「おそ松さん~The Game~(仮)」がAmazonの「ゲーム人気ランキング」で1位~14位を独占、話題を集めています。
アニメで爆発的な人気を得た「おそ松さん」が女性向け恋愛ゲームブランドとしてゲーム化。予約が開始されると注文が殺到し、ランキングを14位まで埋め尽くす事態となりました。
そんな根強い人気の「おそ松さん」のニートたち。
彼らの活躍(?)を通して私たちが学べることを、今回も探っていきます。
※シリーズ第1回はこちら(この記事だけでも読めます)
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前回はBlu-ray&DVD限定で収録されている「おそ松さん」の3.5話「童貞なヒーロー」から人間の「妬み」の心について解説してきました。
※前編はこちら
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※これ以降の内容はBlu-ray&DVD限定収録の3.5話「童貞なヒーロー」の内容を含みます。ネタバレご注意ください。
3.5話「童貞なヒーロー」前半のあらすじ
大好きなアイドルのグッズを買った帰り道、上機嫌で河原を歩いていたチョロ松。
ところが、川を挟んだ対岸を見ると、キラキラした「リア充」たちが、バーベキューの準備をしていました。
非リア充のチョロ松は、見なかったことにして道を変えようとしますが、そこへ「新品ブラザーズ」と名乗る怪しい5人が現れます。
声や衣装から察するに、どうやらチョロ松以外の六つ子が、ヒーローの格好をしているようです。
「イケてる人間はほんの一握り・・・人は言う、上に行くには努力しろと。
しかし!!
我々に言わせれば努力できる時点でそれはもうこの辺(上から3段目)の人間なのだ。
そして、我々がいるのはコレ(一番下)。暗黒大魔界クソ闇地獄カースト!
ちなみにココからココまで上がるには人生3回分くらい必要。
だから我々は上に上がるのではなく、上を下に引き摺り下ろすことでちょっとした快楽を得ている。そういうヒーローだ!!」
新品ブラザーズの活動主旨は、自分より幸福そうな他人を見て「妬み」の心を溜め、下に引き摺り下ろすことでちょっとした快楽を得ることでした。
他人の幸せな姿は面白くない… これが全ての人が持つ「妬み」の 心。
そんな人間の本性を公言し、妬んでいる相手を攻撃するのが、「妬み」の心でいっぱいの新品ブラザーズです。
そんな彼らですが、この後大きなピンチに見舞われます。
妬みの心からバケモノになってしまった一松
新品のトド松「大変だぁあ!!敵がついに!バーベキューを始めたぞぉ!!」
新品の十四松「うわあああああ!!目が!!目がぁ!!まぶしすぎるううう!!ぐはっ!」
新品のおそ松「し、死んでる・・・
馬鹿・・・!!あんな幸せの象徴を直視しやがって・・・!!」
新品の十四松は、新品ブラザーズにとって「他人の幸福の象徴」であるバーベキューの様子を肉眼で見た瞬間、ショックで死んでしまいました。
さらに新品の一松も、見てはならないモノを目撃。
新品の一松「う、嘘だろ・・・!アレを見ろォ!!」
新品のトド松「あ、アレは・・・『抜け駆け』だぁぁ!」
対岸のバーベキュー集団の中で一組の男女がグループから離れ、仲睦まじく二人で会話をしている様子を新品の一松が目撃してしまいます。
友人たちの輪から「抜け駆け」し、二人だけで親密になろうとしているのです。
そんな二人を見て、わなわなと妬みで震えながら目を血走らせる一松。
新品の一松「み、自らバーベキューに参加しておきながら・・・!
『オレぇ、こういうノリ苦手なんだよねぇ』
『そうなんですかぁ!わたしも得意じゃないんですぅ~★』
という矛盾だらけの会話ァ!!!
なぁぜ!!
