※この記事には「おそ松さん」第24話の核心部分の記述がありますのでご注意ください。
“みんなへ
手紙書くのなんて初めてのことで、ちょっと緊張します。
急に何だよ、気持ち悪いよ、また自意識ライジング?って思うかもしれないけど、みんなと離れて暮らすのは初めてのことだし、直接言うのは何だか恥ずかしいので、手紙にしました。
就職が決まったときーー”
チョロ松の衝撃的な手紙の内容から始まったおそ松さん24話「手紙」。
「おそ松さんでこんなに泣く日が来るとは思わなかった、泣きすぎて目が腫れた」
「『24話ショック』から立ち直れない。来週の最終回が怖い」
といったファンの声が相次いだ衝撃の最新話。
今回は番外編として、このエピソードから「別れ」についてお伝えしていきます。
※シリーズ第1回はこちら(この記事だけでも読めます)↓
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ずっとニートだったおそ松たち六つ子ですが、三男チョロ松の就職が決まります。
就職と門出を祝うお祝い会で、兄弟や両親はみんな次々にチョロ松にプレゼントを渡し、これからの生活を応援、励ましながら大喜びしていました。
ところが長男のおそ松は、うつむいたまま、会話に入ってきません。
苛立ちを隠せない声でトド松を呼びつけ、はしゃぐ十四松を難癖をつけて蹴り飛ばし、胸ぐらを掴んで怒鳴りつけます。普段からは考えられないおそ松の態度に家族は驚愕。
次男のカラ松がおそ松を殴り飛ばして阻止し、外に連れ出しても、おそ松の態度は変わりませんでした。
変わっていく弟たち、変わりたくないおそ松
一松「考え直せば?ボロアパートには虫と幽霊と妖怪が出る・・・」
トド松「だから引き留めんなっつーの!まずは一人暮らし!僕はそこから始める。・・・僕たちは多分、一緒にいない方が良いんだよ」
これまで兄弟六人、なが~い布団で一緒に寝ていたトド松は、とても怖がりで夜中トイレに行くときも兄に付いてきてもらっていました。
甘えん坊で潔癖症なトド松が、ボロボロなアパートにまさかの一人暮らしを決意。夜は恐怖で震えながら共用トイレに行き、スマホ代が払えなくなったのか「圏外」と表示されたスマホを手に、布団の中で見上げた夜空には満月が出ていました。
次男のカラ松は友人チビ太に頼み込み、居候をしながら就活を始めます。夜な夜な机に向かって何枚も履歴書を書き、ふと見上げた先には満月。
工場でアルバイトを始めた十四松は、仕事中ケガをしたのか包帯で腕を巻いていました。痛ましい姿で居候先に帰ってきた十四松を満月が照らします。
一松も唯一の友達だった猫に別れを告げ、一人家を出ます。当てもなく行き倒れたところを知り合いに助けられ、空を見上げると満月。
そしておそ松も家でたった一人、その月を眺めていました。
同じ夜、同じ月を眺めながら、それぞれバラバラの生活を始めた六つ子。「一緒に暮らしていたら、俺たちはいつまでもニートのままだ」そう感じた兄弟たちは一人、また一人と松野家から姿を消していきます。
最後まで家に残ったおそ松は、チョロ松が家を出る日には見送りにも行かず、一松が出ていくときにも、背中を向けたまま、一言も口をききませんでした。
おそ松を襲った「愛別離苦」
仏教に「愛別離苦(あいべつりく)」という言葉があります。
「愛別離苦」とは、愛しい人と別れなければならない苦しみのことです。
「○○するのに四苦八苦した」という言葉がありますが、この「四苦八苦」とは元々仏教の言葉です。人間が逃れることのできない八つの苦しみを「八苦」といわれ、その一つが「愛別離苦」です。
親愛な者と別れるつらさ。親子・夫婦など、愛する人と生別または死別する苦痛や悲しみ。仏教でいう、八苦の一つ。
「会者定離(えしゃじょうり)」とも言われるように、会うは別れのはじめ。どんなに親しい人とも、必ず別れねばならないときがやってきます。
おそ松は六つ子として共に母のお腹に宿ってから20年以上、ずっと一緒に暮らしてきた弟たちが一人一人去っていく「愛別離苦」に直面していました。
ずっと片想いしていたトト子ちゃんに、初めてデートに誘われるも、おそ松は全く反応せず無視。 弟たちと別れる辛さがどれほどのものだったかが伺えます。
冒頭でキレたとき以来一切口を開かない、おそ松の背中には「俺を置いていかないで」と書いてあるような気がします。
「愛別離苦」で苦しんでいるのは松ガール達も同じ
