ファントムです。
桜井さんがMISIAとともに作った曲「forgive」が3月にリリースされ、日比谷音楽祭2021への桜井さん出演も決まったMr.Children。
聴き手を感動させる数多くの名曲の中で筆者がオススメする曲は「蘇生」です。
今から19年前の2002年にリリースされたアルバム「it’s a wonderful world」に収録されています。
このアルバムは、シングル「優しい歌」「youthful days」「君が好き」を収録しており、壮大なオープニング曲「overture」から幕を開けます。
以前のアルバムとは異なり、かなり明るい曲が多いです。
アルバム「it’s a wonderful world」に収録されている「蘇生」
アルバム「it’s a wonderful world」の中でも人気なのは、先述した「蘇生」です。
もともとは1曲目の「overture」と合わせて1曲でしたが、収録時間が長すぎるため2曲に分割されました。
壮大なオープニング「overture」から幕を開けて、ポジティブなメロディーにシャラーンとしたきれいなギターが乗っかる「蘇生」に突入します。
Mr.Childrenのアルバム収録曲の中では非常に人気で、ライブで何回も演奏されたり、ベストアルバム「Mr.Children 2001-2005<micro> 」「Mr.Children 1992-2002 Thanksgiving 25」にも収録されるほど。
それだけではなく、以下のCMやタイアップで発売から時間が経っても使用されていることからも、この曲の人気が分かります。
・映画「ライフ -いのちをつなぐ物語-」(2011年)
・プロ野球東北楽天ゴールデンイーグルス、銀次選手の登場曲(2013年~)
・花王アタック30周年キャンペーン「30歳の挑戦者たち」CMソング(2017年)
今回は、そんな発表されてから十年以上経ってもタイアップに使用される「蘇生」が名曲である秘訣を紐解いていきます。
歌詞は仏教に通じる深い内容で、仏教を通して歌詞への考察を深めて「蘇生」をとことん味わい尽くしましょう!
歌詞を紐解く重要なキーワードは、「『君』と『僕』」、そしてMr.Childrenの歌詞ではよく出てくる「虹」です。
「蘇生」の歌詞と考察
ここからは、パートごとに区切って「蘇生」の歌詞を考察していきます。
1番Aメロ:虹
二車線の国道を またぐようにかかる虹を 自分のものにしようとして カメラ向けた
光ってて大きくて 透けてる3色の虹に ピントがうまく合わずに やがて虹は消えた
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
Mr.Childrenの歌詞によく登場する「虹」。
主に「はかなさ」「希望」の2つの意味で用いられています。
実際に虹が見えても、それを写真に撮ることができても、「虹を手に入れる」ことはできません。
しばらくしたら水滴とともになくなってしまうからです。
歌詞の主人公はそういう虹のような目標を目指して手に入れようとしましたが、結局手に入れられなかったのでしょう。
ここで出てきた「虹」が、以降の歌詞に影響を与えています。
また、実際の虹は七色ですが、ここでは「3色」と表現しています。
この後で、3色の理由が明らかになるでしょう。
1番Bメロ:憧れや理想
胸を揺さぶる 憧れや理想は
やっと手にした瞬間に その姿消すんだ
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
私たちはいろいろなことに憧れています。オリンピックに出場する、会社で出世する、家族を持つ、マイホームを建てる、マンションを買う、など…
苦労してそれらのものを手に入れたとしても、その喜びは手に入れた瞬間に消えてしまいます。
ちょうどAメロで出てきた「虹」のように。
ここでは「虹」は「すぐに消えてしまうもの」という意味で使われています。
1番サビ:心の中にある希望
でも何度でも 何度でも 僕は生まれ変わってゆく
そしていつか 君と見た夢の続きを
暗闇から僕を呼ぶ 明日の声に耳を澄ませる
そうだ 心に架けた虹がある
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
曲のタイトル「蘇生」を「でも何度でも 何度でも 僕は生まれ変わってゆく」と表現しています。
どれだけ悩んでも生まれ変わっていける。
そしてあきらめかけていた夢に挑戦することができる。
不確かな未来を「暗闇」と表現しており、そんな未来から声が聞こえるということは未来に希望がある、ということでしょう。
それを、「そうだ 心に架けた虹がある」と表しています。
2番Aメロ:自身の常識と世界の常識
カーテンが風を受け 大きくたなびいている
そこに見え隠れしている テレビに目をやる
アジアの極東で 僕がかけられてた魔法は
誰かが見破ってしまった トリックに解け出した
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
ここで視点がグローバルになり、自分たちが思っていたことと世界の価値観が対比されています。
主人公は、どこかの部屋でテレビを見ていると思われます。
カーテンに見え隠れしている、とあることから、流れている映像を本当は見たくないのではないかと感じられます。
「アジアの極東」と表現されているのは日本ですが、なぜこのように一気に視点を変えたのでしょうか。
Mr.Childrenの歌詞にはその時々の世界情勢が反映されることがあり、当時の世界情勢は9.11後。
その世界情勢が色濃く反映されており、1番Aメロの「3色の虹」がここで「日本」「アメリカ」「世界」だと分かります。
自分たちが築いてきた価値観が9.11によって破られてしまった、世界情勢の変化が日本、そして自分たちの価値観を破ってしまった、と取れます。
2番Bメロ:分からなくなった自分
君は誰だ? そして僕は何処?
