こんにちは。夏ミカンです。
前回はテニス漫画「ベイビーステップ」のタイトルの意味についてお話ししました。
「ベイビーステップ」は今や週刊少年マガジンを代表する漫画になりました。
「ベイビーステップ」はテニス漫画ですが、漫画雑誌にはスポーツを題材にした漫画が必ずといっていいほど連載されていますよね。
そのスポーツ漫画と聞くと、大きく2パターンの主人公を思い描くのではないでしょうか。
今回はスポーツ漫画で描かれる主人公像について迫っていきます。
主人公は真面目で平凡な高校生…
2パターンの主人公像。
それは、主人公がすでにそのスポーツに関係する「特別な才能」があるのか。
もしくは、そのような才能はなく「平凡」であるか。どちらかでしょう。
「ベイビーステップ」の主人公・丸尾栄一郎は後者です。平凡というよりも、「優等生」というほうがピッタリかもしれません。成績優秀で科目の評価は全て「A」。同級生からは名前にも引っかけて「エーちゃん」と呼ばれていました。
ある日、学校からの帰り道。友人の景山と話しているとき、栄一郎は景山から思いかけず、ある質問を投げかけられます。
お前って、まさにレールの上の人生だな。
お前、それで楽しいの?
驚いた栄一郎に更に景山は続ける。
お前の人生、それで満足なわけ?
と問いかけた。
栄一郎は少し考えたあとに「わからない」と一言。苦笑いで返すのでした。
栄一郎の「わからない」という言葉に、共感を覚えるひとは多いのではないでしょうか。
「お前の人生それで満足なの?」と問われて、あなたなら、どう答えますか。
YES/NOで答えることは難しくないとは思うのですが、それに自分なりの理由を加えようとすると、「ちょっと待って」と言いたくなりませんか。
自分ならどう答えるだろうと考えてみると、「わからない」と答えた栄一郎の素直な一言がよりピッタリくるように思えてきます。
では、「わからない」ままでいいのかというと、それはそれで憂鬱な感じがしますよね。
「私の人生これで満足」という気持ちになりたい。
こう思うのは私だけでしょうか。
自分の心に気づき始める
運動不足解消のためスポーツを始めようと栄一郎は思い立ちます。
部活動よりも時間の融通が利くテニスクラブに興味を持った栄一郎が、近くのテニスクラブに見学に行くと、そこで同級生の鷹崎ナツとバッタリ。ナツに勧められるがまま、栄一郎は無料体験に参加するのですが…
ウォーミングアップをしただけで倒れてしまうのです。
自分には合わない…と帰ろうとしていたところ、ここでもまたナツに見つかってしまう。
その時、栄一郎はナツからあることを聞かされて驚きます。鷹崎ナツは、ある目標があってテニスクラブに通っていたのです。
それを聞いたあと、一人になった栄一郎は「あれ?」と、あることに気づく。
自分も子供のころは、夢があったなぁ
夢を見ていた子供のころの自分を思い出したのです。
子供のころの自分と、つい最近景山に聞かれて言葉に詰まった今の自分。
過去と現在を見つめると、過去に思い描いた自分とは違っていることに気づきます。
ここでようやく、栄一郎は周囲からの声掛けによって、自分の心に気づきはじめたのです。
仏教の「諦観」とは
仏教には「諦観(たいかん)」という言葉があります。
諦観は「あきらかに観る」ということで、真っすぐに観るということ。
では、何を明らかにみるのでしょうか。
ものごとの「本質」を明らかに観なさい、と教えられているのです。
栄一郎にとっての本質とは、自分の本心、偽りのない正直な気持ちです。
栄一郎が「あれ?」と気づいたように、私たちは、夢や希望を持ち続けたいのが本心なのに、いつの間にかその気持ちに嘘をついてしまっています。
夢や希望を言い換えると「幸せ」ということでしょう。夢や希望がかなったときは、今までの努力が報われ、充足感が得られ、幸せな気持ちになりますよね。
私たちはそんな「幸せ」を求めて生きているのですから、自分にとっての何が幸せなのか、自分の本心とは何なのか。それを明らかに観ることができなければ、後悔のない人生を送ることは難しいのではないでしょうか。
自分の本心を明らかに観て、その本心に応えてこそ、「お前の人生、それで満足なわけ?」と問われたときも「満足した人生を歩んでいる」と胸を張って言えるのですね。
「わからない」なんて曖昧な言葉はもう出てきません。
栄一郎は、ナツの目標を聞いて気づき始めました。自分の「心」に。
この瞬間から、栄一郎は一歩一歩、夢に向かって進んでいくのです。
漫画の展開もぜひご覧ください。