「ヤベえ・・・これはマジでヤバイよ」
おそ松の緊張感漂う発言から始まる、「おそ松さん」題7話のBパート「4個」。
アニメ本放送終了から半年近くが経ちつつある「おそ松さん」ですが、その人気はまだまだ圧倒的です。
8月3日から東京を皮切りに初の展示イベント「おそ松EXPO」がスタート。
大阪、名古屋、福岡で続々に開催予定。
さらに今週のコミックマーケット90の企業ブースには昨年冬コミに引き続いて「おそ松さん」が登場、限定グッズが販売されることになりました。
元々おそ松さんの同人サークルは超人気ですが、企業ブースでも、ファンによる壮絶な大行列が形成されること必至!と予想されます。
そんな「おそ松さん」の中でも1、2を争う人気な「スタバァ回」のBパートとして収録されているのが、今回ご紹介するお話「4個」です。
この話は2分ほどの非常に短いお話なのですが、仏教哲学の視点からみていくと、実は深~い教訓が秘められています。
「4個」から学ぶ、六つ子たちが、そして私たちが人生に活かせるヒントとは何でしょうか。
「4個」のセリフをご紹介
ニートの六つ子たちは、この日も2階の自室にいました。
しかしいつものようにゴロゴロしている訳ではなく、輪になって何かを囲み、何か話し合っています。
おそ松「ヤベえ・・・これはマジでヤバイよ」
カラ松「何という事態!」
チョロ松「解決策は!?」
一松「終わった」
十四松「うーん」
トド松「ええ!?どうすんの!?」
頭を抱える六つ子たちの視線の先にあったのは、今川焼。
地域によっては回転焼きとか、大判焼きとも言われるおなじみのアレですが、六つ子たちにとって由々しき問題を孕んでいました。
おそ松「何で4個だよ!?どうやって分けんだよコレ!?」
今川焼は4個しかなかったのです!
4個しかないことの何が問題なのでしょうか。
チョロ松が「一つ子(クソ)でもわかる六つ子と個数の関係」というナゾの講座を開き、視聴者に解説してくれます。
チョロ松「くっ…六つ子の歴史においてこの数字は鬼門…
1個や2個なら、端から数が足りてないからジャンケンで良いやと諦めがつく!
逆に5個なら、負ける可能性が少ないから、ジャンケンにしようよと強気に出られる!
3個は平和…それぞれ半分にして、6個にすれば良い!
でも!!!今僕たちに突きつけられた現実は…」
六つ子「4個ォ!!!」
そう、4個は6人兄弟であるおそ松たちにとって、一番分けるのが難しい数でした。
カラ松「ダメだ…眠気がぁ…!!!」
おそ松「おい寝んな!!!寝たら食べられるぞ!!!おれに!!!」
十四松「あ…僕も…」
おそ松「食べられるぞって!!俺に!!」
チョロ松「無理もないよ、こうやって睨み合ったまま既に36時間が経過している」
なんと、六つ子たちは今川焼をどう分けるかという問題だけのために36時間も睨み合いをしていたのです!!
もう今川焼はカピカピに干からびているのではないでしょうか…
そしてしびれを切らした長男おそ松が、ブルース・リーのコスチュームをまとって弟たちに襲いかかります。物理的に邪魔者を消し、自分だけが今川焼を食べようという魂胆でしょう。
弟たちも応戦、互いに潰し合いを始めました。
この話で唯一の常識人、チョロ松が下した決断は…
今川焼の取り合うため、喧嘩…というか殺し合いを始めてしまった兄弟たちに、チョロ松が思わず止めに入ります。
チョロ松「待て~~!!落ち着けよお前ら!!今川焼で死人を出す訳にはいかん!!!
ここは残念だけど、一つお母さんか父さんにあげて、残りを半分ずつ、皆で分けよう!!
