【東京タラレバ娘】「妥協」できない独身も「妥協」して結婚できた人も幸せじゃない?100%満足できる幸せはどこにあるのか

アラサー独身女子の支持を広く集めて大ヒットし、今年初めドラマ化した『東京タラレバ娘』。

累計発行部数330万部突破の『東京タラレバ娘』で描かれているのはあまりにもリアルな女子の苦しみ。

女子が主役の本作ですが、実は色々な事情を抱えた男性キャラクターも登場しています。

今回はタラレバ娘と彼女たちを取り巻く男性キャラクターの本音から分かる「幸せ」の本質に迫ります。

(参考)「『東京タラレバ娘』からの仏教」第1回(この記事だけでも読めます)

ケメン経営者との恋に失敗したタラレバ娘

絶対にこの人なんだ

見つけたんだ

主人公・鎌田倫子は落ち目気味の脚本家。

下り坂の仕事から逃げるように、TSUTAYAで出会ったイケメン・奥田さんとの恋に夢中になっていました。

奥田さんは映画バーの経営者で、顔も体格も性格も良くて、料理もできるいわゆる「スパダリ」。

そんなスパダリのはずな奥田さんに、倫子はどうしても拭えない違和感を抱くようになります。

きっかけは、好きな映画に出てくる女優と同じ髪型にしてほしいと言われたこと。

奥田さんが好きなのは何十年も前の名作映画でした。
作中に出てくる女性がソバージュだから髪型を変えて欲しいと倫子に言ってきたのです。

さらに奥田さんが好きなのは古い名作映画や男性受けするアクション系映画で、倫子が脚本家を目指すきっかけとなった『SEX AND THE CITY』を見たいというと

「ごめん俺あれ系は観ないから」

と言い切り、結婚したら部屋にホームシアターを作り、毎晩1本自分の好きな名作映画を妻と観て大晦日にベスト30を決める、と嬉しそうに語る奥田さんを見て倫子は…

耐えられる?

耐えられ…ない

『SATC』を否定する男とベスト30なんて決めらんない

あたしはあのドラマを観て脚本家になるって決めたようなもんだ

男はバカだ

女とは価値観が違う

わかってる

そんなことはわかってるの

妥協できない女・倫子が知った「女の幸せ」

世の中の女は2種類に分けられる

妥協できる女と

妥協できない女

どうやら私はできないほうの女らしい

「話してて噛み合わない」部分がどうしても許せず、倫子は奥田さんと別れることを決意します。

倫子は「妥協できない女」だったのでした。

かく言う筆者自身もどんな人と結婚したいか聞かれると

「自分のこと好きになってくれる人なら誰でもいいですよ~」と言いながら

「あっ、でも腐女子を気持ち悪いと思う男性は絶対結婚できないですね」

「同人誌読んでても許してくれる男性じゃないと無理だなあ」

と条件が出てくるTHE  無自覚「妥協できない女」です(笑)

しかも年々妥協できない条件が増えていくんですよね…

倫子も今より妥協できた若い頃を思い出してこんなことを思っています。

ああ

でも思い出したな

男と付き合うってこういう感じだった

相手に合わせて話して

気い遣って

クソつまんねえ話でも

うんうん楽しそうに聞いてあげて

若い頃読んでた雑誌にも書いてあった

「彼の話は楽しそうにあいづち打って聞け」って

きっと

みんなそうやって

それなりのいい男をゲットして

結婚して

結婚したら

手の平返して

ダンナを尻に敷く

ふてぶてしい嫁に豹変するんだろう

そしてそれが

いわゆる女の幸せってやつなんだろう

わかってる

それはわかってる

それが普通の幸せだってことは分かってる

わかっちゃいるけど

耐えられないの

だからあたし達は結婚できないの

裏を返すと世の中の結婚できた女は「妥協できた女」ということでしょう。

女の幸せ」は100%自分の人生に満足なんてないことを受け入れ、妥協できた女性が得られる安寧なのかもしれません

それは女に限らず男も同じことです。

独身アラサー仲間・小雪の不倫相手が漏らした「男の幸せの実態」

倫子の高校時代からの友達で、父親が営む居酒屋の手伝いをやっている小雪。

彼女もまた恋に恵まれないタラレバ娘の一人でした。

ひょんなことから居酒屋にやってきた超絶タイプな男・丸井さん。

食事に行くことになり、トントン拍子でいざ交際となったときに衝撃の事実が。

「僕結婚してますけどいいですか?

