「カラ松のサングラス」が鯖江の職人によりついに商品化。アニメ放映終了2ヶ月がたった今も、次々と関連グッズが発売されている大人気アニメ「おそ松さん」。
そんな「おそ松さん」から学べることについて、今回もお伝えしていきます。
※シリーズ第1回はこちら(この記事だけでも読めます)↓
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「おそ松さん」の六つ子たちは作中で、人間が持つ「煩悩」の実態を分かりやすく教えてくれています。
そんな六つ子たちの言動を追いながら、このシリーズでは第4回から「煩悩」についてお伝えしてきました。
前回は「トド松と5人の悪魔」から、この煩悩のうち「怒り」の心について解説。
今回と次回は第10話「イヤミとチビ太のレンタル彼女」から前回に引き続き、欲が妨げられたときに起こる「怒り」という心について解説していきます。
「イヤミとチビ太のレンタル彼女」はニコニコ動画で80万再生を超えており、前回取り上げた「トド松と5人の悪魔」に匹敵するくらいの人気エピソード。
「おそ松さん」の中ではかなり長いエピソードなのですが、中弛みすることのないテンポで展開される、大人向けなネタが反響を呼びました。
「レンタル彼女」への強烈な恋に落ちてしまった六つ子
物語はお金に困ったイヤミがチビ太と共に女装をし、「レンタル彼女」業を始める(!)ところから始まります。
しかし趣向を凝らすも全く買い手がつきません。
通りがかった六つ子たちにノリノリで自分たちをレンタルするよう売り込んだところ
「ただの化け物!鏡見ろバカ!!」
等と容姿を散々罵られてしまい、二人は六つ子たちに復讐を決意します。
「誰でも可愛い女の子になれる美女薬」を手に入れた二人は美女に変身。
イヤミはナイスバディな金髪美女に、チビ太は可愛いらしい少女に化けました。
女性と手すら繋いだことのなかった六つ子は、イヤミとチビ太が化けた美女「イヤヨちゃん」と「チビミちゃん」にまんまと騙されます。
6人は美女になった二人にメロメロ、本物の彼氏になろうと必死になり、身ぐるみ全て剥がされていきました。
全財産を二人に貢ぎ、ボロボロになった六つ子たち。
しかしイヤヨとチビミはこれ以上、金を搾取できないと分かったとたんに六つ子たちの下を去ります。
初めてお近づきになれた女性(?)に見捨てられ苦しみのドン底に落ちた六つ子。
チョロ松「アアー!イヤヨちゃあああん!!」
カラ松「君の為なら死ねるゥー!」
十四松「イヤヨ!イヤヨが足りないいいい!」
と泣き叫び、のたうちまわります。
最初はレンタル彼女と分かっていたのに、いつの間にか本気でイヤヨちゃんとチビミちゃんに恋してしまった六つ子たち。
心を奪われた相手にあっさり捨てられた彼らの苦しみは、壮絶なものでした。
六つ子たちが渇望した「愛欲」―――その強い魅力と代償
こちらの記事でも紹介しましたが、仏教では欲の心のうち代表的なものを5つ挙げて「五欲」と教えられています。
[blogcard url=”https://20buddhism.net/osomatsu-toyu/”]1. 食欲
2. 財欲
3. 色欲
4. 名誉欲
5. 睡眠欲
欲の心は「煩悩」の一つですが、煩悩とは仏教の言葉で人間を煩わせ、悩ませるものという意味があります。
「おそ松さん」の六つ子は全員女性経験がなく、一度でいいから女性と深い仲になりたいと渇望し血眼になっている姿が、いろんなエピソードで描かれていました。
3月に放送された最終回では、命がけで宇宙人と戦いながら、ヒロインのトト子ちゃんを抱きたいと六つ子たちが叫ぶという凄まじいシーンもあります。
様々なエピソードで繰り返し描かれる、六つ子たちが満たされない愛欲を求める姿は、「愛されたい」という人間の欲はどれだけ強いものかを私たちに教えてくれているようです。
現実世界でも人の誕生は、男女の色恋なしには始まらず、様々な映画やドラマ、音楽で人の心を掴むテーマといえば恋愛。
そして恋愛のトキメキは男女間だけのものではありません。
私も含め「おそ松腐女子」の皆さんはおそ松さんを見ながらボーイズラブ妄想に心をときめかせていますが(笑)、そんな「腐女子」が夢中になる男性同性愛を扱った作品もたくさんあります。
現実世界でも恋愛に身をこがす人は異性間、同性間を問わず溢れているのはもちろん、恋愛の虜になるのは若者だけではありません。