いいね?」
3個にすれば、半分ずつにして皆で平和に分け分けできる。
そのことに36時間かけてようやく気づいたチョロ松は解決策を提案。
しかし…
レンジでチンした3つの今川焼を切り始めたチョロ松は顔面蒼白に。
チョロ松「これ…見ろ…!!1個だけ…クリームだよォ!!!」
なんと残った3個のうち1個だけがレアな、クリーム入りの今川焼だったのです。
六つ子たちはそのたった1個のクリーム今川焼を取り合うため、また不毛な殺し合いを始めてしまいました…
おそ松たちがハッピーになるために必要だった「自利利他の精神」
たった4個の今川焼を6人で食べるために36時間寝ずに悩み、最終的に殺し合いを始めた六つ子たち。
さすが時間の有り余ったニート兄弟は違うな!と一笑に付したくはなりますが、実は仏教哲学の視点からみると、深い問題があります。
六つ子たちは美味しそうな今川焼を食べて幸福感を味わいたいと思っていましたが、今川焼を食べることに限らず、私たち人間は毎日、幸福感を求めて生きています。
おそ松たちが家でゴロゴロしたりパチンコに行くのも、そのニートライフに幸福を感じているから。
私たちが眠い目をこすって毎日通勤電車に揺られるのは、働いてお賃金をゲットする人生が幸せだと考えてのことです。
そんな幸福を求めて日夜あくせく生きている私たちに、お釈迦様は幸福になれるただ一つの道を教えられています。
それは、人に「与えること」だけを考えることです。
お金があれば、人にお金を与える。
お金はないけど体力がある人なら、労力で人を手伝う。
それも無ければ、周囲を明るくできるような笑顔や、優しい言葉を心がける。
そうすれば必ず幸せになれるよ、とお釈迦様は教えていかれました。
人に与えてばかりいると、自分のものが減ってしまうと私たちは思ってしまいます。
ところが実際は、与えると必ず自分に返ってくるのです。
これを「自利利他(じりりた)」といいます。
他人を幸せにする「利他」の行動が、そのまま自分の幸せ「自利」になるという意味ですね。
仏教への信仰が深い、京セラ・KDDIの設立者・稲盛和夫さんも「利他の心」を重要視されています。
私たちの心にはもともと「自分だけがよければいい」と考える利己の心と、「他によかれかし」と考える利他の心があります。
利己の心で判断すると、自分のことしか考えていないので、誰の協力も得られません。自分中心ですから視野も狭くなり、間違った判断をしてしまいます。
一方、利他の心で判断すると「人によかれ」という心ですから、周りの人みんなが協力してくれます。
また、視野も広くなるので、正しい判断ができるのです。ですからよりよい仕事をしていくためには、自分だけのことを考えて判断するのではなく、周りの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他の心」に立って判断すべきなのです。
さらに、この仏教の教えは心理学でも裏付けがされていまして、「返報性の法則」といいます。
ある団体が寄付を集める際、通行人におもむろにバラの花を差し出すそうです。
すると、バラの花を差し出された相手はつい受け取ってしまいます。
そこですかさず寄付をお願いすると、ほとんどの人が寄付をしてしまうというのです。
何かを与えられたら、何かを返したくなるのが人間というものです。
逆にいえば、相手に求めてばかりいても応じてくれないということですね。
与えることで、与えられるということでしょう。
今川焼を増やす方法がある!?
「4個」で出てきた今川焼。
実はあの今川焼を増やす方法があります。
それが「自利利他」の思考です。
4個ある今川焼を両親とか、デカパン博士とか、弱井家とか、普段お世話になっている人にあげれば、今川焼4個分の幸せが返ってくるのです。
私たちは4個ある今川焼を人にあげれば、手元にある今川焼は0個になると思いがちですが、
実際は 4個+4個=8個 になるのです。
8個あれば六つ子と両親、家族全員で今川焼を食べられますね。
現実には今川焼の形で返ってくるとは限りませんし、返ってくるまでに時間がかかることもあります。
しかし与えれば必ず返ってくるのであり、返ってこないときは、幸せが銀行の口座に貯蓄されているような状態で、利子がついて手元に返ってくるのですね。
これまでこの「おそ松さんからの仏教」はおそ松たちに降りかかる様々な苦悩にスポットを当ててきましたが、六つ子たちが幸せを掴み取れない原因は、この2分しかないお話「4個」に詰まっています。
私自身も生まれつき人一倍強欲な性分でして、自分さえ良ければ良いと思いがちな人間ですから、六つ子の気持ちはよく分かります。
しかし「自利利他の精神」でいれば、必ず自分に返ってくるということも、仏教を学んで強く知らされました。
私たちも決して六つ子たちを馬鹿にはできない、難しい心がけが「自利利他の精神」です。
しかし難しいからこそ、返ってくる幸せも大きい。
日々少しでも心がけていきたいものですね。