今年ドラマ化し高い視聴率を記録した『東京タラレバ娘』は、講談社「kiss」で連載中の東村アキコ先生による作品です。
最新刊が出るたび独身女性たちの悲鳴があがる衝撃作は、話題が話題を呼んで330万部を突破しました。
今回はドラマ版では描かれなかった『ACT16 ドロドロ女』(凄いタイトルですね…)から分かる、女性が陥りやすい苦しみについて解説、既婚でも独身でも、輝く女性になる方法を仏教の観点からお話しします。
「ね!占い行こ!!」全てはここから始まった
「あんたらはいつもそうだ
いい歳こいて女同士でつるんで、騒いで、あることないこと妄想して、興奮して
それだけに基づいてたいして考えもせず行動する
なぁ、一体何の為に歳取ってるんだ
あんたらを見てるとイライラする
オレはあんたとは恋愛できない」
良い雰囲気になりそうなバーで、気になっていた男性KEYと会っていたとき、主人公の倫子はこう言われてしまいます。
KEYは、作品の表題『タラレバ娘』の名付け親である金髪のモデル。
倫子のメンタルを削る毒舌発言を連発する割になんやかんやと倫子の世話を焼くKEYを見て、女子会仲間の香と小雪たちは
「やっぱアイツあんたのこと好きなんじゃない?」
と倫子のケータイを奪い、KEYと勝手にアポイントメント。
しかしそんなタラレバ娘たちをKEYは
「いい歳こいて女同士でつるんで、騒いで、あることないこと妄想して、興奮して、それだけに基づいてたいして考えもせず行動する」
と貶したのでした。
香と小雪のせいでフラれたとしか思えなかった倫子は、KEYに言われたことを2人に愚痴ることができなくなってしまいます。
愚痴のはけ口を失った倫子がフラフラと迷い込んだのは
「あの有名人が絶賛支持!!」
「あなたに本当の奇跡が訪れる」
といった張り紙が壁中に貼られた占い師の店。
死人のような顔で現れた倫子に占い師は言いました。
「男に捨てられて落ち込んでんの?」
「えっ、な…なんで分かるんですか!?」
「結婚したいけどできなくて焦ってる、最近ひどい目にあっただろ、男で」
「あ…ありました!何で分かるんですか」
失恋してドン底な顔をしているのは誰がどう見てもわかります。ですが、東京オリンピックの2020年までに結婚したいと焦っていた倫子は「2020年までには相手が見つかる」と占い師に言われて舞い上がります。
「ね!占い行こ!!
とにかくすっっっっごい当たるのよ!!行こ!!今から行こ!!香とか小雪も占ってもらお!!
原宿の母によれば、あたし2020年までにはいい人見つかるって!!」
KEYに何を言われたのか心配してくれる香と小雪に本当のことも言えず、倫子は「原宿の母」のところへ2人を連れていったのでした。
占い師の力で幸せになるはずが、3人の友情はボロボロに
「三白眼の女ってのは気位が高いくせに好きな男ができたら周りが見えなくなってのめり込んでしまうんだよ」
香は外見上のコンプレックスである三白眼が恋愛でうまくいかない要因と言われ、ショックでフリーズ。
タラレバ娘たちはすがるように運命の人はどこにいるのかと救いを乞います。
「ど…どこに…いますかね?」
「北東!!」
言われるがまま北東に向かった先にあったのは「相席居酒屋」。
「相席居酒屋」は初対面の異性同士が相席になる居酒屋で、近年出会いの場として活用する未婚者も増えてきたようです。
しかし倫子たちは…
戦闘力2
戦闘力3
戦闘力2
戦闘力186
前に座った冴えない容姿の商社マン3人の顔の前に、戦闘力が数値化されて見えてしまいます。
最後の186は攻略相手ではない、相席居酒屋のイケメン店員さんでした。
3人は早々に居酒屋を退出します。
倫子「酔っぱらい以外はいい人たちだったじゃない、商社マンだし」
香「じゃあんた付き合いなさいよ」
倫子「え、やだ、ムリ」
香「何でムリなのよ、原宿の母が北東に行けっつってあれにブチ当たったんだからアレが運命の人かもしれないじゃん」
小雪「あたしは…占いなんか信じない。あんなの誰にでもあてはまるような漠然としたことを言ってるだけじゃん
…脚本家のアンタが占いなんか信じるなんて意外、脚本家ってもっと物事をウラから考える仕事でしょ?
