【ミスチル名曲考察】Mr.Children「未来」歌詞に秘められた生と死の哲学

新曲「Birthday」が、2020年3月6日(金)全国ロードショーの『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の主題歌に決定し、
LIVE DVD & Blu-ray『Mr.Children Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”』も大ヒット中のMr.Children。

結成から30年以上経ちますが、その勢いは加速する一方です。

今回は、そんなMr.Childrenの曲の中で、2005年にリリースされた「四次元 Four Dimensions」のタイトル曲である
「未来」の歌詞の本質に迫ってみます。

※Mr.Childrenについて、デビューからの詳細は下記記事にも掲載しています。

【名曲解説「NOT FOUND」】Mr.Childrenの最高傑作の歌詞に秘められた「愛憎一如」の意味を考察!

1.ミニアルバム形式でリリースされたシングル「四次元 Four Dimensions」

2005年6月29日にリリースされたシングル「四次元 Four Dimensions」。
シングルでのリリースではあるものの、以下の5曲が収録されているため、曲数を基本としたチャートでは
アルバムとしてカウントされています。実質ミニアルバム形式でのリリースです。カラオケ版の5曲目以外は
全てタイアップ曲でした。

・未来(大塚製薬「ポカリスエット」CMソング)
・and I love you(日清食品「カップヌードル “NO BORDER”」CMソング)
・ランニングハイ(東映系映画『フライ,ダディ,フライ』主題歌)
・ヨーイドン(フジテレビ系子供番組『ポンキッキーズ』・『ガチャガチャポン!』主題歌)
・ヨーイドン (instrumental)

本作品はMr.Childrenのシングル作品で唯一、シングルのタイトルと同じ曲は収録されていません。
初動売り上げは50万枚以上となり、2005年の年間シングルチャートでは3位にランクインしました。
Mr.Childrenの2000年以降における最高売上を誇ります。

カラオケバージョンも9年ぶりに収録されています。

2.収録曲「未来」とその歌詞

大塚製薬「ポカリスエット」CMソングだった「未来」は1曲目に収録されています。
本シングルの中で最も多くの方が耳にした曲ではないでしょうか。
宣伝用のミュージック・ビデオには「ポカリスエット」のCMにも出演していた綾瀬
はるかと平岡祐太が出演しています。
同年リリースのアルバム「I♡U」、ベストアルバム『Mr.Children 2001-2005 <micro>』にも収録
されています。

その歌詞を見ていきます。

名前もない路上で ヒッチハイクしている 膝を抱えて待ってる

この曲では、歌詞の中の主人公が自分の人生を歩んでいることをヒッチハイクにたとえています。

進入禁止だって あらゆるものを拒絶して 追い払ったのは僕だから
誰も迎えに来ない ちゃんとわかってるって だけどもう少し待ってたい

人生では周りの人がいろいろなアドバイスをくれます。
しかし、そんな周りのアドバイスは聞きたくない。それを「進入禁止だって あらゆるものを拒絶して 追い払った」と表しています。
つまり、歌詞の主人公は、周りに頼らずに自分の人生を一人で歩みたい、と感じているのです。

生まれたての僕らの前には 果てしない未来があって それを信じていれば 何も恐れずにいられた

若いうちは、未来は無限大だと思っています。そう思っていたら、未来は怖くないですね。そのような願望を示しています。

そして今僕の目の前に横たわる 先の知れた未来を 信じたくなくて 目を閉じて過ごしている

しかし、成長していくうちに、未来は無限大ではない、という現実を知らされます。
それを「先の知れた未来」と表現しています。
そのような未来、現実を見ると、どうしても目をつぶりたくなります。

サビで理想と現実の対比が表現されています。

女が運転する 車が止まって 乗せてあげると言った
僕は感謝を告げて 車のドアを開いて助手席に座ってまた礼を言う

2番では、他人の人生のレールに乗っかることをヒッチハイクを通して巧みに表現しています。
1番とは対象的で、他人のアドバイスを聞こうとしています。

しばらく走ると僕は かたいシートに居心地が悪くなって
女の話に相槌打つのも嫌になって 眠ったふりした

しかし、しばらくすると他人のアドバイスにも飽きて、また人の話を聞かなくなるようになります。

僕らは予定通りの コースを走ってきた 少なくとも今日まで

思っていた通りの人生を少なくとも今までは歩んでこれた、ということでしょう。

いつかこの僕の目の前に横たわる 先の知れた未来を
変えてみせると この胸に刻み付けるよ
自分を信じたなら ほら未来は動き出す
ヒッチハイクしている 僕を迎えに行こう

最後のサビでは、未来を変えることができる、という希望を示しています。
「自分を信じたなら ほら未来は動き出す」には、私も何回も勇気づけられました。

そんな歌詞の中でも一際筆者の心に刺さったのは、1番Bメロの以下の歌詞です。

生きてる理由なんてない だけど死にたくはない
こうして今日をやり過ごしている

私たちが日々どのように過ごしているのか、非常に端的に表しています。
ここまで端的に表している言葉はなかなかありません。

何のために生きているのか、生きている理由は分からないし、ないと思う。
だけど、だからといって死にたくはない。
私たちはこのように毎日を過ごしています。

私たちが最も心の奥底で強く思うことは、死にたくない、ということです。
マズロの五段階欲求説の一番下の欲求も、死にたくない、生きたい、という欲求です。
これは、いかに私たちが死にたくない、つまり生きたいと強く思っているかを表しています。

私たちは本当に死にたくありません。
これは、私たち人間だけではなく、あらゆる生き物もそうです。

ですが、私たちを含むすべての生きとし生けるものは、必ず死んでいかなくてはいけません。
これを仏教では、生死一如と教えられています。

3.仏教の「生死一如」

仏教には、生死一如という言葉があります。

生死とは、生きることと死ぬことです。
一如とは、ちょうど紙の表と裏のように切り離せない、ということです。

生きることと死ぬことは全然違うように思えますが、実は切っても切っても切り離せないものなのです。
生きることと死ぬことは表裏一体です。

私たちは必ず死んでいきますが、その死んでゆくことからほとんどの人は目を背けています。
しかし、人は必ず死ぬものです。
私たちは必ず死んでゆく、という100%確実な未来から目を背けることは、生きることそのものから目を背ける
ことです。

だから、自分が必ず死んでゆくという事実をよくよく見つめて、何のための人生なのか深く考えていくことがとても大切です。

ここまで本質的な歌詞を端的に書くことができるアーティストは、Mr.Childrenの桜井さん以外にはほぼいないように思います。
桜井さんは無二の存在だとあらためて感じました。