3月にアニメ本放送は終了したものの、関連商品やアプリゲームが次々に発表され、まだまだファンの減る勢いの見えない「おそ松さん」。
5月8日に幕張メッセで開催される「おそ松さんスペシャルイベント」は、チケットがあっという間に完売したことを受け、4月19日に追加席の受付が開始、全国の映画館でライブビューイングも決定し、松ロスに苦しむファンの大きな期待がかかっています。
そんな人気の衰える気配のないアニメ「おそ松さん」から学べることについて、今回もお伝えしていきます。
※シリーズ第1回はこちら(この記事だけでも読めます)↓
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「おそ松さん」の六つ子たちは作中で、人間が持つ「煩悩」を分かりやすく教えてくれています。
「おそ松さんからの仏教」第4回では、煩悩の中でも「欲」の心についてよ~く分かる第7話の「トド松と5人の悪魔」をご紹介、六つ子たちの心から「欲」の本質を見てきました。
※第4回の記事はこちら
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今回はその第7話から「怒り」の心について、六つ子たちの言動を通じてご紹介していきます。
「怒り」は、欲が妨げられて出てくる
「怒り」といえば「欲」の心と同じく煩悩としてイメージされやすいものかと思います。
仏教では、欲がさまたげられると出てくるのが怒りの心、と教えられています。
兄たちに黙って、スタバァコーヒーでバイトを始めた末っ子トド松はある日、バイト仲間の可愛い女の子に念願だった合コンに誘われます。
しかしトド松には女の子にどうしても知られたくないことがありました。それは自分には六つ子の兄がいて、全員ニートであるということ。
しかし何の因果か、ちょうどその日に、5人の兄がスタバァコーヒーに来てしまいます。
女の子たちに兄たちの存在を知られてしまったため、渋々店に入れることにしたトド松ですが、この後自分の「名誉欲(自分のことを良く思われたい、という心)」を妨げた兄たちへ、彼は怒りの矛先を向けるようになります。
キュートなトド松を“トッティ顔”へ変貌させた「怒り」
まず何といってもこのエピソードを語る上で外せないのは、怒りの形相「トッティ」でしょう。兄弟に対するトド松の怒りの形相があまりにインパクトが強く、「顔芸」として大人気になったのです。
ネットで話題持ちきりになり、ファンにより数々の二次創作も生み出されました。
この顔は劇中の数ある顔芸のうちでも特に強烈で印象的であり、Twitterではクソコラグランプリが開催されたり、ニコニコ動画ではMAD素材化するなど、多数の反響を呼んだ。
一松の声優である福山潤は12話総集編の副音声でこの顔芸に言及し、「アニメ史に残るいい顔」と言い残している。
第12話で副音声で出演していた一松の声優、福山潤さんも絶賛しています。
「おそ松さん」の六つ子は一卵性なので、一見みんな同じ顔に見えますが、実は見分けられる特徴があります。
中でもトド松の特徴は瞳の大きさ。彼は六つ子の中でも瞳が一番大きくキラキラしていて、キュートなルックスをしています。
そんなトド松が、兄たちへの怒りのあまり「青鬼」のような恐ろしい形相をしたことが視聴者に大きな衝撃を与えました。
「青鬼」とはニコニコ動画やYouTubeなどの動画サイトを中心に人気を博し、書籍化、映画化までしたフリーホラーゲームです。
館に閉じ込められた主人公が「青鬼」に追われるゲームであり、捕まると食い殺されてしまうというシナリオで、心臓の悪い人にはオススメできないほどの怖さがあります。
日頃キュートなトド松が、そんな怖いゲームの怪物のような顔に変貌するくらい、「怒り」は恐ろしい心なのです。
特徴的なのは、トド松が女子の前ではとっても愛らしいスマイルを作り、兄弟には恐ろしい青鬼顔を向けるところです。
自分の「名誉欲」を満たしてくれる女の子たちには可愛い笑顔、「名誉欲」をさまたげる兄たちには鬼の形相をしていることがわかります。
実際兄のチョロ松はその様子を見て
「二人いる!!ヤツの中に人格が二人!!」
と思っています。
ちなみにこの青鬼みたいな顔は、第23話「灯油」でトド松が「コタツから出たくない」という欲を邪魔されたときにも披露されていました。
欲を妨げる兄はゴキジェットで駆除!「怒り」の心の本性
私たちは怒りの感情を起こすと、親兄弟であっても、自分の欲を邪魔する相手をためらいなく心の中で切り刻んでしまいます。怒りはそれほど恐ろしい心である、と仏教で教えられているのです。
「トド松と5人の悪魔」のトド松は心の中で切り刻むどころか、言動に表します。
まずイタい兄、カラ松の頭にメニュー板を投げつけて大出血、失神させ、他の兄たちに対してもトイレの前に席を無理矢理作り、押し込めています。
さらに早く消えろと言わんばかりに兄たちに大量の殺虫剤を吹きかけていました。もう兄貴に殺意があるとしか思えません(笑)
「怒」という漢字は、心の上に「奴」と書きますが、この字が表すように、「あいつのせいで」「こいつがいるから」と自分が欲を満たす上で妨げとなる相手を消そうとする心が怒りの本質です。
このエピソードでのトド松の行動はまさに
「この兄たちさえいなければ、自分はスタバァコォヒィーで活躍できて、彼女もできるのに!」
という心の表れでしょう。
第22話「希望の星、トド松」でも
「この際はっきり言っとくけど!!僕の足を引っ張ることは二度としないで!!