許せなあああああああい!!!!」
その瞬間、嫉妬に狂った新品の一松に稲妻が落ちます。
爆発が起こったあと、新品の一松がいたはずの場所には、紫色の巨大なナメクジのような化け物がいました。
顔だけが一松の顔になっていますが、瞳孔は完全に開き、ギザギザの歯が生えた口からは長~い舌が飛び出し、うめき声を上げながら緑色の嘔吐物を吐き出しています。
毎日寝食を共にしていた実の弟が、急に不気味な怪獣になってしまい、動揺を隠せないチョロ松。
チョロ松「え、えええー!?何あれ!?」
新品のおそ松「アレは・・リアルな幸せ者たちを取って食う害獣・・・リア獣(りあじゅう)イチゲルゲ!!」
「妬み」の心の実態がよく分かるイチゲルゲの特徴
他人の幸福が許せないという「妬み」の心が爆発してしまった一松は、幸せそうな人を取って食い殺す化け物「イチゲルゲ」になってしまいました。
このイチゲルゲ、なかなかグロい外見をしているにも関わらず、女性ファンを中心に「キモ可愛い!」「飼いたい!」と大人気。次々に関連グッズが登場し、抱き枕まで発売されています。
アプリゲーム「おそ松さんのへそくりウォーズ」では「おそゲルゲ」ほか、六つ子たちのゲルゲ版が登場するなど、限定エピソードに一度だけ出てきたキャラクターとは思えないほどの反響があったイチゲルゲ。
私自身も、イチゲルゲを手に入れたくて必死に「おそ松さんのへそくりウォーズ」を毎日プレーしました。
そして実はこのイチゲルゲ、人間の「妬み」の心の特徴をとても分かりやすく表してくれています。
特徴① そのグロテスクな見た目
グッズ化されているイチゲルゲは手乗りサイズで確かに「キモ可愛い」のですが、実際に本編で出てきたイチゲルゲは人間よりはるかに大きい姿で描かれています。
体長2メートルほど、顔だけは一松で、嘔吐物を撒き散らす巨大な人面ナメクジ。実際にこんな生き物が河原にいたらかなりゾッとしそうです。
そして思わずゾッとする恐ろしさがあるのは、 「妬み」の心も同じです。鎌倉時代に残された仏教の書籍に
こころは蛇蝎(じゃかつ)のごとくなり(正像末和讃)
という一節があります。
蛇蝎(じゃかつ)とは蛇やサソリのこと。
蛇やサソリを見たときのように、思わずゾッとしてしまう恐ろしい心が「妬み」の心だと仏教では教えられています。
私たちは日頃自分がそんな恐ろしい心を抱いて生きているとはなかなか思えませんが、一松が抱える「妬み」の心が爆発して生まれたイチゲルゲを見ていると、確かにとても他人には赤裸々に語れないゾッとするような心だと分かります。
特徴② 一松には有った知恵がイチゲルゲには無くなっている
一松は兄弟や自分たちの日頃の行いを、蔑みながらもじっくり観察し、たまに的を射た毒を吐きます。言葉を発するまでに、内心で色々考えている性格なのです。
16話の「一松事変」でも、彼が一言一言を発するまで色々と思慮をめぐらせていることが描かれていました。
そんな一松が「イチゲルゲ」になると、人間の言葉を理解する力すら無くなり、言葉にならないうめき声ばかりをあげるようになってしまいました。
元の一松の状態に比べて知恵がなくなり、自分のことを正しく見つめられなくなっているのです。
「妬み」の心は仏語で「愚痴」といいます。
「愚」は読んで字の通り、愚かな心。
さらに「痴」は「知」が「やまいだれ」の中にある漢字で、知恵が病気になって入院しています。つまりこの字にも「愚か」という意味合いがあります。
何を「愚か」といわれているでしょうか。
ある大事なことが分からないから愚かだと教えられています。
それは、今自分が幸せになれない理由が分からず、自己反省がないということです。
一松は仲睦まじく会話する男女二人を見て、妬みの心を爆発させイチゲルゲとなり、幸せそうな人間を食い殺そうとしました。
そこには「何故自分は幸せそうな二人のように出会いが得られないのか」という、自分の中に原因を探す自己反省が抜け落ちてしまっています。
いつもの一松は
「僕みたいなゴミ」
「長男から末弟まで揃ってクズ。中でもずば抜けたクズは…(自分)」
「もっと蔑んでもいいですよ」
(「SIX SAME FACES今夜は最高!TypeA、TypeB」より)
と、友達や恋人ができないの原因は、自分の日頃の生き方に問題があると認めています。
ところがイチゲルゲになってしまった一松は、そんな自身の課題について全く考えられなくなり、ただ羨ましい相手を食い殺そうとします。
口では「自分は人間性がクズだから恋人なんてできないよ」
と言いながら、いざ自分より幸せな人を見ると、日頃は冷静に見つめられている自分の行いは棚にあげてしまい、幸せそうな人の不幸を願ってしまう。
それでは自分はいつまでたっても変われないのに、自己反省も向上もありません。
そういう「愚か」な心が「愚痴」、つまり妬みの心なのです。
ゾッとする「妬み」の心に日々苦しんでいる私たち
私たちもFacebookやTwitterで恋人ができたことを嬉々として日記で報告し、デートの写真ばかりをアップする友人がいたら、一松のように怪獣になって食い殺そうとはしなくても、心の底から祝福できず、何となく不快な気持ちになってしまいます。
考えないように考えないようにしてもどうしても湧き上がってくるこんな「妬み」の心。
この心と向き合うにはどうすればよいのでしょう。
リア獣イチゲルゲはこの後ポケモンのように、更に進化するのですが、イチゲルゲの変貌には「妬み」の心と私たちがうまく付き合うヒントが隠れています。
それは何でしょうか。次回に続きます。