先日は中学生時代の友人とオンライン同窓会を行ったナッチョです。
オンライン上ではいつでもどこでも手軽に繋がる自由さがあります。
しかし最後、参加者一同が口を揃えたことは「早くみんなに会いたい」です。
大切な人に会えないことは、言葉にできないほどの悲しみがありますよね。
新型コロナウィルス緊急事宣言の解除によって外出する人が増えましたが、都内ではお店も営業されていないこともあり、気軽に人と会えない状況が続いております。
今回は人に会えない悲しみの本質を、海での実体験を元に考察していきます。
乗船命令で別れのカウントダウンが始まる
会社にもよりますが、船員の休暇は1ヶ月以上あります。
旅行に行ったり飲み歩いたり、思い思いの時間を過ごすのですが、乗船が近づくと突拍子もなく会社担当者から連絡があります。
「来週あたりの乗船を考えています。いかがですか?」
乗船可能の返答をすると、船に乗る場所や就任する役職、乗船に当たっての注意事項が記載された「乗船命令書」が自宅に届きます。
乗船命令書は船に収集される意味合いと、過酷な海に向かわなくてならない恐怖を与えることから、海運業界では通称、赤紙と呼ばれています。
赤紙を受け取った途端、休暇の終わりを生々しく感じ、健康診断や散髪、作業着の購入など乗船準備に取り掛かるのです。
家族や恋人、友人へ乗船の旨を告げ、最後に会おうと連絡を取ります。
「今日会ったら、次に会うのは半年後」という儚い気持ちで挨拶をし、最後は人知れず1人で船に向かうのです。
私は船員を7年以上続けても、別れによる悲しみに慣れることはありませんでした。
人は愛する対象を引き離されると虚無感に襲われる
船員は休暇を充実した分だけ乗船が苦になります。
例えば休暇中に子供が産まれたことがあっても乗船は必ず訪れます。
「1日でも多く、妻と子供に寄り添いたかった」と嘆く先輩船員を何度も見てきました。
悲しい想いを振り切って、陸上に残した大切な人に家庭を守ることを託し、仕事に打ち込むのです。
船員は「休み明け後の一週間は油断をしない」ことを心掛けます。
大切な人との別れによる虚無感で集中できない期間が続くので、事故が起きやすくなるためです。
安全第一に考える現場こそ、陸上を離れて集中できない精神状態を危惧します。
「つらい思いをするのなら、いっそのこと休暇中はなにもしないほうが良い」と悲観的になったこともありますが、根本的な解決には至りません。
船員とは「人と離れる虚無感」と「再会を喜ぶ充足感」を繰り返す職業なのです。
愛情は執着である事実
大切な人との別れ、愛着を込めていたものとの別れはつらいものです。
仏教では四苦八苦の中に愛別離苦という言葉があります。
人生でたいへんな苦しみの1つとして愛別離苦は教えられています。
「愛から苦しみが生まれる」ことがお釈迦様の教えです。
人は何かを愛するということは、愛する対象を「大事にしたい・失いたくない」という執着を生みます。
愛というのは執着する感情の1つなのです。
人は大切な人といつまでも一緒にいることはありません。
自分の歩む道と他人が歩む道は一緒ではないからです。
仮に「あなたとはずっと一緒」と契りを結んだとしてもお互い年齢を重ね、いつかは別れが訪れます。
別れは悲しいですが、別れた相手もまた悲しいと感じています。
仏教では2,600年以上も前から、人間として生まれ、縁ができること自体が貴重なこと教えられてきました。
私たちも「人との出会いも一生に一度」であるということを心得て、互いに誠意を尽くす心構えと感謝を持って生きたいものです。
今後も海×仏教の記事を書いていきます。
興味のある方はぜひチェックしておいて下さい。