誰も知らない 景色を探す旅へと出ようか
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
世界情勢の変化が激しく、自分たちが進むべき道が分からなくなったのでしょう。
だからこそ、希望「誰も知らない景色」を求めて旅に出たい。
そんなMr.Childrenの輝かしい決意を示しています。
2番サビ:描き続けたい未来
そう何度でも 何度でも 君は生まれ変わって行ける
そしていつか 捨ててきた夢の続きを
ノートには 消し去れはしない 昨日がブレーキを汚していても
まだ描き続けたい 未来がある
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
1番サビと比較すると「僕」が「君」になっています。
自分たちの決意から、聴き手へのメッセージへと変化しており、聴き手に対して「あきらめてきた夢や目標があるのならば、もう一度チャレンジしてみよう」と応援メッセージを送っています。
変えられない過去、嫌な過去が誰にでもある。
そんな過去を背負ってでも先に進みたい、切り開きたい未来があるという「希望」がある。
それを「ノートには 消し去れはしない 昨日がブレーキを汚していても まだ描き続けたい 未来がある」と表現しています。
以前の記事にも掲載しましたが、Mr.Childrenの桜井さんは、1997年に不倫が発覚し、2000年に離婚、不倫相手と再婚しています。
不倫していた頃の曲は暗い曲が多かったですが、「it’s a wonderful world」で明るい曲が増えたところが、聴き手へのメッセージだけでなく桜井さん自身の「過去を背負っていく」決意に見えるのは私だけでしょうか。
※桜井さんのこの時期のことについては以下の記事にも掲載しています。
3番Bメロ:現実を変える
叶いもしない夢を見るのはもう やめにすることにしたんだから
今度はこのさえない現実を 夢みたいに塗り替えればいいさ
そう思ってんだ 変えてゆくんだ きっと出来るんだ
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
2番サビまでとは真逆です。
夢と現実のギャップから現実が冴えないと理解し、現実を変えていくという決意です。
最後の部分「そう思ってんだ 変えてゆくんだ きっと出来るんだ」と決意が強くなっていきます。
ここでドラムの音が徐々に強くなっていくことが、決意がとても強いことを示しており、私たちに勇気をくれます。
3番サビ:今も心にある虹
そう何度でも 何度でも 僕は生まれ変わって行ける
そしていつか捨ててきた 夢の続きを
暗闇から僕を呼ぶ 明日の声に耳を澄ませる
今も心に虹があるんだ
何度でも何度でも 僕は生まれ変わって行ける
そうだ まだやりかけの未来がある
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
一度はあきらめかけた夢。でも心の中ではまだあきらめていなかった。
そのやりかけの未来、夢に再度チャレンジするという強い決意が「何度でも何度でも 僕は生まれ変わって行ける」とサビの中で2回繰り返していることからも分かります。
とても強い決意であり、私たちにもあきらめかけていた夢があるならばあきらめずに挑戦してみよう、とあらためて希望をくれます。
このように、辛い過去や価値観のギャップといった苦しいことが多い中でも努力していくことをうたっています。
仏教で教えられる「求不得苦」と「蘇生」の歌詞
ここでは、蘇生について仏教を通してより深く考察していきます。
仏教で教えられる「求不得苦」
仏教では、このように求めても求まらないことを「求不得苦」と教えられています。
文字通り、求めているものが求まらない、欲しいものが手に入らない苦しみ、ということです。
仏教では私たちの苦しみを八つに分けて教えられており、これを「四苦八苦」と言います。
そのうちの7番目に「求不得苦」が教えられています。
ここであらためて「蘇生」の歌詞を見てみます。まさに「求不得苦」です。
1番Bメロ:憧れや理想
胸を揺さぶる 憧れや理想は
やっと手にした瞬間に その姿消すんだ
出典:Mr.Children「蘇生」 作詞:桜井和寿
悲しく苦しい現実が書かれています。
多くの人が憧れる大きな目標を達成したときほど「こんなものか」「何も得られなかった」と感じることがあるでしょう。
オリンピックに出場できたり、会社で出世できたのに何も得られずに虚しくなる例をしばしば聞きます。
そういったことを端的に表現しており、桜井さんの素晴らしい表現が輝いているように感じます。
有名なビートルズのジョン・レノンは、以下のように述べました。
ビートルズは、ほしいだけの金を儲け、好きなだけの名声を得て、何も無いことを知った。
世界的にも有名になり、日本公演も行ったビートルズのジョン・レノンが「何も無いことを知った」と述べていることに驚きを隠せません。
以下の記事でも四苦八苦、求不得苦について詳細に解説されています。興味のある方は是非ともご覧ください。
「蘇生」の歌詞と仏教で教えられる努力「精進」
「蘇生」では、上記のような私たちの悲しい現実「求不得苦」を踏まえ、何度も何度もあきらめかけた夢に努力して挑戦してみせる、というとことん前向きな歌詞で締めています。
ここに「蘇生」の素晴らしさが表れているでしょう。
その「努力」について、仏教では善い行いの1つとして教えられています。
それは、私たちが「何のために生きるか」に努力するためです。
仏教で教えられる努力「精進」については以下の記事に詳しく掲載されています。是非ともご覧ください。
今日のまとめ
今日の内容の要点をまとめました。
・Mr.Children「蘇生」の歌詞は仏教に通じる深い内容。
・「蘇生」の2番サビはまさに私たちの悲しい現実「求不得苦」。
・その一方で、何度でもあきらめかけた夢に挑戦してみせるという前向きな歌詞で絞められている。
・蘇生と同様に努力「精進」が大事だとも仏教では教えられている。
このような素晴らしい名曲を30年近くにわたり作り続けているMr.Childrenは国宝級だとあらためて感じ、私は思わず涙してしまいました。