おそ松だけでなく、現実世界にいる「松ガール(松ボーイ)」、つまり「おそ松さん」のファンたちも、いま「愛別離苦」に苦しんでいます。
まず3月28日にアニメ「おそ松さん」が最終回を迎えることから、「松ロス」、「松鬱」に怯えるファンが多発。ニュースにもなっていました。
「おそ松さん」最終回前に早くも“ロス”現象が! | ニュースウォーカー
そんな中放送されたこの「手紙」。
「おそ松さん」は「ニートの六つ子」が主人公のアニメなので「六つ子が就職したら、もう続編はないのでは?」とファンたちの不安を爆発させています。
「心臓痛すぎ。。。 来週死ぬんちゃうかな 松ロス決定やで……」
「やめろ!いややめないで!!終わらないで~~待って~~~~
松ロス待ったなし~~えまって~~~~こわいーー」「四月から重度のおそ松ロスで生きていける気がしないんだが」
アニメ『おそ松さん』、来週の最終回を前に早くも“松ロス現象”が発生中! ツイッターで悲しみの声続々 : オレ的ゲーム速報@刃
大好きな六つ子たちがニートを卒業するのは喜ばしいことのはずなのですが、就職してハッピーエンドになれば「おそ松さん」のアニメは完結し、続編は無い。もう六つ子たちの姿が見られないなんて辛過ぎる…という嘆きの声がネット上で多数投稿されています。
かく言う私も今や部屋の壁は六つ子のポスター、ケータイには一松とカラ松のストラップと自他共に認める「松ガール」ですので、松ロスに苦しむ当事者です(笑)
24話「手紙」の六つ子と“諸行無常”
「諸行無常」という仏教の言葉があります。国語の教科書にも載っている平家物語の冒頭にある有名な言葉ですね。
「諸行」とは全てのもの。「無常」とは常がなく続かないこと。大きく変わるか小さく変わるかの違いだけで、変わらないものは一つもないという意味です。
今は幸せでも、それがいつまで続くのかは分からない。家族や友人も、永遠に一緒にいることはできない。考えたくはないですが、私たちの思いとは関係なく、一切は移ろい変わっていきます。
「おそ松さん」には必ず最終回がやってきますし、社会現象となっているほどの人気も、冷めていく日は必ずやってくる。分かっていてもファンにとってその「無常」は耐え難い苦しみです。
おそ松もずっと六人一緒で、幸せなニート生活が続けられるとは思っていなかったでしょう。しかしいざやってきた、別れという「無常」はおそ松にとって大変大きなものでした。
弟たちがスーツや作業着を着て社会に出て行く一方、六つ子が一緒にいるとき着ていたお揃いの「松パーカー」をずっと着ているおそ松の姿は「無常」を受け入れたくなくて、あがいているようにも感じられます。
無常を観つめることが幸せに近づく第一歩
一方弟たちは兄弟の変化と別れという「無常」を受け止めていきます。
特にカラ松の台詞からは「無常」を受け止め、自身も成長しようとしていることが伝わってきます。
カラ松「た、頼むチビ太!このままじゃオレたち六つ子は…
オレは…ダメになる!
変わりたいんだ!
抜け出したいんだ!だから・・・!」
世界中のカラ松ガール&ボーイを号泣させたこの台詞。
カッコつけでイタい言動ばかりだった彼が、プライドを捨てハローワークで履歴書を提出して土下座する姿もあまりに衝撃的でした。
就職したチョロ松は一生懸命働き、怖そうな上司との飲みの席では頭を叩かれても笑顔を作っていました。宴会の部屋の壁の掛け軸の絵は、よく見ると「苦」という字。チョロ松の心境を表すかのようです・・・
苦しみながらも前に進んだチョロ松が、おそ松が残った家に送った手紙にはこう書かれていました。
就職が決まったとき、いちばんに頭に浮かんだのが、みんなの顔だった。
理由はみんななら、何となく分かると思う。でも僕は、すぐにその思いを打ち消したよ。みんなを信じようと思ったんだ。
ぼくたちが前に進むには、その方が絶対良い。
兄さんや弟たちと別れは辛いけれど、その無常を見つめ、先に進むことをチョロ松たちは決心したのでしょう。
無常を観ずるは菩提心のはじめなり
と仏教で説かれています。
「今の幸せが永遠に続くことがない」という無常はできれば逃れたいことですが、無常を観つめることは、本当の意味で幸せになるための出発点だと教えられるのです。
来週はいよいよ「おそ松さん」最終回。
私も含めファンは一旦六つ子たちとは辛いお別れですが、無常を観つめ、本当の意味で幸せになる出発点にできたらいいですね。