中年、壮年世代にも、大人の恋に身を焦がす方は多くおられます。
老人ホーム内での入居者同士の色恋が問題になっているというニュースも近年報道されており、まさに性別も年齢も超えて多くの人間の心を虜にするのが、「愛欲」という心といえます。
しかしひとたび恋に落ちると、その甘美で強烈な欲を満たすために、人は非常な苦悩を背負います。
フランスの詩人レニエは
「みずから苦しむか、もしくは他人を苦しませるか、そのいずれかなしには恋愛というものは存在しない」
という言葉を残していました。
相手がイケメンだったり美女だったりすると、浮気されないか不安に怯え、浮気の心配がなさそうな相手だと本当にこの相手で良いのかと迷いに苦しむ。
LINEがなかなか返ってこなくてソワソワし苛立ちを相手にぶつける、反対に逐一細かい予定を聞いてくる恋人にうんざり・・・と、どんなに幸せそうにみえるカップルにも、苦悩が伴っています。
六つ子たちも、生まれて初めてデートした美しい女性にすっかり心を奪われ、中身がイヤミたちとも知らず全てを捧げてしまいました。
一方イヤミとチビ太は、姿形を六つ子たちに散々けなされ、「名誉欲」を妨げられたことから、六つ子たちに復讐を計画します。
さらに「財欲」を満たすため、高額なデートオプション料金の書かれた請求書を六つ子たちに突きつけ、どんどんお金を騙し取っていきました。
恋した相手のために己の全てを捧げた六つ子。しかし裏切りは簡単に訪れた・・・
このシリーズの第6回でも触れていましたが、このように欲の心は際限なく広がっていき、これで満足ということがないという特徴があります。
六つ子たちの「色欲」も「レンタル彼女」では満足できなくなりました。
そしてホンモノの彼氏にしてもらおうと血眼になり、一方のイヤミたちは六つ子たちに復讐をするだけでは飽き足らず、財欲のためにどんどん六つ子たちから搾取していきます。
イヤミたちはやがて美女薬に耐性がついてしまい、頻繁に薬を飲まないとすぐに元の男の姿に戻ってしまうようになりました。
そろそろ潮時かとレンタル彼女を止めようとするイヤミとチビ太。
しかしそこへ、なんと大金を持った六つ子たちが現れました。
イヤヨ「こ、これは・・・!?」
チビミ「どういうこと!?」
おそ松「働いたのさ!
二人に感謝!だってエロいことしたい一心で…
・・・あ、じゃなかった、デートしたい一心で、僕たちみんな、ニートを卒業できたんだ!」
なんとニートだったはずの六つ子たちは、イヤヨとチビミにデートしてもらうため、必死で働いたのです。
いろいろな職場で懸命に働いていたようですが、最終的には
“諸般の事情によりお見せできないお仕事をしております”
と画面一杯にモザイクがかかっていました。
どうやら六つ子たちは二人に愛されたい一心で、とてもテレビでは放送できないような仕事に手を出していたようです。
ちなみに先月末に発売されたBlu-ray版ではモザイクが取れていましたが、確かにテレビでは放送できない内容でした・・・
イヤミ(な、舐めてたザンス童貞の執念…!)
チビ太(いやこの短期間でこんな額、あり得ねえだろ…!ど、どうすんだ!)
イヤミ(これはチャンスザンス!成功したらしばらく働かなくていいザンショ!)
美女薬に耐性がつき、美女に変身できる時間はどんどん短くなっていたにも関わらず、大金に目がくらんだイヤミたちは高級ホテルで六つ子とデート。
六つ子たちは怪しい仕事に手を出してまで得た大金を、イヤヨたちに惜しむ事なく貢ぎました。
ところが薬がとうとう効かなくなり、イヤヨちゃんとチビミちゃんの正体がイヤミとチビ太だと分かってしまいます。
可愛さ余って憎さ600倍!?愛されたい欲が邪魔された怒りが爆発
「愛憎一如」という言葉があります。
愛しい心と憎い心は紙一重。
深く愛した相手であればあるほど、裏切られたときの憎しみが爆発します。
”可愛さ余って憎さ100倍”とはよく言ったものですが、
六つ子たちも、この後憎さ100倍×6人分の怒りを、「愛欲」を妨げた相手であるイヤミたちにぶつけていきます。
最初は「レンタル彼女」と分かっていたのに、いつの間にか骨の髄までイヤヨちゃんたちにメロメロになり、何もかも捧げた六つ子たち。
愛し、全てを捧げた相手に騙されていたと分かったとき、六つ子たちはどうなってしまったのでしょう。
後編に続きます。