「刀剣乱舞-ONLINE-」のリリースから2年が経ちました。
ufotableによる『活撃 刀剣乱舞』が今年7月から放送。
さらに今月5日には、昨年ヒットしたアニメ『刀剣乱舞 花丸』続編の製作決定が発表され、さらに注目を集めています。
刀が人間の形を得た「刀剣男士」たち。
ブラウザゲームの激戦時代に2年以上も愛されてきたのはなぜなのか。
今回は『刀剣乱舞-本丸博-』のポスターも飾っている「三日月宗近(みかづきむねちか)」の魅力から、現代社会を生きる女子たちが刀剣男士たちに惹かれる理由を考察。
顔形がカッコいいだけじゃない、刀剣男士の内なる魅力を解説していきます。
愛称は“おじいちゃん”!?三日月宗近がおじいちゃんと呼ばれる理由
三日月宗近のファンたちの間での愛称は「おじいちゃん」。
ですが、三日月宗近の姿はどう見ても20代です。
三日月宗近が「おじいちゃん」と呼ばれる理由は、本人の自己紹介から分かります。
俺の名は三日月宗近。
まあ、天下五剣の一つにして、一番美しいともいうな。
十一世紀の末に生まれた。
ようするにまぁ、じじいさ。ははは
そう、三日月宗近は非常に古い時代に生まれた刀なので自他共に認める「じじい」なのです。
実際の人間にはありえないですが、見かけは20代、中身は1000歳くらいという訳ですね。
そして外見的な特徴は、刀本体の特徴を踏襲しています。
平安時代の刀工・三条宗近の作で、刀身に鎬と反りのある形式の日本刀としてはもっとも古いものの一つである。
「天下五剣」の中でも最も美しいとも評され、「名物中の名物」とも呼び慣わされた。
日本刀の中でも特に名刀と言われる「天下五剣」で、国宝指定もされている三日月宗近。それを受けて「刀剣乱舞」でも非常に美しい容姿で描かれ、ステータスは全刀剣男士の中で最も高く、まさにオールマイティー。
アプリ版「刀剣乱舞-ONLINE– Pocket」のアイコンも飾る、まさに「刀剣乱舞」の顔ともいえます。
非常に入手確率も低いため、三日月宗近をお迎えしたくてもできないプレイヤー(通称・じじい難民)は全国に多くいるといわれています。
筆者も未だお迎えできない難民の一人です。
年を食ってるだけではないぞ?「刀剣乱舞 花丸」で描かれた三日月宗近の本当の強さ
11世紀に生まれた出自からか、平安時代の貴族のような優雅さと、マイペースさを持つ三日月宗近。
独特のゆったりとした話し方や、おおらかなキャラクターに心を射抜かれたファンも多いはず。
昨年冬放送されたアニメ「刀剣乱舞 花丸」でも三日月宗近の魅力は描かれていました。
原作ゲームと同じく、三日月宗近は本丸(刀剣男士たちが集まって生活する本拠地)の主に待ち望まれた名刀。
顕現したと聞いて、本丸にいた刀剣男士たちは浮足立ちますが、中には三日月宗近が現れることで自分は愛されなくなるのではないかと不安を覚える刀剣男士もいました。
それは加州清光。
加州清光はプレイヤーが最初に選択することのできる「初期刀」の一つであり、アニメでも一番初めに主に召喚された古株です。
当然、主からの出陣の命も最も多く受けていました。
自分が一番重宝されていた本丸に突然やってきて、注目を集める三日月宗近の存在は、清光にとってはまさに目の上のたんこぶでしょう。
戦に出てもマイペースで飄々とした三日月宗近の態度に、清光はあからさまにイライラ。
気持ちの乱れから戦況を正確に把握できず、仲間たちを負傷させてしまいました。
はっはっはっは……
笑っている場合では無いか。
ピンチの状況で、三日月宗近は「真剣必殺」で周囲の敵を一掃します。
失敗した上、手柄を三日月宗近に取られ、清光はすっかり自信喪失。帰還後、弱音を同室の仲間である大和守安定にこぼしていました。
五虎退を守れなかった。それに、三日月まであんな傷を負って・・・これが今の俺の実力。
主はそれを俺に言いたかったんだ。
あ~あ、嫌われちゃったかな
そこへ現れた三日月宗近に思いもよらぬ言葉を清光はかけられます。
三日月宗近「それは違うぞ」
大和守安定「三日月さん、手入(治療のこと)終わったんですね」
三日月宗近「うん、世話されてきた。隣、いいか?」
加州清光「・・・・ああ」
三日月宗近「先ほど主のもとへ戦績報告に行ってきた。そこで、今回の出陣におれが選ばれた理由を聞いてきた。
それはな、おれに加州の戦いを見て欲しかったからだそうだ。」
清光「えっ・・・」
三日月「主は加州の戦い方が最も勇猛で頼りになると褒めていたぞ。愛されているな。」
清光「・・・でも俺は、五虎退も三日月も守れなかった」
三日月「加州が守ってくれたからな、俺が五虎退のところへ行けた。
俺にもしっかり見せ場を作ってくれた。じじいでも案外使い物になるなあ。
大和守にも見せたかったぞ。
俺もいつまでも足を引っ張ってはいられない。
加州、今度手合わせに付き合ってくれるか?」
主に認められ、愛されたい。
清光が一番求めるものは、主に愛されることでした。
本丸に来たばかりの三日月宗近は、自分に対してピリピリした態度をとる清光の様子から、その苦しみの原因を見抜きます。
そして「愛されているな」という清光が一番欲しい言葉をプレゼントしたのでした。
さらに外見も刀としての生も、自分の方がはるかに年上でありながら
俺もいつまでも足を引っ張ってはいられない。
加州、今度手合わせに付き合ってくれるか?
