この記事はこんな方におすすめ
- Mr.Childrenが好き
- Mr.Childrenの中でも終わりなき旅が好き
- 終わりなき旅の歌詞の意味が知りたい
- 自分探しの旅に出たい
- 本当の自分が知りたい
2020年末には紅白歌合戦等のメディアにも多数出演したMr.Children。
そんなMr.Childrenの曲で筆者が最も好きな曲は、1998年にリリースされた「終わりなき旅」です。
ファンの間では、「すごい」「救われた」「泣ける」などといった反応が見られ、筆者もとても勇気づけられました。
この曲が名曲である理由は、私たちの人生が自分探しの旅であることを歌詞が示してくれているからでしょう。
私自身青春18きっぷで全国に何回も出かけたほど自分探しの旅に関心があったから、「終わりなき旅」の歌詞にとても惹きつけられたのかもしれません。
今回は、長年Mr.Childrenのファンである筆者が、発売時のMr.Childrenを取り巻く状況や背景を振り返りながら、歌詞に込められた人生哲学の意味を考察していきます。
満を持しての活動復帰からリリースされた「終わりなき旅」
1997年に桜井さんの不倫が発覚してから活動休止していたMr.Children。
満を持して活動復帰した1998年10月にリリースされたのが、シングル曲「終わりなき旅」です。
オリコンチャート初登場1位、総売上枚数100万枚以上のミリオンセラーとなりました。
翌1999年にはその流れを継いでアルバム「DISCOVERY」がリリースされ、発売から1週間で100万枚以上のセールスを記録しました。
「終わりなき旅」への反響はすさまじく、発売から10年後の2008年にオリコンで実施された「座右の銘ならぬ“座右の曲”ランキング」でも1位に輝いたほどです。
座右の銘ならぬ“座右の曲”ランキング---ORICON NEWS
また、2020年12月から2021年1月にねとらぼ調査隊で実施された「『Mr.Childrenのシングル曲』人気ランキング」では、2位に圧倒的な差をつけて1位に輝きました。
【1万8000票集まる】「Mr.Childrenのシングル曲」人気ランキングTOP10! 1位は「終わりなき旅」に決定!【2021年最新投票結果】---ねとらぼ調査隊
そんなMr.Childrenの代名詞とも言える「終わりなき旅」。
歌詞の意味を考察する上での重要なキーワードは「本当の自分」「自分との対話」「主語の変化」です。
サビでは自分探しが強調されており、一番勇気づけられる箇所です。
「終わりなき旅」の歌詞と考察
ここからフレーズごとに区切って、歌詞を考察していきます。
1番Aメロ:桜井さんの人生観
息を切らしてさ 駆け抜けた道を 振り返りはしないのさ
ただ未来だけを見据えながら 放つ願い
カンナみたいにね 命を削ってさ 情熱をともしては
また光と影を連れて 進むんだ
出典:Mr.Children「終わりなき旅」 作詞:桜井和寿
今まで走ってきた道を振り返らずに未来へと全力で進み続けてきた、桜井さんの人生観が現れていますね。
ですが、ずっと全力で進むことはできないので、何とか頑張らなくては、と自分を励ましており、それを「カンナみたいに命を削って情熱を灯す」と鋭く表現しています。
ここでは、工具の「カンナ」と花言葉の「カンナ」を掛詞として使っており、花言葉の「カンナ」が意味する「情熱」を歌詞に入れています。
ちょっとしたことで消えそうな情熱の灯を灯し続けるためにカンナで命を削る。
非常に巧みな表現ですね。
そして、物事にはいい面も悪い面もあり、それを「光と影」と表しています。
1番Bメロ:承認欲求
大きな声で 声を枯らして 愛されたいと歌っているんだよ
「ガキじゃあるまいし」 自分に言い聞かせるけど また答え探してしまう
出典:Mr.Children「終わりなき旅」 作詞:桜井和寿
愛されたい、認められたいという誰もが持つ承認欲求を必死に訴えています。
そんなことを自分たちが言うと恥ずかしいから、「ガキじゃあるまいし」と言い聞かせて半ば強引に自分たちを納得させる。
でも、何とか愛されたい、認められたい。
そのように自分と対話しており、愛されて認められるための答えを探していることを「『ガキじゃあるまいし』 自分に言い聞かせるけど また答え探してしまう」と表現しています。
