最終回を迎えたものの人気の衰える気配の無いアニメ「おそ松さん」。
Blu-rayや関連グッズは売れに売れ、本放送終了後、異例の大ヒットを受けてTVQ九州放送、静岡放送などで追加放送が始まりました。
おそ松さん:ブーム受け放送局大幅拡大 秋田、静岡、福岡など続々 – MANTANWEB(まんたんウェブ)
あまりの人気に放送を望む声や問い合わせが多数集まり、放送局を拡大することになったそうです。
その経済効果はたったの5ヶ月で70億円とバラエティ番組「チャージ730!」でも紹介されていました。
そんな根強い人気を誇るアニメ「おそ松さん」から学べる人間の心について、今回もお伝えしていきます。
※シリーズ第1回はこちら↓
[blogcard url=”https://20buddhism.net/about-fujoshi-goukai/”]
全国のチョロ松クラスタに衝撃を与えた19話「チョロ松ライジング」。
前回はこのエピソードから「意識高い系」男子の心について解説しました。今回はいよいよ意識高い系男子、チョロ松の「自意識」の正体に迫っていきたいと多います。
※前編はこちら
[blogcard url=”https://20buddhism.net/choromatsu-lightning-firstpart/”]
底の知れないの「欲」の心
前回まで数回、この「おそ松さんから学ぶ仏教」シリーズでは「欲」の本質についてお伝えしてきましたが、この「意識高い系」も欲の心の一つ、「名誉欲」が生んでいます。
名誉欲について少しおさらいします。
名誉欲とは「人からよく見られたい」「自分はできる奴だと思われたい」という心のことです。
この心は誰にでもあり、名誉欲を満たすために、私たちは毎日手を抜かずきちんと仕事をしようとしますし、朝起きたままの格好で外出せずきちんと身なりも整えます。
「良い人だなあ」「有能だなあ」「キレイな人だなあ」と思われたい欲があるからこそ、努力することができます。人間が生きる上で、名誉欲は大切な原動力となっているともいえるでしょう。
しかし欲の心は「これで満足」ということがないのです。
仏教では「欲」の心を青で表現します。
水自体は透明ですが、プールの水は薄い青色に見え、水深の非常に深い太平洋の大海原は真っ青に見えるように、深ければ深いほど、海は青く見えます。
欲の心を青で表すのは、底の知れない海のように、求めても求めても、これで求まりきった、これで満足だ、ということがないのが欲の心だからなのです。
「おそ松さん」で青といえば、次男のカラ松のイメージカラー。
毎日痛々しいファッションでカッコをつけ、鏡を覗き込んでいるカラ松ですが、彼の名誉欲もたしかに「これで満足」ということはなさそうです(笑)
「意識高い系」を悩ませる“際限なく膨らむ名誉欲”
さて意識高い系の人たちは、他人から
「もっとよく見られたい」
「もっと評価されたい」
「もっと注目されたい」
という名誉欲が際限なく膨らんで、自分の実態と合わなくなっていきます。
前回ご紹介した、トド松の発言「ほんと?宣言した時点でもう満足してるんじゃないの?!」というように、周囲からはアピールすることが目的に見えてしまい、その言動が迷惑がられてしまうのですね。
名誉欲は、私たちがより良い社会生活を送るためには欠かせないものなのですが、度が過ぎると、他人に迷惑をかけますし、何より本人が人の目を気にしすぎて思い通りの行動ができなくなってしまいます。
人からよく見られたいあまり、自意識過剰で日々周りの目にビクビクしチョロチョロしてしまっているのが意識高い系男子、チョロ松だったのです。
そんな兄弟を見かねたおそ松とトド松は、ある提案をするのですが・・・
チョロ松「ムリだよぉ~帰ろうよぉ~」
トド松「フリーハグやる言ってた人が何ビビッてんの!」
チョロ松「いや、ナンパなんて人間のやることじゃないって・・・なに初対面の女の子に声かけるとか!そいつの心どうなってんの?!」
おそ松「声かけてきて~はやく~」
チョロ松「ムリ!!死んじゃうって!」
トド松「死んでいいんだよ、むしろそっちが目的なんだから早く死んでこいよォ!」
チョロ松の「自意識」がこれ以上ライジングしないように、おそ松とトド松はチョロ松にナンパをさせようとしました。
ナンパに失敗することで彼のプライドを叩き潰し、高過ぎる彼の「自意識」を人並みに矯正しようとしたのです。現実を見ろということでしょうか。
しかし・・・
「人からよく見られたい!」心で苦しむチョロ松
おそ松「あ!チョロ松!あの人は?すっげ可愛くね?」
チョロ松「え~~一軍の人は無理だよ、望みが薄過ぎる。どうせフラれるの分かってて、リスク負えない」
おそ松「じゃああの人は?そこまで美人じゃないし。あ、でもスタイルはいいよね」
チョロ松「じゃあダメでしょ!絶対モテるでしょ、相手にされないよ」
おそ松「あーじゃあアレは?顔もスタイルも普通。ただオシャレだけど」
チョロ松「オシャレ?!それ一番無理なやつ!何のポイントアップにもならない!!こっちの劣ってる感が増すだけ!!」
おそ松「んーじゃあアレは?そこそこブス!性格は良さそうだけど」
チョロ松「じゃあ無理でしょ!僕は人間的に同じレベルの人がいいんだから!