あんなもんそのまんま素直に信じるなんて物書きとしてどうなのかな」
占いに逃げ、すがっている状態をズバリ指摘されてしまった倫子はカッとなって、思わず口を滑らせてしまいます。
倫子「言われたのあいつに
いい歳こいて女同士でつるんでばっかのあたしらみたいな女とは恋愛できないって
33にもなってギャーギャーはしゃいでるのはいい女じゃないって」
小雪「いい歳して占いなんかに逃げこんでるのもいい女のやることじゃないって?」
香「え…あたしらがあんたをけしかけたから、あいつがドン引きしたっていいたいわけ?何それ、人のせいにしないでよ」
あーあ
最悪だ
占いなんか連れていかなかったら
強がらずに見栄はらずに最初から誠実に正直に昨夜のてんまつを報告していれば
ああ
下手打った
自分が幸せじゃないからって友達まで巻き込んで
そんな私は最低のドロドロ女
「イケてる女」は自分の人生は自分で幸せにする
占いの力で結婚できるはずが、自分を応援してくれていた女友達と決裂してしまった倫子。
不幸が連続する要因はどこにあったのでしょうか。
辛いことが起こると、神秘的なものに惹かれてしまう女性は多いように思います。
倫子もKEYにフラれたとき、占いによって自分の未来を幸せにしてもらおうとしていました。
しかし自分のどこに問題があったのかを考える前に、占いの力で自分の人生を幸せにしてもらおうという思考回路はとても他人任せです。
親友の小雪が言うように「いい歳して占いなんかに逃げこんでるのもいい女のやることじゃない」という意見もたしかに頷けます。
仕事で世界に知れ渡るような成功をしている「イイ女」は周囲のサポートに感謝する言葉は述べていても、自分の人生は自分の努力で良くしていくものだと無意識のうちに実践している方ばかりではないでしょうか。
自分の日々の行いが積み重なって、未来は良くもなり悪くもなるという考え方を仏教で「因果律」といいます。
「因」とは原因、「果」とは結果、「律」は法則のことで、すべての幸不幸という結果には必ず原因があるという意味です。
これは、いつの時代もどこへ行っても変わらない普遍的な真理だと仏教では教えられています。
元モデル女子から聞いた!「イイ女」の裏にある凄まじい努力
きらびやかな世界で成功している「イイ女」は、他人の力にすがらず並外れた努力をしているそうです。
平凡な毎日を送る私たちからすると、持って生まれた美貌を活かし好きなことで活躍できる羨ましい人に思えます。
しかし実際は表舞台で輝いているのはほんの一瞬、裏で並々ならぬ努力と苦労を重ねておられるそうです。
事務所に入ったというだけで私のような一般人は凄いと思ってしまいますが、昔モデルの世界にいた筆者の友人によると、実際は事務所に入ったからといってすぐ仕事がある訳ではありません。
自分でオーディションを受けに行かねばならず、レッスン代やオーディションで使う衣装も自腹ということもあるそうです。
また髪型や肌の色はイメージを変えてしまう要素になるので事務所の意向に沿わない髪型には変えられず、日焼けをしてはいけないことも。
ただ生まれつきキレイだからでは輝くことはできず、不自由と苦境を承知で地道な努力を積み重ねる人たちの世界なんですね。
『東京タラレバ娘』の作中にも、活躍中の女性モデルが登場します。
交際相手の涼はモデルの彼女のことを
「あいつは職業柄メシ全然食わねーから
テレビとか雑誌で『私こう見えて大食いなんです』
って言ってんのとか全部ウソだから
普段は塩分抜きのサラダかスムージーしか飲んでないし」
と言っていますが、作中で描かれるモデルが美しいプロポーション維持のために積み重ねる努力もすさまじいです。
これは一例ですが、世に傑出している「イイ女」の方々は、地道な努力が未来の運命を切り開くという、因果律に似た信念を持ち、実践しておられるように思います。
対して筆者は努力ともいえないちっぽけな努力をしたくらいで
「何でこんなに頑張ってんのに結果出えへんの!?」
と愚痴ることが多く、倫子を笑えない「イケてない女」です(笑)
倫子のように更なる苦難を招かないよう、苦しいときこそ「因果律」を意識したいものですね。
気になっていた人にふられたのは、ふられてしまう原因をつくった過去の言動の数々であり、友人達が囃し立てたからではありません。
恋愛がうまくいかないからと占い師にすがってしまっては反省はなく、失敗を繰り返すだけでしょう。
モデルの世界で生きるKEYも幸せは自分の努力で作り出せと言いたかったのかも。
幸せは原宿の母にあるのではなく、自分で掴み取るものなんですね。