僕たち六つ子は同世代カースト圧倒的最底辺かつ、暗黒大魔界クソ闇地獄カーストの住人なんだ!
その中で唯一、童貞卒業の可能性がまだ、ちょこっと有るのが僕なんだよ!?
なのに、お前たちときたらいつも邪魔をする!!」
と「お前たちは邪魔」という本心を打ち明けていました。
言われた兄たちはショックで固まっていましたが・・・
そんなこの一言からも「この兄たちさえいなければ・・・」という怒りの心がこのときトド松の胸を占めていたことが分かります。
さらにこのあと、女性店員の口から、トド松は慶應の学生と嘘をついて働いていたことが発覚します。
スタバァで働き、女の子とお近づきになりたいという欲を満たすために嘘までついていたトド松。どれだけ彼がスタバァで地位を築くため、必死だったかも分かります。
本当はニートなのに、学歴詐称してまでやっと就職したバイト先で、「女の子に合コンに誘われる」という最高の栄誉を邪魔された怒りは、確かに彼のキュートな顔を鬼に変えてしまうほど強いものだったのかもしれません。
「怒り」の心は不幸の輪を広げていく
このエピソードは「トド松と5人の悪魔」という題名ですが、5人の兄はトド松を苦しめようとしてスタバァコォヒィーに来たのではありませんでした。
怒ったトド松に邪魔者扱いされ、酷い仕打ちをされたことにより、おそ松たちは何とかして弟を不幸に陥れてやろうと、「悪魔」のようなことをし始めます。
実は、怒りに任せて兄に酷い仕打ちをしたトド松自身の行動こそが、5人の兄たちを「悪魔たち」に変えたきっかけでした。
「悪魔たち」を生んだのは他でもないトド松自身の「怒り」の心。
結果的に他の店員やお客さんまでトラブルに巻き込むほどの大事になり、トド松は悲惨な目に遭ってしまいます。
まさしく、怒りの心は不幸の輪を広げるのです。
「怒り」の心をどう抑えるか日々悩んでいる私たち
仏教の言葉「煩悩」は、私たち人間を煩わせ、悩ませるものという意味があります。
その煩悩の一つである「怒り」は、私たちも、周囲の人も不幸にしてしまう心ということが「トド松と5人の悪魔」を見ているとよく分かります。
ただ、だからといって、怒りの心を内に溜め込めばそれは「ストレス」になります。
ストレスは万病のもと。
外に出しても、内に出しても毒になる心が怒りであり、まさしく私たちを悩ませ、煩わせる煩悩です。
ストレス社会に生きる私たち現代人はどうにかして、この「怒り」という心とうまく付き合えないか、毎日苦心しています。
近年、アンガーマネジメントという心理技術にも注目が集まっており、日本アンガーマネジメント協会という一般社団法人もあるほどです。
専門家が知識を集結して「怒り」の心のコントロール方法を構築するほど、私たちは怒りの心との付き合い方に日々苦しんでいることが分かります。
なかなか「イラッとすることが一日もない日」というのはないのではないでしょうか。
朝は満員電車で足を踏まれてイラッ、仕事中は商談がうまくいかずイラッ、気になるあの人からのLINEが既読スルーでイラッ・・・
一日でいいからイラッとしない日を送ってみたくなってしまいますね。
さて次回は、他のエピソードを通してさらに六つ子たちの「怒り」の心を見つめ、「怒り」の心とどう向き合えば良いのかを解説していきます。