一日は欲望に追い立てられて終わる?仏教で教えられる貪欲とは:煩悩②

前回の記事では仏教で教えられる煩悩について解説いたしました。

仏教で教えられる煩悩とはなにか:煩悩①(仏教用語解説シリーズ) 仏教で教えられる煩悩とはなにか:煩悩①(仏教用語解説シリーズ)

私達を煩わせ悩ませる煩悩は108つありますが、その中でも大きい三毒のうち「貪欲」についてお話いたします。

貪欲とは

貪欲。現在では「どんよく」と読んでいますね。

[名・形動]《古くは「とんよく」とも》非常に欲が深いこと。むさぼって飽くことを知らないこと。また、そのさま。「―に知識を吸収する」「―な男」
どんよく【貪欲】の意味 – 国語辞書 – goo辞書 どんよく【貪欲】の意味 - 国語辞書 - goo辞書

「貪欲に練習に明け暮れているです」ですと非常に格好いいですね。時間や衣食を忘れ、没頭している様子が想像できます。ストイックでポジティブなイメージさえ持ってしまいますが、本来仏教で教えられているものとはまるで異なります。煩悩の一つですから、当然これに煩わされ悩まされているのです。

Game on !
Game on ! / The World According To Marty

仏教では貪欲と書いて「とんよく」と読みます。貪欲は字のごとく、欲の心です。何かを欲しいと思う心です。

この欲の心は実に多くあるのですが、代表的な5つの欲が「五欲」として教えられています。

  • 食欲
  • 財欲
  • 色欲
  • 名誉欲
  • 睡眠欲

食欲は、食べたい飲みたいと思う心です。ただ食べられればいいわけではなく、より美味しいものを食べたいと思う心です。
財欲は、お金がほしい物が欲しいという心です。今の言葉でいえば物欲といってもよいでしょう。
色欲は、男女の欲です。男性なら女性を、女性なら男性を求める心です。
名誉欲は、人からよく思われたい心です。悪口を言われたくない、褒められたい心です。
睡眠欲は、楽がしたい心です。眠い、だるい、かったるいといった心といえば分かるでしょう。

これら五欲に私達は追い立てられて生きています。実際に見てみましょう。

五欲と私達の一日

平日の仕事がある日を想像しましょう。まず朝です。

目覚まし時計で目を覚まします。ここから欲望との戦いが始まります。

起きたくないという心、ありますね。ずっと布団の中にいたい。布団と結婚したい。冬寒いと一層強くなりますね。これが睡眠欲です。学生時代なら授業をサボって、そのまま寝れるでしょうが、しかし社会人はそうもいきません。仕方ないから起きますね。実はそれが名誉欲です。起きずに遅刻したら、会社の上司同僚から何を言われるか分からない。それによって給料が下がると考えていたら、それは財欲です。そしてご飯を食べるか、面倒だから食べずに行くか、悩むことがありますが、これは食欲と睡眠欲との戦いです。

そして身支度を整えます。寝癖がはねていないか、変に見られないか最低限チェックするのは名誉欲です。そして意中の同僚の男性のためにファンデーションをのせるのは色欲です。

電車に乗った時も欲望との戦いです。椅子が空き次第、いの一番に自分が座ろうと思っているのは睡眠欲です。いや、ここはあのおばあさんに席をゆずろうと思っているのは名誉欲でしょう。そしてもしかしたらあのおばあちゃんは資産家かもしれないと思っているのは財欲です。

会社についたら考えているのは、評価と給料です。これは名誉欲と財欲にほかなりません。同僚との成果を争う中で、気になる後輩の女の子にレクチャーしてる時は色欲でしょう。または同僚のもつ高級ブランドのカバンや靴をいいなと思うのは
物がほしい財欲です。

お昼時間になって、ランチを食べに行く時は美味しいものを食べに行くのが食欲です。100円高いAランチを頼むか、いつものBランチにするかは、食欲と財欲が戦っているということです。結局一番安い牛丼屋にしたのは財欲が勝ったということですね。

そして仕事が終わったアフターファイブ。欲望との戦いは終わりません。

美味しいラーメン屋に行こうとしている人は食欲ですし、合コンに行く人は色欲、残業して頑張ろうとするのは名誉欲、副業して少しでも稼ごうとしているのは財欲、一刻もはやく帰って寝ようとするのは睡眠欲です。

常に五欲のどれかに触れ合っている。このように欲と離れきることができないのが私達なのです。

まとめ:私達は欲望とともに生きている

上記の例を通して、貪欲という欲の心と離れきれない私達ということが知らされます。

よく漫画で天使と悪魔が戦っていますが、仏教では天使も悪魔もありません。どちらも貪欲です。

国や時代が変われば生活様式は変わりますが、欲に追い立てられている点は何も変わりません。

現代は便利になったので、楽がしやすくなりました。手洗いだった洗濯が、今やドラム式洗濯機で乾燥含めボタンひとつです。洗い物だって、自動食器洗浄機で楽ちんです。しかし睡眠欲がなくなったわけではありません。便利になったとはいえ、欲望はなくなることはありません。

しかし、欲望自体は何も問題ないのではと思われる人もあると思います。むしろ、もし欲がなければただの無気力人間になってしまうじゃないかと。ご飯食べたいという心がなかったら栄養失調で死んでしまうじゃないか。人からよく見られたい心がなければマナーやエチケットもないじゃないかと。

欲の心は限りがないのが問題なのです。貪欲の問題については次回に書きます。