もっと安心したいし、緊張なんか絶っ対したくないし、できれば付き合ったときに一緒の価値観で・・・
あれこれ理由をつけて、ナンパをしたがらないチョロ松。
そしてその言い訳は、人からよく見られたい、ナンパに失敗して恥ずかしい思いをしたくない、名誉欲を損ないたくない心でいっぱいです。
満たしても満たしても、満たしきれない名誉欲のために、周囲の目を過剰に気にして、怯えています。しかも名誉欲を守るためのチョロ松の反応は、どんどんエスカレートしていきました。
「よく見られたい」心が傷つくことを過度に恐れるあまり、女性に対する理想も非常に高くなっています。
そんな言葉の羅列にブチ切れたおそ松兄さん、ついにチョロ松の胸倉を掴みどなり始めます。
おそ松「うるああああーーーーーー!!くびり殺してやるよ童貞の中の童貞が!万死に値するんだよそのスタンス!!!」
トド松「まままま待て!おそ松兄さん!!見て!!ヤバいよアレ!!」
なんと空中に浮いていたチョロ松の可視化された「自意識」がムクムクと巨大化、触手を伸ばしはじめました。
チョロ松の高過ぎる自意識が爆発、「自意識ビッグバン」に進化してしまったのです。
おそ松「え!?何あれ!?えええええ!?」
トド松「ひ、ひぃ・・・!!じ、『自意識ビックバン』だああああ!!」
「自意識」がビッグバン、つまり爆発してしまったチョロ松。
数日後彼はオシャレな喫茶店、スタバァコォヒィーにいました。
おそ松「あちゃぁ・・・・」
トド松「あらまぁ・・・なんか、とんでもない化け物生まれちゃったね」
おそ松「扱いが難しいんだよなあ・・・」
そこには段ボールで作ったパソコン、タブレット、ケータイを駆使しながら「右クリックして頂いて、ええ、そこはトリプルクリック」と独り言を喋り続けるチョロ松の姿が。
チョロ松は意識の高い人が使いそうな喫茶店で、就職もしていないのに「仕事のできるサラリーマン」の真似事をするという、大変怪しい人になってしまったのでした・・・
「意識高い系」もそうでない人も名誉欲に苦しんでいる
「意識高い系」の人は、「人によく見られたい」「デキる新人と言われたい」というような名誉欲が際限なく膨らみ、過剰な自己アピールをするので、他人に迷惑がられます。
そしてこのエピソードで描かれたチョロ松のように、常に他人の評価や周囲の目にビクビクしている本人が一番、名誉欲によって苦しめられているのですね。
一方「意識高い系」じゃない人は楽に生きているのかというと決してそうではなく、「意識高い系」と揶揄されない程度に自意識をコントロールしながら、周囲から褒められ、認められたい名誉欲を日々満たそうとしています。
つまり私たちは皆、他人の評価に一喜一憂し、周囲の目を気にして生きているのです。
他人からよく見られたい!という「欲」に振り回され、日々苦しんでいる私たち。
でも無理して人からよく見られようとしなくても、仏教では、人から認めらなくても、そのままで幸せに生きられる道が教えられています。
そんな仏教哲学を、次回も引き続き「おそ松さん」の六つ子たちの姿を通して、お話しします。
本当の姿からかけ離れた自分を演じ、「意識高い『系』」と周囲に笑われて苦しむのではなく、仏教の視点からありのままの自分の姿をごまかすことなく見つめ、人格そのものを磨いていく。
「意識高い『系』」じゃない、常に人格を磨き、本当の意味で「意識が高い」人になりたいものですね。