でも嫁とは別居中です、嘘つく気も隠す気もありません」

嫁のFacebookで「別居中」とは2人目出産のための帰省だったことが判明するも、情熱を止めることはできず不倫を続けていました。

倫子が奥田さんとの別れを決心した頃、丸井さんと小雪は岩盤浴をしながらこんな会話をします。

「うちの奥さん、料理全く出来ないんだよ

元々家事もキライで、だから…

子供が産まれてからはもう

毎日ピリピリして泣いたりわめいたり

いわゆる産後クライシスってやつで

なのに1人目が大きくなったらもう1人欲しいって

2人いたほうが将来楽だからって

僕は1人目の時に別人のようになってしまった奥さんをもう見たくなくて

まだ上の子も手がかかるし

だから2人目は福岡の実家で産んでしばらくそっちで育ててもらうことにしたんだ」

「でも幸せなことじゃん、子供が産まれるって

幸せなことなんだろうけど、でも

僕が思い描いた

幸せとはずいぶん違ってた

幸せでいえば

ここでこうして

小雪さんと岩盤浴しながらおしゃべりしてるほうが

よっぽど幸せだよ」

30回目の節目を迎えた、第一生命サラリーマン川柳コンクール。

応募された55069句の中から選ばれた優秀作は世相や流行を反映しておりニュースでもよく取り上げられていますが、今年はこんな句がランクインしていました。

「パパお風呂」

入れじゃなくて

掃除しろ

        家内関白(40代/男性)

 

職場でも

家でもおれは

ペコ太郎

        北の勝(30代/男性)

アモーレも

今や我が家の

新ゴジラ

        小小市民

守ろうと

誓った嫁から

身を守る

        恐妻家

サラリーマン川柳|第一生命保険株式会社

「幸せなことなんだろうけど、でも僕が思い描いた幸せとはずいぶん違ってた」

という丸井さん。

サラリーマン川柳を見ていると、結婚という幸せに対する絶望は多くの男性が抱いている苦しみではないかと思われます

そして不倫されていることを知らない丸井さんの妻・織乃もおそらく同じことを思っているはず。

ステキな結婚、そして出産という、タラレバ娘たちが羨む幸せのカタチ。

それを手に入れた織乃に待っていたのも「産後クライシス」の地獄だったのです。

一方未婚のタラレバ娘たちも噛み合わない恋人や、不倫という不安定な関係の悩みにそれぞれ翻弄されています。

子供の時は大人になったら当たり前に結婚して

当たり前に子供を産むんだと思ってた

でも当たり前じゃなかった

愛する人とめぐりあって結ばれる

平凡だけど幸せな家庭を作る

普通の未来

でも私達からすればその普通が

もはや奇跡なんだっつーの

頑張ってないわけじゃない

幸せになるため

色んなことをがまんして

頑張ってるんだよこれでも

未婚率の上昇は止まる気配がなく、結婚した男子も女子も決して100%幸せ!とは言い切れない人生を送っている。

とても残酷な現実ですが、これが人間の実態なのかもしれません。

先進国でも最悪レベルと言われる日本の自殺率。

幸せに「妥協」し続ける人生が続くと思うと、人生を終わらせたくなる人がたくさんいるのも否定できない気がします。

2600年前、誰もが羨む王子様は幸せの本質に絶望した

インドで2600年前、仏の悟りを開いた釈迦は元々、国の王子様でした。

最高に恵まれた身分と、誰よりも高い頭脳と身体能力を持っていたお釈迦様。

しかし青年期になるにつれ、誰もが羨む富と地位、結婚生活に恵まれていながらも100%満足できない心から目をそらせなくなっていきます。

悩みぬかれた王子は、29歳のとき城を出て厳しい修行に入られました。

そして35歳のとき最高のさとり・仏覚を悟られ、100%幸せと言い切れる幸せがこの世にあることを生涯説かれていかれたのでした。

倫子や丸井さんの苦しみは、共に過ごすうちに彼氏の悪いところが見えたり、子供が生まれた瞬間妻が産後クライシスで豹変したりと、幸せが変質するところにありました

仏教には「無常」という言葉があります。

無常とはこの世に変わらないものは一つもないという仏教の教えで、お釈迦様は

無常を観ずるは菩提心のはじめなり

と言われ、無常を見つめることは、変質しない100%の幸せになるために必要な道だと教えていかれました

妥協できない女・倫子も、妥協できた男・丸井さんも苦しんでいる「こんなはずじゃなかった」という変質する幸せ。

私たちが幸せと思っている理想的な恋や結婚も無常の一つなので、いつかは色あせ、相手か自分が死ぬことで終止符を打たされるときがやってきます。

目をそらしたくなる私たちの無常。

しかしこの無常をありのままに見つめることが、妥協しなくても幸せになれる人生への第一歩なのですね。