【活撃 刀剣乱舞】堀川国広は「闇落ち」してしまうのか?堀川国広の土方歳三に対する想いから学ぶ「諸行無常」

高い注目度を誇る夏アニメ『活撃 刀剣乱舞』。

9月9日から大人気ゲーム『グランブルーファンタジー』とコラボがスタートし、既存のファン層以外にも広く知られるようになりました。

筆者も先日グラブルをインストールし、グラブルに詳しい友人に教えてもらいながらゲームを始めたところです。

原作ゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』も次々新しい刀剣男士が追加されており、目が離せませんね。

※ここから『活撃 刀剣乱舞』物語の核心部分に関する記載(ネタバレ)があります。これからアニメ視聴予定の方はご注意ください。

『活撃 刀剣乱舞』9話以降のあらすじ・坂本龍馬と出会った陸奥守吉行は…

時は西暦2205年。

過去にタイムスリップし歴史を思うがままに改変しようとする「時間遡行軍」という時間犯罪者たちによって、時代は改変される危機が迫っていました。

審神者(さにわ)と呼ばれる能力者は、物に宿った心に人の形を与える力で刀や槍から『刀剣男士』を生み出します。

刀剣男士たちは、歴史を守るために過去へ遡り時間遡行軍と戦う存在。

桜が「乱舞」するような刀剣男士の美しさは、自分が刀剣だったときの記憶を持ちながら、過去の持ち主である歴史上の人物への執着と、今の主・審神者への忠誠に悩みながら戦う姿にあります。

『活撃 刀剣乱舞』第9話『元の主』では坂本龍馬の愛刀だった陸奥守吉行(むつのかみ よしゆき)が、任務の中で「元の主」である坂本龍馬とばったり遭遇します。

その夜起こっていたのは史実では龍馬が命からがら取方から逃げ延びた「寺田屋事件」。

龍馬が「寺田屋事件」で死ぬ歴史に変えようと目論む時間遡行軍から守るため、陸奥守は自身の正体を隠して龍馬と京の街を逃げ回ります。

龍馬「こんな状況で土佐もんに出会うとはのう」

陸奥守「ほうじゃのう…わしも…おまんとまた出会うとは…思わんかった…」

龍馬「…また?」

陸奥守「…逃げるか?…一緒に…どこか遠い所へ…

…いや!何でもない!

坂本龍馬はこの寺田屋事件の1年後に暗殺されます。

龍馬を連れてどこか遠くへ逃げてしまえば、33歳で死ぬ龍馬の運命を変えられる。

しかし陸奥守はすんでのところで踏みとどまり、龍馬を時間遡行軍から守ったのでした。

陸奥守は去りゆく龍馬の背中に向かってこう言います。

「(刀だったときの陸奥守吉行を)握れんでも…使えんでも…傍らで…

その時まで…見せちゃってくれ。

…わしは、おまんの生き様が好きやき

儚く短い命でも、その生き様が好きだった。

納得して龍馬を見送った陸奥守の後ろで、刀剣男士になりたての刀・堀川国広(ほりかわ くにひろ)がこう呟いていました。

「その時まで…

殺されるその時まで、傍らに…

それって…そんなのって…

土方歳三の最期を見た堀川国広は「土方さんの未来を守りたい」と悩むように…

その後陸奥守吉行が属する第二部隊は引き続き幕末の時代で、時間遡行軍に命を狙われる坂本龍馬を守る任務に付きます。

しかし坂本龍馬を守る任務を遂行しながら堀川国広の心は揺れ動き続けます。

…もし龍馬さんが死んで大政奉還が成されず新選組が存続すれば

土方さんの人生はあんな辛い事にはならなかった…

今龍馬さんが死ぬことになれば土方さんは…

迷いながらも何とか龍馬を守りきった国広。

昔同じく土方歳三の愛刀だった、隊長・和泉守兼定(いずみのかみ かねさだ)も陸奥守と連携して強敵を倒します。

敵を一掃し合流した国広と二人でしたが、国広の様子は明らかにおかしくなっていました。

国広「…兼さん。僕さっきまで龍馬さんの護衛で一緒にいたんだ。

その時何考えてたと思う?

龍馬さんがここで死ぬことになったら、土方さんの未来が変わるかもしれないって…

歴史が少しずつ変化してる今だったら、もしかしたらって…

どうしてこんなに辛いの?

どうして…大切な人を助けることもできないの?

兼さん…

兼さんも!土方さんを救ってあげたいんでしょ…!そうでしょ…?」

和泉守「歴史を守るだけだ」

国広「兼さん!」

今の主の命に従い、元の主である土方歳三が3年後に死ぬ「歴史」を守る

それが刀剣男士である今の自分の忠義だと和泉守は断言しますが、国広は納得できない表情を見せ、その後失踪します。

任務を他の隊員に引き受けてもらい、国広を捜索していた和泉守と陸奥守は火事に遭遇。

なんと時間遡行軍が龍馬が抜け出した後の薩摩藩邸に火を付け、焼け野原にしていたのでした。

時間遡行軍を撃退した和泉守の元に堀川国広が現れます。

堀川国広が闇落ち!?衝撃の展開となった『活撃 刀剣乱舞』第11話『鉄の掟』

国広「僕も兼さんの想う歴史を守りたい。それで土方さんも救いたい

和泉守「矛盾だ」

国広「そうだよ。それの何がいけないの!?兼さんも同じ想いの筈だ。

あの人は自分の為に生きなかった人だ。

いつも、誰かの夢を実現するために命を張って戦ってきた。幕府の為…新選組の為…」

和泉守「それは違う!土方さんは武士を志し武士として生きた。

覚えてるだろ国広。『武士よりも武士らしく』土方さんの口癖だった」

国広「覚えてるよ。一人になった時によくそう呟いてた。そうあろうと言い聞かせるように言ってたんだって、今は思う」

和泉守「だから…土方さんはそれを全うしたんじゃねぇか!」

国広「兼さんは、その最期を見てないから!

