Pools」は何の比喩なのでしょうか。
「ドデカいシノギをあげる」という歌詞からは、死と隣合わせの裏社会で、MTCが広げてきたシノギの広さや深さを表しているのが「Dead Pools」のように思えます。
しかし筆者は「Pools」が複数形であるところが非常に気になりました。
オマージュ元の「Swimming Pools」を大切に、タイトルも引用しているという理由は勿論ですが、MTCの生き様を知ると「Pools」が複数形なのは更に深い意味があるようにも思えます。
「Swimming Pools」はアメリカ合衆国の著名なアーティストにより生まれた作品ですが、一方で『シノギ(Dead Pools)』は未来の日本を舞台にした世界観で、日本で生まれた作品です。
日本には古くから仏教が根付いており、現代に生まれた文学や漫画、そして音楽には自然と仏教思想が影響している作品が多く、日本ならではなその魅力が評価されてきました。
仏教には「生死一如」という言葉があり、生死とは生と死、「一如」とは表裏一体という意味です。
① 〘仏〙 宇宙に遍在する根源的実体である真如は、現れ方はいろいろであっても根本は一であるということ。
②一体であること。不可分であること。 「物心-」
(大辞林 第三版)
生と死は表裏一体であり、私たちが生きるこの世界は生と死が隣り合わせだと教えられています。
筆者が住んでいるマンションには「104」というような「4」がつく部屋番号がありません。
4階に病室が無い病院など「死」を連想させるものを忌み嫌うことがよくありますが、それは私たちが「死」を考えることに忌避感を覚えるからです。
死にたくないから病気になれば病院に行きますし、死に至る病を防ぐため健康診断も受けます。
私たちは皆、「死」をなるべく先延ばしにしたい、いずれ死ぬと頭では分かっていても、その時が来るまで考えたくないと心の底では思っているのです。
しかし仏教では、私たちが生きているこの一日一日が「死」と隣合わせだと説かれています。
いま健康に毎日幸せに過ごしていても、大災害が来るかもしれないし、交通事故に巻き込まれるかもしれない。
私たちはなるべく見ないように考えないようにしているだけで、実際は死と隣合わせで生きているのが本当の姿なのです。
家族のために暴力団の世界に飛び込んだ左馬刻様も、警察官という仕事に加え薬物撲滅のために裏社会で暗躍してきた銃兎も、民間人の平和の為に危険な特殊任務に身を投じ、軍解体後はサバイバル生活をしている理鶯も同じ。
毎日が死と隣合わせで、明日自分の命があるかどうか分からない日々を送っています。
生死一如の人生を「生き抜いて」きたのが、MTCとして集った3人なのです。
さらに私たち人間が生きるこの世界を、仏教では「生死の苦海」といいます。
輪廻転生(りんねてんしょう)の限りない苦しみを、海にたとえていう語。欲界・色界・無色界の三界(さんがい)をさす。生死の海。
逃れたい「死」と常に隣合わせで不安に満ちている、底しれぬ海のような世界。
日頃私たちが目を背けている、人生の実体を海にたとえた言葉です。
まさに私たち人間が生きる世界は「Dead Pools」。
一人一人の人生は、それぞれ自分にしか分からない苦しみで満ちている海だから「Dead Pool」ではなく「Dead Pools」なのかもしれません。
そして大切なことは、「生死の苦海」とは「人生は苦しみに満ちているから一生懸命生きても無駄」ということを意味する言葉ではありません。
仏教では私たちの生きる毎日が生死の苦海だと知ることが、後悔しない人生の第一歩だと教えられています。
生と死が表裏一体で不安に満ちた「Dead Pools」であることを知り、見つめていくことが、悔いなき「死」を迎えるために必要なことなのです。
来週リリースされる理鶯の新曲「2DIE4」にも「DIE」という「死」を意味するものがタイトルに入っています。
MTCの生き様が込められた『シノギ(Dead Pools)』。
彼らの過去と現在から分かるのは、私たちの生と表裏一体である「死」を見つめる大切さ。
平穏な毎日を暮らす私たちが気づいていない、人生において大切なことを教えてくれているのかもしれません。