「anan(アンアン)」が5月11日発売号でアニメ「おそ松さん」を表紙にとグラビアで大きく特集を組んだところ、予約が殺到しAmazonベストセラーランキングで1位となりました。
アニメファンや腐女子といった一部の層だけでなく、多くの女性にとってなじみのある人気女性ファッション誌、「anan」でも大きく取り上げられるようになった「おそ松さん」。
今まで一度もファッション誌を購入したことがなかった私も、発売一ヶ月前から予約してしまいました。
そんな「おそ松さん」は爆発的なヒットを受け、いくつもアプリゲームが配信されています。
中でも人気なコンテンツといえば
「おそ松さんのへそくりウォーズ~ニートの攻防~」でしょう。
本日大型アップデートがあり、新バージョンのver1.2ではファン待望の豪華声優陣によるボイスも実装され、ますます人気のゲームとなりそうです。
その「へそくりウォーズ」で4月に開催された期間限定イベント。
その名も「春のリア充BAN祭り!」
バーベキューをする楽しそうな「リア充」を倒すと「妬み」ポイントが溜まり、溜まった「妬み」で限定バージョンの六つ子が出るガチャが回せるという内容です。
このイベントの元ネタは3.5話「童貞なヒーロー」。
幻となった1話の代わりにBlu-ray&DVD限定で収録されたエピソードです。
タイトルからして過激ですが、このエピソード、実はなかなかに人間の心の本質を抉り出しています。
今回はこのエピソードから分かる「妬み」の心を、時事問題も交えながら考察していきます。
※シリーズ第1回はこちら(この記事だけでも読めます)
[blogcard url=”https://20buddhism.net/about-fujoshi-goukai/”]チョロ松の前に現れた謎のヒーロー「新品ブラザーズ」
※これ以降の内容はBlu-ray&DVD限定収録の3.5話「童貞なヒーロー」の内容を含みます。ネタバレご注意ください。
「買っちゃったよね・・・お金無いのにね・・・関係無いよね~~!!うふふ・・・幸せ過ぎるう~~!!!」
大好きなアイドルのグッズを買った帰り道、上機嫌で河原を歩いていたチョロ松。しかし川を挟んだ対岸を見ると・・・
「うわぁ・・・本当の幸せを手にしている人たちだ・・・違う道で帰ろ・・・」
キラキラした「リア充」たちが、バーベキューの準備をしていました。
リア充とは、リアル(現実)の生活が充実している人を指すネットスラングです。
当初は、インターネット上のコミュニティに入り浸る者が、現実生活が充実していないことを自虐的に表現するための対語的造語だった。
その後、このニュアンスは、従来のネット文化に(触れずにいた事から)染まっていない、携帯電話を介したネットの利用者たちが流入するにつれ、彼らの恋愛や仕事の充実ぶりに対する妬みへと変化していった。
一方毎日アニメや地下アイドルの美少女を追っかける、典型的な「非リア充」のチョロ松。
楽しそうなバーベキュー集団を見ていると侘しくなるので、違う道で帰ろうとすると・・・
「待つんだ少年!!道を変える必要なんてない!!」
どこからか謎の声が。
「世の中の幸せ、全部抹消!!童貞自警団、新品ブラザーズ!!」
驚く彼の前に戦隊モノのヒーローのような格好をした男たちが急に現れました。
どうやらチョロ松以外の六つ子たちが謎のヒーローに扮しているようで、よく見ると、顔面がおそ松なら「お」、カラ松なら「カ」と名前の最初の文字になっています。
世の中の幸せ、全部抹消!!新品ブラザーズの活動主旨は「上を下に引き摺り下ろす」
「少年!!この世は全てカースト制だ!!」
“よく分かる社会カースト講座”という図を提示して語り始めた新品のカラ松。
「イケてる人間はほんの一握り・・・人は言う、上に行くには努力しろと。
しかし!!
我々に言わせれば努力できる時点でそれはもうこの辺(上から3段目)の人間なのだ。
そして、我々がいるのはコレ(一番下)。暗黒大魔界クソ闇地獄カースト!
ちなみにココからココまで上がるには人生3回分くらい必要。」
チョロ松「200年くらい!?絶対無理じゃん!」
カラ松「そう、絶対無理!!
