2007年の東京マラソンを皮切りに、日本ではランニングブームが到来。いまや、日本のランナー人口は1000万人とも言われています。
東京マラソンでブーム再燃。日本のランニング人口は1000万人を突破- ITmedia ビジネスオンライン
そのうち、日常的にランニングをしている人に絞ると500万人程度ですが、それでも日本人の24人に1人がランニングを日常的に行っているということで、もはやブームを超えて文化として確立したのではないかという声もあります。
ランニングが単なるブームで終わらない理由として、続けることで得られる効果が豊富であることが挙げられます。「痩せるためだけにランニングをはじめたが、肩こりが治ったり、肌がきれいになったりといい事ずくめ。ランニングをしない人生なんてもったいない」といった声も多く、ランニングひとつで色々なメリットを享受しているという人も多いようです。
ビジネスの世界でも、日常的にランニングを行っているという著名人は多く、iPS細胞で一躍有名になった山中伸弥・京都大教授や、作家の村上春樹さんも、ランニングを趣味としていることで有名です。
ノーベル賞・山中教授のモットーは「VWとジョギング」:PRESIDENT Online – プレジデント
村上春樹というビジネスアスリート「もし忙しいからというだけでランニングをやめたら、間違いなく一生走れなくなってしまう。」 | リーディング&カンパニー株式会社
忙しい仕事の合間にランニングを続けているからには、それ相応の理由があるわけですが、多くの人は「走る」=「苦しい」という図式を持ち出し、「苦痛に耐えることで忍耐力が培われ、仕事でも最後まであきらめずに粘り強く取り組めるようになったのではないか」と分析すると思います。
しかし、それはランニングがもたらす効果のほんの一側面でしかなく、実際にはもっと強力な多くのメリットを享受していると思われます。ここからは、私の個人的な経験を踏まえて、トップビジネスマンがランニングを愛する理由に迫ってみます。
フルマラソンは人生の縮図
フルマラソンに深入りしなかった人でも、この言葉には異論はないのではないかと思います。しかし、この言葉ひとつとっても、様々な解釈が可能です。
ふつうは「最後まで何が起こるかわからない」「最後まであきらめない姿勢が大事」「後先考えず闇雲に突っ走ると後で痛い目を見る」などと受け取れるでしょう。しかし、ここで私があえて一つ強調するならば、「それまで準備してきた結果が残酷なほど正直に現れる」ということがいえます。
フルマラソンの42.195kmという距離は、勢いと根性だけで突破しようとして乗り切れる距離ではありません。マラソンの起源は「マラトンの戦い」で勝利したことを伝えるために、フェイディピデスという兵士がマラトンからアテネまでを走り、アテネに着くと「喜べ、勝った」と叫び、息絶えた、という故事に基づいてます。
このとき、実際のマラトン~アテネ間は36.75kmしかなく、現在の42.195kmに落ち着いたのは、1908年のロンドンオリンピックからだそうです。つまり、42.195kmという距離は、生身の人間がトレーニングなし、給水・給食なしで走り抜いたら、あっさり命を落としかねない距離なのです。
そうした距離を危なげなく走りきるには、徹底したコースの研究と、徹底した自己管理が求められます。もし思うように走りきれなかったら、それまでの準備が足りなかったのだ、ということを如実に突きつけられるのがフルマラソンなのです。
「『根性』や『やる気』などといった精神論が、いざという局面ではこんなにも役に立たないものなのか」と痛切に思い知るのがマラソンなのです。
マラソンを通じて知らされる因果律
マラソンを通じて知らされるのが、仏教で説かれる因果律です。因果律とは、原因に応じた結果が必ず返ってくる、ということです。
原因に応じた結果が必ず返ってくることを「因果応報」ともいわれます。日常で使うこともあるかもしれませんが、元々は仏教の言葉です。
もと仏教語。行為の善悪に応じて、その報いがあること。現在では悪いほうに用いられることが多い。
上記にあるように、今では悪い結果が返ってきたときにのみ因果応報が使われていますが、善い結果が来ても因果応報です。自分が善い行いをすれば、自分が幸せに恵まれ、悪い行いをすれば、自分に不幸が返ってきて苦しむ、ということなのです。
徹底した自己管理によって良い走りができるのも、準備不足で思うように走れないのも、すべて因果律の現れです。
この因果律、因果応報がよくわかると「悪いことをやめて、善いことをしよう」という心が起きてきます。
ここで問題になるのが「では、どんな行いが善い行いなのか」ということではないでしょうか。
マラソン・ランニングは智慧の実践につながる
そこで仏教では、代表的な善い行いを6つにまとめて教えられています。これを六波羅密(ろっぱらみつ)といい、その中に「智慧」という善行が説かれています。
マラソンを通じて自己と向き合うことは、その「智慧」に相当します。「智慧」とは先を見る力です。フルマラソンのような長い距離のレースは、先の展開を予測して常に今の自己を律していかなければ、まともに走りきることはできません。
たとえいま調子がよくても、終盤のことを考えると、ペースを上げたくなる気持ちを抑えて、省エネ走りに徹することが求められます。たとえいまのどが渇いていなくても、終盤のことを考えれば、強制的に水分を摂ることも必要です。
マラソン本番でよい走りをしようと思ったら、普段の練習の質と量を確保する必要があります。練習時間を確保するためには、1日のやるべきことの優先順位や手順を再点検して、質を落とさずに作業のスピードを上げることが求められます。整理整頓を心がけ、物を探すなどといった些細なことで余計な時間を使わないようにと、日常の細かい動作も洗練されてきます。
練習時間を確保できても、練習後は体が疲れますので、ケアする時間も必要です。疲れを取る時間はいつでもよいというわけではなく、疲れが取れやすいゴールデンタイムというものがあります。そこを逃すと疲れが残りますので、走る時間とケアする時間のセットとして、まとまった時間を確保する工夫が求められます。
そう考えると、生活の質がそのまま走りの質につながり、質の高い走りができることが、自己を律してビジネスでも結果を出せることの証明になります。
ランニングが支持される理由
一流のビジネスマンの間でランニングが支持される理由は、彼らが知らず知らずのうちに走ることを通じて六波羅密を実践し、成功を手に入れているからだと思います。
ランニングを通じて智慧を徹底し、日々の生活の質を向上していけば、六波羅密の実践につながり、次々と善い結果に恵まれることでしょう。ぜひ実践していきたいですね。
こちらの記事もおすすめです