と、この本丸で一番の古株である清光のプライドを守るフォローも添えています。
三日月宗近の本当の魅力は「優しいは、強い」
会社でいうなら、転職してきたばかりの職場にいる、年下の先輩の不安を汲み取って、一番喜ぶ言葉をかけてあげられるような三日月宗近の発言。
八つ当たりも同然の態度を取られながら、イライラしている相手の心の奥にある苦しみを見抜き、楽にする言葉をかけられる……そんな「おじいちゃん」の器の広さが感じられるエピソードでした。
貧しい環境で生まれた加州清光は、外見を可愛くしていれば愛してもらえると信じ、ネイルのお手入れから戦闘服にハイヒールと、オシャレに隅から隅まで気を遣っています。
そんな清光にとって、貴族のような出で立ちの美しくて強い刀・三日月宗近は自分にないものを兼ね備えているようで、妬みの心が吹き上がってしまったのでしょう。
しかし実は三日月宗近の本当の強さは外見ではありませんでした。
清光「三日月・・・どうしたらアンタみたいに、優しくなれる?」
三日月「はははは、俺が優しいかは分からんがな。
優しいとは相手をよく見ること。
相手を見るということは強いということだ。
今まで多くのものを見てきて、俺はそう思う。
優しいは強い。」
11世紀に生まれ、多くのものを見てきた三日月宗近にとって、強さとは、周囲にいる大切な仲間の心をよく見ることのできる優しさだったのです。
簡単なようで難しい「優しいは強い」自利利他の精神
三日月宗近の、周囲の人を思いやり幸せにしたいと思う心。
これは仏教で教えられる精神で、「自利利他」といわれます。
「利他=相手を喜ばせ、幸せにする行動」が、そのまま「自利=自分の幸せ」になるという意味です。
三日月宗近は、利他の精神で周りをよくみることが、相手と自分の幸せとなり、強さになるということを実践していたのでした。
さすが「おじいちゃん」。
長年生きて多くのものを見てきたから気付いたと、三日月は語ります。
しかし実際には30代、40代と年を重ねても、自分のことで精一杯で、なかなか周囲の人に心を配れない大人がたくさんいるのではないでしょうか。
私も周りをみるのが苦手で、お世話になっている人に何か贈り物をしたいと買いに行っても
「そういえば、あの人って何をプレゼントすれば喜んでもらえるのだろう」
と売り場で考え込んでしまうことが多々…
三日月宗近のように相手を褒めるという利他行動は、日本人が苦手とすることだと指摘する専門家もいます。
日本人は、「人をほめるのが下手だ」とよくいわれています。私の周りを見るかぎり、残念ながら、本当のことのようです。
(中略)
あなたは職場の人の好きな食べ物を知っていますか?
その理由を知っていますか?
ちゃんと答えられる人は少ないのではないでしょうか。
きっとまったく答えられなくて、身近にいる人のことを、意外に知らないことに驚いたのではないでしょうか。
三日月宗近のように、1000歳になったら自然に周囲の人をよく見ることができるのかもしれませんが、私たちは1000年も生きられません。
しかし1000年の月日をみてきた三日月宗近の言葉から学ぶことはできます。
三日月宗近が語った自利利他の精神「優しいは強い」。
仲間が喜ぶ褒め言葉をかけてあげると、仲間も自分も幸せにすることができる。
そのためには
優しいとは相手をよく見ること。
相手を見るということは強いということだ
という三日月の言葉のように、大切な人の心をよく見つめることが大事です。
先ほどご紹介した専門家の方も
具体的に私がお勧めしているのはとても簡単。
「1日10秒でいいから、ほめたい相手のことを思い浮かべる」ということです。
大切なのは、相手のことを知ろうとする心。
自分のことを見て、心配してくれる人がいる――。これはすごくうれしく、頼もしいことです。
と、周囲の人をよく見ることを勧めておられます。
私たちはつい自分のことばかり考えて、周りがみえなくなりがちですが、そんな自分であることを自覚し、三日月宗近のように周囲も自分も幸せにできるステキな大人を目指したいものですね。