だから我々は上に上がるのではなく、上を下に引き摺り下ろすことでちょっとした快楽を得ている。そういうヒーローだ!!」
「新品ブラザーズ」の活動主旨は
「上を下に引き摺り下ろす」ことでした。
四民平等なはずの日本社会。しかしそこには目に見えない社会カーストがある・・・
生まれながらにして頭脳明晰な人やイケメンな人、お金持ちな家に生まれる人っていますが、自身を振り返ると、そんな才能や財に恵まれた方々とは程遠い人生を送っている気がします。
しかもある日急にイケメンやお金持ちの家柄になることはできないので、
「社会カーストの上位に行くには人生が3回くらい必要」
と新品のカラ松は言っている訳です。
「妬み」は怒りをぶつけられない相手に対して起こる心
「お金が欲しい」「モテたい」「地位を得たい」
など私たちが朝から晩まで考え、生きる意欲としているのが
「欲」の心。
その「欲」が妨げられると出てくるのが「怒り」の心です。
しかし怒りたくても怒れない相手がこの世にはいます。
例えば4月に入社した可愛らしい新米社員のかわいい女の子が、皆に可愛がられ、失敗してもカワイイと言われ、チヤホヤされている。
そんな様子を見るとイライラ、モヤモヤしてくるけれど、顔に出さないよう耐えているという先輩女子も少なからずおられるでしょう。
こういう怒りをぶつけられない相手に対して出てくるのが「妬み」の心で、誰もが抱く心だと仏教では教えられています。
六つ子たちにとって怒りたくても叶わない相手は、河原でバーベキューを楽しむリア充たち。
六つ子たちは、ニートなので社会的地位も無ければ、ルックスもイケメンからは程遠く、どう頑張ってもリア充たちに敵いません。
そんな新品ブラザーズは以下のようにリア充と戦います。
「イケてる人間と距離を取る!!」
「妬みを溜める!!」
そしてリア充たちにウォータージャンピングストーン(水切り)で攻撃。
「たとえ当たらなくても、ちょっとスッキリする!!」
新品ブラザーズのように正直に言わなくても、私たちもまた、優れた会社の同期、周りに愛されている人気者の友達、経済的に恵まれたご近所さん・・・というような自分より勝る人を見るとついつい不愉快な気持ちが湧き上がってくる。それが「妬み」の心です。
「不倫問題」を過度に攻撃する人の心の奥にも「新品ブラザーズ」が潜んでいる!?
ベッキーさんと川谷絵音さんの不倫問題が少し前、大変世間からバッシングされていました。
確かに不倫は許されない行為ですし、その行為によって他の人を傷つけた人は非難を受けて当然です。
ただこういった「不倫問題」が起こるたびに、まるで自身が正義のヒーローのように過度にバッシングしたがる人々がいるのも事実です。
そういった人の心理について、先月「幻冬舎plus」で精神科医の方がこのように分析しておられました。
「けしからん」「許せない」と声高に叫びながら、一緒になって叩く人の心の奥底には、羨望が潜んでいる可能性が高い。「羨望というのは、他人の幸福が我慢できない怒りなのだ」と言ったのは、17世紀のフランスの名門貴族、ラ・ロシュフコーだが、まさにその通りである。
川谷さんは才能に恵まれたアーティストであり、紅白歌合戦にも出場したうえ、売れっ子の美人タレントを口説き落とした。そういう幸福が我慢ならないという羨望なんか自分にはないと、バッシングしている側は胸を張って断言できるだろうか。
「不倫する有名人」になぜ世間は激怒するのかーーー大衆が「裁判官を装った復讐の鬼」と化す時ーーー幻冬舎plus|東洋経済オンライン
読んでいて、なかなかギクリとさせられる記事です。
自分にはない才能、人気を持っている有名人が失敗すると、面白い。もっと引き摺り下ろしたくなる・・・
「我々は上に上がるのではなく、上を下に引き摺り下ろすことでちょっとした快楽を得ている。そういうヒーローだ!!」
と主張する新品ブラザーズはあまりに正直で笑いを誘いますが、彼らを笑えない心が、私たちにもあるのです。
「世の中の幸せ、全部抹消!!」とは「他人の幸福を全て抹消したい」という恐ろしい心
「世の中の幸せ、全部抹消!!」
と、新品のおそ松が主張した「新品ブラザーズ」の活動主旨。
ここで彼らがいう「世の中の幸せ」は「他人の幸せ」ということです。
先ほどご紹介した記事には
他人の幸福が我慢できない怒りを抱くのが人間という生き物
という分析もあります。
他人の幸福は面白くない。他人の不幸は蜜の味。
こんな恐ろしい心が全ての人が持つ「妬み」の心なのです。
私たちにこのような妬みの心があると聞くと、4話のチョロ松のように
「罪悪感で目が潰れるゥ!!!」
と思われるかもしれません。
しかし仏教では、こんな「妬み」の心を持つ我が身であることをまず知ることが、幸せへの第一歩と教えられています。
さて新品ブラザーズには、このピンチが襲います。
次回は彼らを襲った事件から、人間の「妬み」の心の本質をさらに解説していきます。