1番サビ:未来への期待
閉ざされたドアの向こうに 新しい何かが待っていて
きっときっとって僕を動かしてる
いいことばかりでは無いさ でも次の扉をノックしたい
もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅
出典:Mr.Children「終わりなき旅」 作詞:桜井和寿
まだ分からない未来と未来への期待を「閉ざされたドアの向こうに 新しい何かが待っていて きっときっとって僕を動かしてる」と表しています。
いいことばかりではなく悪いことも起きますが、それでも未来を切り開きたい。
本当の自分はこんなちっぽけじゃない、もっと大きくて素晴らしいはずだ。
そんな自分を探す人生のことを「もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅」と表しています。
1番の主語は、「Mr.Children」です。
彼らがどのような思いで音楽を作ってきたかを素晴らしい歌詞で歌い上げており、多くの人の共感を呼ぶからこそ、「終わりなき旅」は人気なのでしょう。
発売当時のインタビューで、桜井さんは以下のように答えています。
「(この曲で)自分達は歌をうたっていくんだ、バンドとしていい音楽をやっていくんだ、ということを伝えたかった」
そんな思いで書かれた歌詞の主語が2番で「私」(リスナー)に変わり、3番では「私たち」(Mr.Childrenとリスナー)に変わります。
2番Aメロ:寂しさ
誰と話しても 誰かと過ごしても 寂しさは募るけど
どこかに自分を必要としている 人がいる
出典:Mr.Children「終わりなき旅」 作詞:桜井和寿
友人や知人と話して楽しい時間を過ごしても、なんだか寂しくなってしまい、「本当に自分は必要とされているのだろうか」と考えてしまう。
私たちは誰しもこのような経験があるのではないでしょうか。
そこを「どこかに自分を必要としている 人がいる」と励ましてくれます。
2番Bメロ:承認欲求
憂鬱な恋に 胸が痛んで 愛されたいと泣いていたんだろう
心配ないぜ 時は無情な程に 全てを洗い流してくれる
出典:Mr.Children「終わりなき旅」 作詞:桜井和寿
失恋などをして憂鬱な気分でいる時、私たちはとても胸が痛みますね。
同時に愛されたい、認められたい気持ちいっぱいになります。
そのようなことも時が経てば和らいだり忘れることも多いでしょう。
それを「時は無情なほどに 全てを洗い流してくれる」と表しています。
そのようなMr.Childrenから私たちへのメッセージです。
2番サビ:限界
難しく考え出すと 結局すべてが嫌になって
そっとそっと逃げ出したくなるけど
高ければ高い壁の方が 登った時気持ちいいもんな
まだ限界だなんて認めちゃいないさ
出典:Mr.Children「終わりなき旅」 作詞:桜井和寿
ここも非常に共感できる部分ではないでしょうか。
仕事やスポーツでも、難しく考え出してしまうと全部嫌になって放り投げだしたくなったことは誰しもあると思います。
そうあきらめかけた時、より難しい物事の方が達成した時に半端なく気持ちいい。
まだ限界じゃない、何とか頑張れ、本当の自分はそんなもんじゃない、と私たちを応援してくれます。
非常に力強い応援メッセージで、この曲が名曲である理由の1つでしょう。
2番Dメロ:個性
時代は混乱し続け その代償探す
人はつじつまを合わすように型にはまってく
誰の真似もすんな 君は君でいい
生きる為のレシピなんてない ないさ
出典:Mr.Children「終わりなき旅」 作詞:桜井和寿
ガラリと転調し、先ほどまでの歌詞とは一転しています。
先の見えない混沌とした時代の中だと、多くの人が歩む「正解」と言われる生き方があるべき姿だと思い、無理をしてでもそのように生きてしまう。
そんな中で、自分は自分でいい、人と同じである必要はない、ということを「誰の真似もすんな 君は君でいい 生きる為のレシピなんてない ないさ」と強く訴えています。
主語が「私」から「私たち」に変わる架け橋となっています。
3番サビ:締め
胸に抱え込んだ迷いが プラスの力に変わるように
いつも今日だって僕らは動いてる
嫌なことばかりではないさ さあ次の扉をノックしよう
もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅
出典:Mr.Children「終わりなき旅」 作詞:桜井和寿
ここも非常に分かりやすく、聴き手の共感を引き出しています。
悩みや迷いがよい方向に進むように、日々私たちは頑張っています。
嫌な会社に行くのも、このためでしょう。
悩みや迷いなどの嫌なことをともに数多く経験して成長してきたからか、最後の歌詞が「いいことばかりではないさ」から「嫌なことばかりではないさ」に変わっています。
いいことばかりでもないけど嫌なことばかりでもないから、次の扉をノックしよう。
より大きい本当の自分がきっとそこにいるはずだ。
最後を「もっと 大きなはずの自分を探す 終わりなき旅」と、どこまでも前向きな言葉で締めています。
1番から3番までのサビにおいて「本当の自分はこんなはずじゃない、もっと大きなはずだ。だからそんな自分を探すんだ」と表現しています。
「終わりなき旅」と「本当の自分」と「仏教」
「終わりなき旅」と「本当の自分」
ここまで歌詞について考察してきましたが、では「本当の自分」とは何でしょうか。
もう少し詳しく掘り下げてみます。
「終わりなき旅」のサビでは、人生を「『本当の自分』を探し続ける旅」だと表現しています。
「本当の自分」はどのようなもので、どこにいるのでしょうか。
何かの扉を開けた先の未来にいるのでしょうか。
その答えはこの曲の歌詞にも書かれていませんし、「そんなのどうやっても分からないよ」「だから人生は終わりなき旅なんだ」という人もいるでしょう。
しかし、本当の自分を知らないと、自分がどんなことをすれば幸せになれるのか分からないのです。
本当の自分を知ることの大切さを、中国の孫子は以下のように記しています。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず
彼を知らずして己を知れば一生一敗す
彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず殆ふし」
意味は以下のとおりです。
「敵のことも味方のことも知っていれば、どんな戦いにもほとんど破れる心配はないだろう。
敵のことを知らなくても味方のことを知っていれば、勝てることも負けることもある。
敵のことも味方のことも知らないなら、何度戦っても必ず危険に晒されるだろう。」
それほど「本当の自分」を知ることは大事なのです。
私は入学した大学を中退し別の大学を再受験しましたが、その際過去問を解いて傾向を徹底的に把握して自分の弱点を克服したら3か月間の勉強で合格したことがありました。
相手(入試問題)と自分(弱点)を知ったうえでの結果と感じています。
「本当の自分」と「仏教」
「本当の自分」と言われてもなかなか分からないですよね。
だから「終わりなき旅」の中でもハッキリとは触れられていないのでしょう。
しかし、「本当の自分」については、2600年前にお釈迦様が説かれた仏教に教えられています。
鎌倉時代初期の禅僧であった道元は、以下のように記しました。
仏道をならふとは、自己をならふなり
仏教を学ぶということは自分自身を学ぶことである、という意味です。
どのようなことでしょうか。
これは、自分自身の心を学んでいく、ということです。
仏教では、本当の自分は肉体ではなく「心」だと教えています。
仏教を学んだら自分の本当の心がわかってくるのです。
平安時代の高僧源信僧都は、以下のように歌いました。
夜もすがら 仏の道をたずぬれば わが心にぞ たずね入りぬる
夜もすがら、というのは夜通し、ということです。
夜通し仏教の勉強をしていて見えてきたことは私の心である、と歌われています。
そして、仏教では私たちの心を煩悩でできていると教えられています。
煩悩については、以下の記事により深い内容が掲載されていますので、興味のある方は是非ともご覧ください。
このように、「終わりなき旅」では、私たちは今よりもっと輝ける大きなはずの「本当の自分」を探していることを表現しています。
そしてこれは、実は私たちが最も知りたいことではないでしょうか。
私たちの最も知りたいことの本質を突いた歌詞が「終わりなき旅」の魅力であり、Mr.Childrenの魅力でもあると筆者は考えます。