あの時の…土方さんの顔を忘れることはできない…忘れることはできないよ…

僕は土方さんを救う。兼さん、一緒に行こう

和泉守「武士の時代は終わるんだ、国広

国広「そんなの…僕だってわかってる。だから戦うんだ!

それで、もし違う価値観に目を向けてもらうことができたら、違う人生もあったんじゃないかって…」

和泉守「それは土方歳三ではない。土方さんの忠義は幕府にあり、そして『武士であり続ける己』にあった…

俺は今の主の命を受けて歴史を守る。

それが俺の忠義だ」

国広「じゃあ兼さんにとって僕は離反者?土方さんが部下にやったように、兼さんも僕を折るの?

…僕はそれでも構わない。

今折らないと、僕は僕の忠義に生きる

国広も一人で時間遡行軍と戦っていたようですが、その心は既に時間遡行軍そのものに。

元主・土方歳三が3年後の函館戦争で戦死せずに、明治時代を新たな考えで幸せに生きる未来に変えたいと言い出したのです。

そんな自分を許せないなら、士道不覚悟として部下を斬ってきた土方のように、ここで自分も折れ(殺せ)と言う国広に、和泉守は悲痛な叫びを上げながら刀を振り下ろします…

国広は離反者として処断されてしまうのか。

次回が気になって仕方ないところで第11話『鉄の掟』は終わり、筆者を含めファンたちは作中の国広のような虚ろな目で次の土曜日を待つ毎日です(涙)

第二部隊に選ばれ、任務に前向きだったはずの国広の心を「闇落ち」させてしまったのは何か。

一方、第9話『元の主』で坂本龍馬と会いながら、過去を変えることなく歴史を守った陸奥守吉行。

陸奥守の発言にはそのヒントが隠れているように思われます。

土方歳三の「無常」を受け入れられない国広、「無常」を見つめて龍馬を歴史通りに生かした陸奥守

堀川国広の捜索中、陸奥守吉行は和泉守兼定とこんな会話をしていました。

陸奥守「…ほんまの所、どうなんじゃ?堀川の事どう思っちゅう?」

和泉守「土方さんの件が今回の発端かどうかわからねぇが、あいつが、土方さんのこの後の行く末を嘆いていたのは事実だ」

陸奥守「…わしが口にするがはちょっとばかし憚られるが…土方歳三は新選組副長。

もし、箱館戦争終結の後、生きちょっても捕まって打ち首か、甘く見ても牢獄行きじゃ。

牢獄から出て来ても…武士の生きる場所は、どこにもありゃあせん

陸奥守はたとえ、箱館の一本木関門で死ぬはずだった土方歳三を生き延びさせたとしても、「武士よりも、武士らしく」あろうとした土方が生きられる未来は無いと予測しています。

さすが日本のはるか遠い未来を見通した坂本龍馬の刀という感じですが、その坂本龍馬の死を目の前で見た陸奥守の洞察はもっと深いところにあるのではないでしょうか。

寺田屋事件を改変しようとする時間遡行軍から龍馬を守った陸奥守吉行は

「握れんでも…使えんでも…傍らで…その時まで…見せちゃってくれ。

…わしは、おまんの生き様が好きやき

と言っています。

その時とは、堀川国広が呟いていたように、寺田屋事件の1年後に坂本龍馬が暗殺される「その時」

龍馬の死期を知っていながら「その時」まで一緒にいたいという陸奥守とは反対に、国広は

「どうして…大切な人を助けることもできないの?」

と土方歳三が34歳で死ぬ未来を悲観します。

ここで問題になるのは「土方さんを救う」ということの本当の意味ではないでしょうか

箱館の一本木関門で銃殺された土方歳三の最期を見た国広は、函館戦争で土方歳三が死なないことが「土方さんを救う」ことだと思い、死期を遅らせようとします。

しかし陸奥守が「生きる場所はどこにもありはせん」というように、たとえ戦死しなくても打ち首、処刑されなくても生きる場所の無い時代が新撰組副長・土方歳三には待ち受けている。

さらにもっといえば、たとえ明治の時代で生を全うしたとして土方歳三にはいつか死期がやってくる

歴史を変えて、変えて、変えて…そうしてたとえ土方の命を伸ばしたところで、命の終わりは避けられないのです

人の死を仏教用語で「無常」といいます。

仏教では、私たち人間は「人はやがて死ぬ」と分かっていても、どこかに「常」があるような錯覚をしている存在だと教えられます

しかし有名な平家物語の『祇園精舎・冒頭』

祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり

という一節にある「諸行無常」という仏語の通り、この世の全てのものは常が無く、続かない。

武士の時代が明治になった瞬間終わったように、人の命も刀剣たちもいつかは朽ちて消えていく時がくる。

なかなか受け入れがたい真実ですが、この「無常」を見つめることが、たとえ短命でも幸せな人生を送るための第一歩だと仏教で説かれています

陸奥守吉行が龍馬の最期を傍らで見させてくれと言った感動的なシーンには「むっちゃん」の明朗な人柄でありながら透徹した人間観が表れているようにも思いました。

堀川くんがこの真実に気付き、歴史を守る第二部隊の仲間として生きて戻ってくれることを願って止みません。